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私と経済の掲示板

タンカー運賃高騰続く  3万ドル台→10万ドル超え

原油タンカーのスポット(随時契約)運賃の高騰が続いている。イラン産原油の調達に関与したとして中国の大手海運傘下企業などを制裁対象にしたと、米国が9月下旬に発表した影響が広がっている。中東情勢の緊迫化も押し上げ要因だ。制裁の対象を見極める動きも出ているが、輸送需要が高まる冬場を控え、運賃相場は強基調で推移するとの見方が多い。

中東―極東航路の大型オイルタンカー(VLCC、載荷重量約30万トン)の運賃指標、ワールドスケール(WS、基準運賃=100)は17日時点で140前後。用船料(船のチャーター料)換算だと1日当たり11万ドル(約1200万円)前後だ。9月末時点に比べて約2倍の水準になっている。米国が制裁を発表した9月25日時点では同3万5千ドル前後だった。

米国は9月25日、イラン産原油の調達に関与したとして中国の大手海運傘下企業などを制裁対象にすると発表した。石油会社などが新たに船を手配し直す動きが出て需給が急速に引き締まり、早く船を押さえたいという心理が後押しして高騰が続いている。

足元では「用船者が制裁対象の船かどうか冷静に見極めるようになってきた」(大手海運)という指摘もある。海運関係者によると、傘下企業が制裁を受けた中国の大手海運企業のVLCC運航隻数はグループ全体で世界でもトップクラスだ。実際には制裁対象になっていなくても、制裁範囲が分からずリスク回避のために手配し直した例もあった。

中東情勢は6月のホルムズ海峡近くでのタンカー攻撃、9月のサウジアラビアの石油施設の攻撃などで不透明感が強まっている。10月11日には紅海でイランの石油タンカーが爆発したと伝わった。「潜在的なリスクがくすぶっているのが相場上昇の背景にある」(大手海運)との見方は多い。

今年は秋以降、環境規制もタンカー相場の上昇圧力になるといわれていた。国連の専門機関は2020年から燃料に含まれる硫黄分の上限を現状の7分の1にするよう義務付ける。VLCCは脱硫装置(スクラバー)を設置して規制に適応する割合が比較的高いとされる。改修工事には1カ月以上かかり、船腹の供給を絞る。

今後は冬場に向け輸送需要が高まる時期でもある。米国などの政治の動向にもよるが「この冬は少なくとも過去数年に比べ高値が目立つのではないか」とみられている。