ここから本文です
投稿一覧に戻る

あとで気が向いたら読み返そうの掲示板

中央銀行ののマネタリーベース(資金供給量)伸び率では、日本が米欧比で最優位の方向に向かい始めた。為替相場では対ドル、対ユーロでの円高抑制や円安の要因となりやすい。

日本はコロナワクチン接種や感染封じ込め、経済制限の緩和などで米欧比での出遅れが目立ち始めており、中銀の「コロナ危機対応」金融緩和策の縮小では最後尾が見込まれている。かたや米欧ではワクチン普及や短期的なインフレ上昇圧力、財政出動などが重なり、危機1年経過とあいまって「前年比」でのマネタリーベース伸び率が先行鈍化してきた。

米欧ではワクチン普及と経済制限緩和の先行進展もあり、少なくともコロナ危機対応に伴う中銀の金融緩和策は縮小の可能性が注目され始めた。すでにG7内では4月21日にカナダ中銀、5月6日に英国中銀が、債券購入の規模減額やペース減速決めている。順番からすると、追随する形で米国のFRBや欧州のECBも緩和縮小が焦点になっていく。

反対にコロナ対応で周回遅れの日本では、最新4月の日銀マネタリーベース月中平均残高が、前年比+24.3%の664兆8961億円と過去最高を更新した。緊急事態宣言の再発動など受けたコロナ対応オペや短期証券の買い入れ増加などにより、伸び率は2016年7月以来の大きさとなっている。

かたやFRBの総資産は、週間統計で最新5月5日週に52週前比(約1年前比)が+16.2%となった。前週4月28日週の+16.9%からプラス幅が縮小し、危機対応からの1年経過もあって2月24日週の+82.5%をピークに拡大ペースが鈍化している。日銀による「コロナ対応」緩和強化持続の中でのFRBの緩和ペース鈍化は、為替相場のドル/円で円高抑制や円安の支援材料となりやすい。

FRBの総資産はマネタリーベースと関係しているが、4月末における「日銀マネタリーベース÷FRB総資産」の前年比格差は+7.4%の日本優位となってきた(日銀+23.4%−FRB+16.9%)。昨年5月には−80.3%の日本劣勢(米国の緩和優位)となり、相対的なドルのダブつき化がドル/円ではドル安・円高の圧力となってきた経緯がある。
それが4月には昨年1月以来の日本緩和優位、2019年9月以来(+11.0%)という日本優位方向でのプラス幅となってきた。過去に同格差が長期の日本劣勢のマイナス化(米国緩和優位)からプラス化に転じたケースとして、2012年6月があった。
当時は2007年以降の長期ドル安・円高が慣性的に持続していたが、ドル/円のドル安値は同月から同年10月にかけて77円台持続と下げ渋りに移行。2012年10月からはアベノミクス相場の始動という材料も重なり、ドル高・円安トレンドに転換した実績を有している。

ECBについても、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での債券購入を含んだ「公的部門購入プログラム」の残高は、最新4月30日週の52週前比が+10.4%と前週の+11.3%から減速してきた。やはり危機対応からの一年経過もあって、2月12日週の+12.1%をピークにプラス幅を縮小させている。

同プログラムと関係するECBのバランスシート総計も4月は前年比+41.5%となり、2月の+51.5%をピークに鈍化となってきた。結果「日銀マネタリーベース−ECB総資産」の前年比格差は、4月に−17.3%の日本劣勢(欧州優位)となっている。依然として欧州の緩和優位が続いているが、2月の−31.9%が日本劣勢のボトムとなる形で、方向性は日本の緩和優位へとトレンド転換し始めた。日銀の緩和持続と先行きECB緩和縮小が見込まれ始めるなか、ユーロ/円での円高抑制や円安要因となりやすい。

その他、日銀のマネタリーベースは最新4月に「前月比年率」が+53.6%となり、前月の+11.2%から急拡大となってきた。昨年7月の55.2%以来の大幅増であり、日本株の流動性相場持続の支援材料として注目される。
海外ヘッジファンドなどが緩和モメンタム判断で重視しているもので、過去には外国人投資家の日本株投資が追随増加となり、最低でも3−6カ月の株高ラリーが形成されてきた。

統計学的にはGDPなどに代表されるように、前年比は「平均速度」と見なされる一方、前期比(前月比)年率は「瞬間風速」の判断材料となる。
資金供給量の株価影響判断では、単純に前年比で高い伸び率が続いてもプラス幅が横這いとなれば、株価も高止まりとモメンタム減退が意識されやすい。反対に前月比年率で資金供給量が急増すると、連動する形で株式市場の形状も右肩上がり化のモメンタムを想起。期待先行の形で、緩和効果の先行き表出見通しと、投資家センチメントの前向き化が後押しされる傾向にある。