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私と経済の掲示板

オミクロン型へのワクチン効果、メーカーの見解二分

新型コロナウイルスの新たな変異型「オミクロン型」をめぐり、欧米の3大ワクチンメーカーのうち2つが不安を鎮めようと動いた。英オックスフォード大学、独ビオンテックが既存のワクチンで重症化を防げるとの見方を示した。

一方、3番手の米モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に対し、既存ワクチンのオミクロン型に対する有効性はかなり低いとの見通しを示し、新たなワクチンを量産するには数カ月かかると語った。この報道を受けて11月30日、株式市場は下落した。

ビオンテックCEO「ブースター接種でさらに効果高まる見込み」

米マサチューセッツ州にあるモデルナ本社でFTのインタビューに応じたバンセル氏は、「デルタ型と同じレベルの効果が得られることはないと思う」と話した。

「かなりの低下になると思っている。データを待つ必要があり、どれだけ下がるのかはまだわからない。しかし、私が話をした科学者たちは全員、『これは良いことにはならない』などと言っている」

11月30日、米ファイザーと新型コロナワクチンを共同開発したビオンテックのウグル・サヒンCEOは、それよりも楽観的な見通しを示した。

「ワクチン接種を済ませた人は、オミクロン型による重症化からも高いレベルで守られると私たちは信じている」とサヒン氏は述べ、ワクチンの仕組みに関する知見と過去の変異型の事例を根拠に挙げた。「ブースター接種(追加接種)でさらに効果が高まり、どのレベルの症状も予防できる可能性があると見込んでいる」

ビオンテックとファイザーは6週間以内にワクチンを改良し、必要ならば100日以内に出荷できる準備が整っているとサヒン氏は語った。同氏の発言は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報じた。

  • >>25300

    オックスフォード大「必要が生じた場合は迅速に開発」

    英アストラゼネカと新型コロナワクチンを共同開発したオックスフォード大は、既存ワクチンが過去に懸念された変異型と同様、オミクロン型に対しても有効でないことを示す「証拠は現時点で出ていない」との声明を発表した。

    「(オミクロン型の)出現がワクチンの効果に及ぼす影響を慎重に評価する。この1年間、新たな変異型の出現にもかかわらず、ワクチンはかなり高いレベルの重症化予防効果をもたらし続けており、これまでのところ、オミクロン型に何らかの違いがあることを示す証拠はない」

    同大はさらに、「必要が生じた場合に改良型の新型コロナウイルスワクチンを迅速に開発するのに必要なツールとプロセスは準備できている」とした。

    バイデン米政権は11月30日の状況報告で、オミクロン型の国内感染が確認されるのを見越して国民にブースター接種を受けるよう促した。

    米疾病対策センター(CDC)のワレンスキー所長は、「ワクチン接種はあなたやあなたの家族、地域社会を新型コロナウイルス感染症から守るのに役立つことがわかっている。ワクチン接種はオミクロン型に対して少なくとも部分的に有益であることを、私たちはもっぱら見込んでいる」と述べた。

    オミクロン型に対するワクチンの有効性については、まだ信頼できるデータがそろっておらず、世界保健機関(WHO)のスワミナサン首席科学者は製薬業界の予測を一蹴した。

    「オミクロン型に対するワクチンの有効性について、どのような結論を下すのも時期尚早だと私たちは確信している」とスワミナサン氏はFTに語った。「WHOは組織内の全ての専門家グループを招集し、科学者たちは回復後の患者やワクチン接種完了者から採取した血清の新変異型に対する中和能力を調べる実験を進めている。これには数週間かかる」

    スワミナサン氏は、「この変異型が既存ワクチンによる免疫を乗り越えてしまうものであるのかどうかを完全に見極める臨床試験」の結果が出るまで、「辛抱強く待つ必要がある」と話した。

  • >>25300

    科学者、スパイクたんぱく質の変異を懸念

    モデルナのバンセル氏は、オミクロン型はウイルスが細胞に入り込む際に重要な役割を果たす「スパイクたんぱく質」の変異が多く、南アフリカでの感染の急拡大は、2022年に既存ワクチンに改良を加える必要が生じるかもしれないことを示すものだと話した。

    同氏によると科学者たちは、オミクロン型の50カ所の変異のうち32がスパイクたんぱく質に集中しているために懸念を抱いているという。既存ワクチンは、新型コロナウイルスと戦う人体の免疫力を高めるうえでスパイクたんぱく質に照準を合わせている。

    このように高度に変異した変異型が現れるのは1、2年先だろうというのが大方の専門家の見方だったとバンセル氏は付け加えた。

    同氏の予測は11月30日朝に投資家の動揺を呼び、株価と原油価格が下落した。その後、コロナ対応の景気刺激策の縮小を予想より早めることを示唆したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言もあり、ニューヨーク市場で大きな売りを引き起こした。