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株価の歴史的推移からわかることーバブルは必ずオーバーシュートする

「なんて馬鹿なんだ」

 考えて見れば、「バブル」というのは必ず「適正」な値を外れた状態だ。しかし、「適正」ということを見定めるのは簡単ではない。

 特にその時代を生きている人々が、「自分の時代」を客観的に見つめることは難しい。「バブルがバブルであることは『歴史』になってはじめてわかる」と言われる由縁だ。

 古くはオランダのチューリップバブルやバブルの語源ともなったと言われる南海泡沫事件、さらには日本の80年代バブルを「歴史的」に見れば、「なんて馬鹿なんだ」ということになるが、「自分の時代」を生きる人々にはそれが分からなかったのだ。現在、「自分の時代」を生きる人々が、後世の人々から「なんて馬鹿なんだ」と言われることはあり得る。

 バブルの原因には色々あるが、近年のバブルは、2月8日の記事「コロナ危機で、じつは『銀行預金』より『株』が安全になりそうなワケ」や3月13日公開の「最強通貨・ドル、じつは間もなく『紙くず』になるかもしれないワケ…!」で触れた1971年のニクソンショック(金とドルの交換停止による「事実上の金本位制」放棄)の影響が大きい。

 つまり、「金本位制」という物理的制約が消え、いくらでも輪転機を回すことができるようになったことが、「バブル多発」に大きな影響を与えているということだ。

 もうひとつは、人々が「恐怖の大王」に支配されているということである。日本の1980年代バブルの遠因は、1973年の第1次オイルショックと1979年の第2次オイルショックにあると言われる。

 この未曽有の社会的・経済的混乱における「恐怖の大王」の印象があまりにも強く、「金利引き上げによる景気後退」を恐れるあまり機動的な引き締めができず、バブルを招いてしまったということだ。

 今回の世界的パンデミックによって「コロナ・バラマキ」が行われているが、各国政府が機動的に引き締め政策に転換するのはかなり難しい。政治家というのは国民の選挙で選ばれるが、国民が「恐怖の大王」におびえているからだ。さらにいわゆる「中央銀行の独立性」は弱まる傾向にあり「通貨の番人」(通貨の価値を維持するため極力インフレを起こさないようにする)の役割もほとんど果たしていない。

 現状を見る限り「オ―バーシュート」が最後の最後まで行きつかないと、世界的バブルは終わらない可能性がかなりある。ただし、何かのきっかけで突然バブルが崩壊することもあるから、バフェットが述べるように「危機に常に備える」べきであると考える。

 しかし、そのようなバブル経済の中で、日本や米国を始めとする各国の実態経済が、それぞれ別のベクトルを向いていることには注意しなければならない。

バフェットはどう見ている?
 3月6日の記事「投資の神様・バフェットが『日本の商社』に投資した『本当の理由』がわかった…!」で触れたように、今年の「バフェットからの手紙」では、70年に及ぶ付き合いがあるGEICO(損害保険会社)や100歳を超えたばかりの1959年からパートナーシップに参加している眼科医を引き合いに出している。要するに「投資で成功したければ目先の動きに惑わされずに長期的視点で行動せよ」ということだ。

 このメッセージは、現在世界に広がっているパンデミックに対するものと考えられるが、さらにそれによってもし市場が混乱したとしても「あわてるな、米国は常に成長してきた!」というメッセージともとれる。

 過去の「バフェットからの手紙」でも20世紀(100年間)のダウジョーンズの株価上昇や1776年の独立宣言以来どれほど米国が発展したのかなどを例に挙げて「米国の約束された未来」について熱く語っている。

 ただ、バフェットが投資を続けてきた間には、第2次世界大戦や1975年の事実上のベトナム戦争敗北の後遺症に悩まされた「暗く長いトンネル」と呼ぶべき時期も存在した。

 裏読みすると、バフェットが「長期的な明るい未来」をことさら強調するのは、「暗い時代が目の前に迫っていると感じている」からなのかもしれない。

日米株価の関係
 バフェットが懸念を抱いていると考えられる米国の将来と日本の明るい未来を暗示するのが拙著「勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす」の25ページに掲載されている「図表3 日経平均株価とNYダウ平均株価の比較表」である。

 まず、日経平均は80年代バブル末期に4万円(ポイント)直前にまで到達した。その頃のダウジョーンズは数千ドル(ポイント)にしか過ぎない。しかし、90年頃にバブルが崩壊し、2009年3月10日には終値で7054円(ポイント)を記録した。

 それに対して、米国は90年代前半からIT/インターネット産業が勃興し、株価も長期的に上昇を始めた。日米株価の「ポイント数」が交差して逆転したのは90年代後半のことである。

