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欧州中銀、新たな領域に=次の一手「信用緩和」か〔深層探訪〕
時事通信 6月7日(土)8時33分配信

 欧州中央銀行(ECB)は、マイナス金利や企業への融資促進策など、
大規模な金融緩和策を決定した。

ユーロ圏のデフレ突入阻止のため、現時点で打てる手は全て打った形だ。

ただ、副作用も伴うマイナス金利の幅を、これ以上広げるのは困難。

次の段階としては、日米のような大規模な資産購入など、
金利以外の緩和措置に踏み込まざるを得ない、新たな領域に入った。

 ◇金利、「下限に到達」

 ECBは今回の理事会で、主要政策金利を0.25%から0.15%に、
下限金利である「中銀預入金利」を0%からマイナス0.10%に、それぞれ引き下げた。

ドラギ総裁は記者会見で、「われわれは下限に到達した」と表明。

小規模な修正はあり得るものの、金利はこれ以上下げられないとの立場を示した。

 中銀預入金利は、民間銀行がECBに預けた余剰資金に適用される金利。

この金利がマイナスとなったことで、銀行は通常なら受け取れる金利分を、逆に徴収される。

このため、銀行が金利負担を嫌って資金を融資に回し、
市場金利も低下する効果が期待されている。

 独資産運用会社メッツラーの主任エコノミスト、エドガー・ワルク氏は、
金利低下で「ユーロ高を食い止められる」と評価する。

輸出への打撃や輸入物価の低下をもたらすユーロ高の阻止は、ECBの喫緊の課題だった。

 一方で、マイナス金利は金利負担を通じ、銀行の収益悪化をもたらす。

同様のマイナス金利を導入したデンマークでは、
金利負担分を相殺するため、銀行が企業などへの融資金利に上乗せする事態も起きた。

独保険大手アリアンツの主任エコノミスト、ミヒャエル・ハイセ氏は
マイナス金利について、「リスクの方が大きい」と批判。

ECBも大幅なマイナス金利のリスクを認めており、これ以上の引き下げは考えにくい。

 ◇証券購入も

 金利が下限に到達したとすれば、次の一手として考えられるのは、
「非伝統的金融政策」と呼ばれる、利下げ以外の金融緩和策だ。

 ドラギ総裁はこうした緩和策の一環として、
「資産担保証券(ABS)の買い入れの準備を加速させる」と語った。

ABSは、社債などをまとめ、証券化した金融商品。

世界的な金融危機以降は規制強化で発行額が減少しているが、
ECBは中小企業への融資を裏付けにしたABS市場が活性化すれば、
銀行も企業への融資をしやすくなるとみている。

 こうした措置は、市場に出回るお金の量を増やすという意味で
量的緩和に近い側面もあるが、
ドラギ総裁は、十分な資金量を供給するだけの証券を購入するには
「ABS市場は比較的小さい」と認めている。

また、クーレECB専任理事も
「ユーロ圏の資産購入は量ではなく、価格が目標になる」と説明する。

 一定のリスクがある資産を中銀が買い入れ、
市場の信用力を向上させる「信用緩和策」といえる措置だ。

ただ、リスクが見えにくい商品として
金融危機の引き金になったともされるABSの買い入れには、
規制面などで課題が山積しており、導入には時間がかかりそうだ。

(フランクフルト時事)