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トラブル発生中の掲示板

顧客目線欠いたみずほ 2度の障害教訓生かせず 問われる経営責任〔深層探訪〕

 みずほフィナンシャルグループ(FG)と傘下のみずほ銀行は5日に発表した中間報告で、一連のシステム障害の対応が顧客目線を欠いていたことを認めた。最優先とすべき顧客対応で、二度にわたる大規模障害の教訓は生かされなかった。坂井辰史みずほFG社長らの経営責任が問われるのは避けられない。

 ◇初動対応は情報収集中心
 「広範な影響を認識できる情報をいくつも検知したのに、(問題)把握が遅れた」。坂井社長は5日の会見で、反省の弁を述べた。

 2月末、現金自動預払機(ATM)にキャッシュカードなどが取り込まれ、多数の顧客が店内で長時間待たされた。交流サイト(SNS)では被害情報の発信が相次いでいたにもかかわらず、結果的に放置された。

 中間報告は「初動対応として、システム障害の原因に係る情報収集が中心となり、結果として営業店への対応指示や対外告知など最優先すべきお客さま対応が遅れた」と指摘した。夜間や休日にカード・預金通帳取り込みが大量発生することへの想定や備えも不足していたという。

 ◇新システムに過信
 みずほでは2002年と11年に大規模なシステム障害が発生している。一因とされるグループ内に根強く残る「旧行意識」の払拭(ふっしょく)を目指し、基幹システムの一本化に着手した。

 新システムは、取引を処理する共通基盤「MINORI」と、周辺システムであるATMやインターネットバンキングなどそれぞれの取引機能が接続する仕組みだ。いずれかで不具合が発生した場合、その部分だけを切り離せる。影響を最小限にできるとして、「障害に強い」(関係者)との自負があった。

 あるみずほ幹部は、「新システムが全面稼働して2年程度たち、安心感が出たかもしれない」と振り返る。新システムへの過信があだとなり、切り離された部分で起こり得る顧客への影響に思いが及んでいなかった格好だ。

 ◇取引解約の声
 坂井社長は会見で、システム開発人員の再増強やトラブルが生じた際の駆け付け体制など、危機管理体制を強化すると表明した。

 ただ11年の障害後「3度目は許されない」として再発防止を誓ったにもかかわらず、今回の事態を招いた。「結果として障害が起きており、過去の取り組みを十分生かせていない」。坂井社長は過去の失敗から何を学んだかとの質問に対し、言葉少なくこう答えた。なぜみずほで障害が繰り返されるのかという疑問も残ったままだ。

 既にみずほとの取引を見直す動きが出てきており、銀行ビジネスへの影響も避けられない情勢だ。経営責任について坂井社長は明言を避けたが、「顧客最優先」を掲げながら、大勢の顧客を混乱させた責任は重い。

 ◇みずほ銀行のシステム障害をめぐる動き
 2月28日   デジタル口座へのデータ移行作業で不具合が生じ、ATMの7割が一時停止。顧客のキャッシュカードや預金通帳を取り込む騒ぎが5244件発生
 3月 1日   藤原弘治頭取が記者会見で陳謝
    3日   システムセンター間のネットワークが一時寸断。ATM29台が停止し、カードなどが取り込まれた
    7日   カードローンのデータ更新作業で不具合が発生し、定期預金取引が一部できない状態に
11~12日   ハードウエアの故障に加え、バックアップができず、外貨建て送金に263件の遅れが発生
         藤原頭取が記者会見
   17日   坂井辰史みずほフィナンシャルグループ社長が記者会見し陳謝
         4月1日付で予定していた頭取交代の延期を発表
   18日   坂井社長の全国銀行協会の次期会長人事を延期
   31日   金融庁に報告書提出
 4月 5日   坂井社長が会見を開き、再発防止策などを発表