 前記の表は2012年頃までしかアップデートされていないが、当時のダウジョーンズは1万4000ポイントあたり、日経平均は1万ポイント程度である。ダウジョーンズはおおよそ2倍、日経平均は約3倍になったわけだ。日経平均の上昇率が大きいが、現在両者は3万ポイント前後で並び立つ水準に到達した。

 これから日経平均のポイント数がダウジョーンズを上回っていくかどうかが注目されるが、多分そうなるのではないだろうか。

 株価の短期的動きと一国の経済の相関性はそれほどないが、数十年単位で考えると両者の相関性はかなり高いのだ。

日本は世界が低迷している時に発展してきた
 1945年の敗戦後、日本は経済崩壊の危機にあった。それを救ったのが1950年の朝鮮戦争である。つまり日本は世界的冷戦の始まりとともに「奇跡の経済成長」へと向かい始めたのである。

 そして日本の輝かしい成長に終わりを告げるバブル崩壊が、冷戦終了の象徴である1989年ベルリンの壁崩壊と1991年ソ連邦崩壊の間に起こり、長く暗い時代へと向かった。

 2月28日の記事「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」で述べたように、日本の最大の長所は「継続性」にある。例えば20年ごとにすべてをご破産にする「伊勢の神宮」の式年遷宮は短期的にはまったく無駄に思えるが、「1400年の継続」のために必要であったと言える。

 実はバフェット流も同じなのだ。米国の歴史は日本に比べればはるかに短いが、それでもバフェットが過去の「投資家への手紙」の中で繰り返し「建国以来の歴史」に言及していることには注目すべきだ。

 そして、「投資の神様・バフェットが『日本の商社』に投資した『本当の理由』がわかった…!」で述べたように、バフェットが本格的に「日本企業」に投資したのが昨年であることは重要だ。

 個々の日本企業の実情には詳しくないバフェットが、5大総合商社を「効率の良い日本株インデックス」と考えているように思われる。

レーガン大統領が繁栄の基礎を築いたが……
 バフェット風に言えば、「米国はベトナム戦争敗戦とその後の低迷を乗り越えて発展してきた」ということになるが、日本がバブルに沸いた1980年代の米国がベトナム戦争の後遺症を引きずって大きく低迷していたのは事実である。

 その米国混迷の1981~89年に米国大統領であったのが、ロナルド・レーガンである。

 盟友マーガレット・サッチャー(英国首相)とともに、「新自由主義」と呼ばれる市場経済重視の活性策を強力に推進した。言ってみれば、共産主義中国における鄧小平主導の「改革・解放」のようなものだ。

 ただ、残念なことに「新自由主義」が浸透し効果が見える形になったのはレーガン大統領退任後のことである。

3人組が食いつぶした?
 そのレーガン大統領の偉大な遺産を引き継いだのが、昨年12月25日の記事「中国の学者が大暴露『米国は中国に支配されつつある』って本当?」で述べた3大統領である。クリントン、ブッシュ、オバマ政権のおおよそ四半世紀の間米国は繁栄したが、その基礎をつくったのが共和党のレーガン大統領であることは今日多くの人々が認めるところである。

 四半世紀の間、3人組に食い尽くされ、よどんでしまった米国(経済)に危機感を抱いた良識ある米国民の支持を得て成立したのが2016年のトランプ政権といえよう。

 今回のバイデン大統領就任が米国民の意思であるかどうかは、2月25日の記事「テキサス州が『大統領選挙不正との戦い』を牽引しているのはなぜ」などを参照いただきたいが、「バイデンごリ押し当選」を許してしまったこと自体が「米国社会システムの制度疲労の証拠」といえるであろう。

 問題は政治だけではない。四半世紀の間に米国の経済はいびつになってしまった。経営者の異常とも言える高額報酬はその一つだが、産業構造が金融やデジタルなどの「バ―チャル分野」に極端に傾いていることも懸念材料だ。バフェットが、BNSF(鉄道)、BHE(電力)などの、一見資金効率が悪く見えるインフラビジネスへの投資の重要性を強調していることに注目すべきだと考える。

  • >>26

     バイデン政権4年間は、トランプ氏がせっかく「抜本的改革」に乗り出した米国経済を後戻りさせると考えられるから警戒が必要である。

     レーガン大統領は現在でこそ「偉大な大統領」と評されるが、現役時代には「俳優上がりの」という枕詞で激しく攻撃された。同じように「不動産屋上がりの」という枕言葉で攻撃されてきたトランプ政権が4年で中断されたのは、米国経済の未来にとって痛手だ。

     既得権益にまみれた「政治屋」が抜本的改革を行うのは難しく、レーガン氏やトランプ氏のような「外部からやってきた人物」が大きな改革を成し遂げるといえる。

     「コロナバラマキバブル」の影響を除けば、日米経済のベクトルは、それぞれ逆方向に向かい始めたように思える。バブルに浮かれて「危機に備える」ことを怠ってはいけないと感じる。