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気になるニュースを載せてみた☆の掲示板

2022-01-26 23:40
その他
【Market Winコラム】戦後初めて脅かされる米国「技術優位性」

「米国が中国との技術競争に勝ち抜くにはAI、半導体、エネルギー、量子コンピューター、合成生物学といった『戦略的』と呼ぶ領域で米国が主導権を保ち続ける必要があり、日本の技術者や大学、政府とより緊密な協力関係を築く必要がある」—。

米人工知能国家安全保障委員会(NSCAI)エリック・シュミット委員長が日本経済新聞(21年7月10日付)インタビュー(オンライン形式)でこう訴えた。

米NSCAIは、トランプ前政権下の2018年にジェームズ・マティス国防長官(当時)が人工知能(AI)に関し政策提言すべく新設し、トップに米グーグル元CEO(アルファベット元会長)シュミット博士に直々就任を要請して発足した組織である。

そして、発足2年半後の21年3月に700ページ超の最終報告書が完成、バイデン大統領と米議会に提出された同報告書は、「莫大な力と影響力を持つAI技術は、民主主義に基づいて開発・使用されなければならない」と断じた。

そして、中国がAIを「抑圧と監視の道具にしている」と強く批判すると共に、10年後、中国にAIの主導権を握られる等「第2次世界大戦後、初めて米国の技術優位が脅かさている」と衝撃的な警告を発した。

取りも直さず、一部AI技術や量子コンピューターで中国の技術力が想定より早く米国をキャッチアップしており、米国が中国との技術競争を勝ち抜くにはAI、半導体、エネルギー、量子コンピューター、合成生物学といった「戦略的」領域で米国が主導権を保ち続ける必要がある。

既に、高度なサイバー攻撃が国家インフラを脅かし、SNS(交流サイト)偽情報が民主主義を揺るがす等テクノロジーで武装した中国が米国の最大の脅威となる折、人類の利器にも凶器にもなり得るAI技術の主導権を中国に握らせてはいけないと米国は危機感を募らせる。

その点で、米議会上院で21年6月8日に賛成68、反対32で可決されたAIや量子などの先端技術の研究開発に巨費を投じる「米国イノベーション・競争法案」の意義には大きいものがある。

同法案はシューマー民主党上院院内総務が提出したパッケージ法案『米国インベーション・競争法案2021(The United States Innovation:and Competition Act of 2021)』である。

具体的には、1)米国立科学財団、米航空宇宙局などへ1200億ドルの提供、2)米国務省にインド太平洋地域における活動予算増額、3)競争力維持のバイ・アメリカン強化、4)外国政府によるサイバー攻撃や米知的財産窃取の阻止、5)中国への既存の金融制裁強化・新規制裁の措置、輸出管理強化、6)重要物資サプライチェーン強靱性の確保や不公正貿易慣行への措置—等から構成される。

難解な専門用語が並ぶが、結局は、英文タイトル「Meeting the China Challenge Act of 2021」が示す如く「軍民融合」を進める中国「封じ込め」戦略に他ならない。
バイデン政権は昨年12月10日、「民主主義サミット」の共同声明で監視技術の輸出管理の多国間枠組み「輸出管理・人権イニシアチブ」立ち上げを表明、カナダとフランス、オランダ、英国が支持を表明、豪州とデンマーク、ノルウェーの3ヵ国が即座に参加を決めた。

強権国家は監視カメラや顔認証、スマホ情報を抜き取る「スパイウエア」等の監視技術を駆使、反体制派やジャーナリストを弾圧する。米国は監視カメラ大手ハイクビジョン等に事実上の禁輸措置を課すなど軍事転用と人権侵害阻止を目指し多国間の輸出規制で強権国家へ圧力を強めている。