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私と経済の掲示板

ソフトバンクG、2000円でPCR検査 企業・自治体に

ソフトバンクグループ(SBG)は24日、新型コロナウイルスの感染の有無を判断するPCR検査の受け付けを始めた。価格は配送料を除いて1回2000円と、自費診療の相場の10分の1程度と低く抑えた。民間企業の参入が増えれば日本全体の検査能力が拡充されるが課題もある。

SBGは千葉県市川市の国立国際医療研究センター国府台病院内で検査をする。1日4000件程度の能力を年内に1万件まで増やす。唾液で判定できる装置を導入し、発熱などの症状がない人の検査も引き受ける。まず法人や自治体向けに始める。法人などから検査キットを返送してもらい判定する仕組みだ。

日本全体ではいまPCR検査能力は1日7万件弱だ。公的保険なら原則無料だが、対象は症状がある人や濃厚接触者に限られる。無症状者が検査を望むなら民間事業者や医療法人が手掛ける自費診療になる。1回2万円程度がこれまでの相場だった。SBGは社会貢献を掲げ格安で提供する。

手法や精度などは国立国際医療研究センターが監修した。医師の診断を経ないため格安になる一方「陰性証明書」は発行できない。判定も「陽性の疑い」までで、そうした結果が出れば改めて医療機関で検査が必要だ。

孫正義会長兼社長は「あくまでスクリーニング(暫定的な検査)で医療行為ではない」と説明する。とはいえ医療機関のPCR検査の前さばきになる効果もある。秋冬には新型コロナとインフルエンザが同時流行する懸念がある。どちらに感染したか不明な発熱者が大量に生まれかねない。

その時は暫定的であっても検査能力は多いほどいい。医療機関の検査能力がなかなか増えないなら、民間検査の増加は補強になる。民間企業では島津製作所もPCR検査事業を始めている。

いま日本の検査能力は1日7万件だ。米国は50万件、英国は30万件に上る。こうした差が生まれる背景には柔軟に制度を変えたかどうかもある。

米国は新型コロナ禍で薬剤師が薬局などで検査することを認め、英国は個人が自宅で検体を採取することを認めた。フランスも個人が検査キットを買って医療機関に送付すれば結果が得られる。

  • >>17188

    日本では患者から血液や粘膜を採取する検体採取は、医療法が定める「医療行為」になる。原則として医師とその指示に従う看護師、臨床検査技師ができる行為だ。新型コロナ禍では歯科医師も採取できる特例を設けたぐらいで「医療行為」の担い手は増えていない。

    ある医療関係者は「すべてに医師が介在するのが日本ルール」と硬直的な制度を批判する。SBGのような民間の検査は医療行為ではなく公的保険の対象外になる。

    米英では短時間で判定できる抗原検査も広がる。日本では抗原検査は「精度が低い」「医師の収入になる保険点数(診療報酬)がPCR検査の半分以下でもうからない」などの声があり、あまり利用されていない。

    政府は抗原検査の能力を1日20万件にする目標を掲げる。菅義偉首相は民間のPCR検査に関して田村憲久厚生労働相に「国際比較しながら、どうすれば金額が下がっていくか検討してほしい」と指示した。秋冬の同時感染への備えや経済活動の本格的な再開には「医療行為」を巡る規制緩和や抗原検査の活用、一層の民間参入が必要だ。