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ひっそりと謙虚に生きたい、株も・・・の掲示板

【来週の注目材料】強かった前回をさらに上回る見通し~米雇用統計

 GW明けの7日に4月の米雇用統計が発表されます。

前回3月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が事前予想の66万人増をはるかに上回る91.6万人増となりました。2月の数字も速報時点の37.9万人増から46.8万人増まで上方修正されており、そのうえでの強い数字に米雇用市場の回復度合いの順調さが印象付けられました。

失業率も事前予想通りとはいえ2月の6.2%から6.0%に低下しています。労働参加率が2月の61.4%から61.5%にわずかながらとはいえ上昇する中での失業率低下(労働参加率の上昇は一般的には一時的に失業率を悪化させます)だけに、こちらも好印象。正規雇用を望みながら雇用環境の問題で非正規雇用に従事している人などを含めたU6失業率(不完全雇用率)も2月の11.1%から10.7%に低下しています。

内訳を見ると全米各州で進む行動制限緩和の影響でレジャー&ホスピタリティ部門(カジノ、劇場などの娯楽部門、ホテルなどのアコモデーション部門、レストラン、バーなどの飲食部門からなるセクター)での雇用回復が目立ち、2月の38.4万人増に続いて28.0万人増となりました。同じく行動制限緩和の影響が強く出る小売部門も2.25万人増と堅調でした。悪天候の影響で2月に5.6万人減と落ち込んだ建設部門は11万人増と反動もあって強めに出ています。その他、学校の再開などが進んだことで教育部門の雇用が6.44万人増と同部門としてはかなりの伸びを見せています。

 4月に入っても行動制限の緩和と、それに伴う店舗などの再開が進む中で、NFPは95.0万人増と3月をさらに超える水準の大幅な増加がみこまれています。失業率は5.8%へ低下する見込みです。

4月27日、28日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、委員会は米景気の現状認識を上方修正しました。声明ではワクチン接種の進展と強力な政策支援の中で、経済活動と雇用は力強さを増していると、雇用の改善に言及しました。

 4月15日に発表された3月の米小売売上高のかなり強めの数字(2月の-2.7%から+9.8%へ)に見られるように、米個人消費がかなり堅調となっており、サービス業を中心とした雇用の回復が見込まれており、2か月連続での強めの雇用増期待につながっているとみられます。

 ここにきて雇用の回復が目立つとはいえ、前回時点でパンデミック前から800万人以上の雇用が依然として失われています。前回、前々回でかなり雇用を戻したレジャー&ホスピタリティ部門だけでもピーク時より300万人以上雇用が少ないです。前回で90万人超の雇用増はかなりの水準ですが、十分にありうると考えられます。

 関連指標を見てみましょう。

 週間ベースの新規失業保険申請件数は、雇用統計と調査期間が重なる12日を含む週の数字が56.6万件(速報時では54.7万件)と、3月中旬以来の水準まで減少していました。3月の12日を含む週の数字は77万件でしたから、かなり順調に減っているという印象です。

 3日に発表される4月のISM製造業景気指数は、65.1と3月の64.7から上昇見込み。前回の数字は事前予想の61.5を大きく上回り、1983年以来約37年ぶりの記録的な数字でしたが、今回はさらに上昇が見込まれる状況。ここ3年余りで最も高い59.6をつけた雇用部門の数字にも要注目です。予想通りの強さを示すと、米雇用統計への期待につながります。4月23日に発表された4月の米製造業PMI速報値が、予想を少し下回ったとはいえ60.6と3月分の59.1から改善していることから、ISM製造業も十分期待できそうです。

 5日に発表される4月のADP雇用者数は、86.3万人増と、3月の51.7万人増から大きく伸びが強まる見込みに。NFPの民間部門の雇用者数と相関が高いとされる同指標は、コロナ下で雇用統計の数字が大きくぶれる中、乖離するケースも目立ち、信頼度がやや欠けます。ただ、予想通り強めの数字が出てくると、雇用統計本番への期待感につながるだけに要注意です。

 同じく5日に発表される米ISM非製造業景気指数は、前回3月分で、統計を開始した1997年以来最高水準となる63.7を記録しました。製造業同様に強かった3月分をさらに上回る64.0が見込まれています。製造業と同じく23日に発表された4月の米非製造業PMIは予想を超える63.1と3月の60.4から大きく上昇しており、ISM非製造業も好結果が見込まれています。

 関連指標も含めた今回の状況を見ると、米雇用統計は事前予想通りかなり強めの数字が期待されるところです。米FRBは景気判断を上方修正しつつも、現状の超緩和的な姿勢を維持する方針を示しており、今回の雇用統計が強めに出ても、すぐに姿勢の変化への期待が強まるわけではありません。ただ、一部では6月のFOMCもしくは8月のジャクソンホールシンポジウムでのパウエル議長の講演で、今後のテーパリングに向けた議論開始の可能性が示されるのではと期待する市場の前向き予想を支える格好になりそうで、ドル買いにつながると見込まれます。なお、どれだけ関連指標が強く出ても、期待外れな数字が出るケースがあるのが米雇用統計です。予想外に弱かった場合にも注意を残しておきましょう。

MINKABU PRESS 山岡和雅