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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

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    routineWorker 5月11日 02:50

    ヘッジファンド、イベントドリブン型が快調-1993年以来の好スタート

    (ブルームバーグ): 活発なM&A(企業の合併・買収)が大規模案件の成功・不成功に賭けるヘッジファンドに大きな収益機会を提供している。

    ヘッジファンド・リサーチのデータによると、合併や買収、その他の企業取引に賭けるイベントドリブン戦略のファンドは、1-3月(第1四半期)に平均で7.6%のプラスリターンを上げ、1993年以来の好調な滑り出しとなった。成績は他のヘッジファンド戦略を上回った。

    新型コロナウイルスのワクチン普及と経済成長加速への楽観でM&Aは活発になっている。ブルームバーグがまとめたデータによると、今年に入って1兆6000億ドル(約174兆円)相当の取引が合意されており、前年同期を87%上回り、同期間として過去最高となった。

    カイト・レーク・キャピタル・マネジメントの共同最高投資責任者、ジェイミー・シャーマン氏は「世界的な合併の増加や、規制面での不確実性の高まり、クオンツファンドを中心とした2020年3月の資本引き揚げ、特別買収目的会社(SPAC)の存在などが全てM&Aスプレッドの拡大に寄与している」と述べた。

    カイト・レークのようなイベントドリブン型ヘッジファンドは、取引が完了に近づくにつれて対象企業の株価がオファー価格に向かって上昇することに賭ける。市場の不確実性は案件完了を巡り投資家を不安にするため、この価格差(スプレッド)の拡大が長く続き、ヘッジファンドに機会が生じる。

    また、フロス気味の市場環境を背景に提示価格や合意条件の引き上げが増えたことに加え、敵対的買収や買収合戦、条件引き上げを求める株主からの圧力も追い風だ。ブルームバーグがまとめたデータによると、買い手が買収価格を引き上げた案件は今年約263件と、2020年同時期の176件を上回っている。

    事情に詳しい関係者によると、イベントドリブンファンドを運営するカイト・レークの旗艦ファンドでは、1-4月の成績がプラス7.6%。メルカート・アセット・マネジメントは14.8%だった。

    原題:Hedge Funds Betting on Deals See Best Start to a Year in Decades(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • 「反トランプ」幹部、追放へ 米共和党で路線対立

     【ワシントン時事】米共和党でトランプ前大統領を批判するリズ・チェイニー下院議員が党下院ナンバー3のポストから追われる見通しとなった。

     米メディアが7日までに伝えた。トランプ氏の影響力が党内に根強く残っていることを示している。

     チェイニー氏は、ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘。保守色が強くトランプ氏と政策的には立場は近いが、今年1月のトランプ氏弾劾訴追決議案採決で賛成に回り、大統領選の不正を訴えるトランプ氏の主張を「大うそ」と批判してきた。

     チェイニー氏は今月5日には、米メディアへの寄稿で「危険で反民主的なトランプ氏の個人崇拝をやめ、真の保守主義を体現すべきだ」と党の路線転換を要求。トランプ氏の影響を強く受ける執行部もついに追放に動きだした。

     今回の内紛は政策的違いではなく、大統領選に関するトランプ氏の主張を支持するか否かが争われた。CNNテレビが4月下旬に行った世論調査では共和党支持者の70%が大統領選を「正当でなかった」と回答。1月時点の75%と大差なく、トランプ支持勢力が依然多数派だ。

     党重鎮のグラム上院議員は最近、「同僚に聞きたい。共和党はトランプ氏なしで前進できるか。答えはノーだ」と言い切り、トランプ氏の下での結束を呼び掛けた。

     共和党は12日にもチェイニー氏を「親トランプ」派のステファニク議員に交代させる見込み。党の中枢をトランプ氏に忠誠を誓うメンバーが占めることで今後、「党の顔」として前大統領を前面に出すのは確実。来年の中間選挙や3年後の大統領選をにらんだ戦略に影響しそうだ。

  • イエレン長官、特例措置「この夏」に限界も-債務上限停止7月末まで

    (ブルームバーグ): イエレン米財務長官は7日、連邦債務が法定上限を超えないようにする特例措置が今夏にも限界に達する可能性があると述べた。一部アナリストの予想よりも早期に債務問題が顕在化するリスクを示唆した。

    イエレン長官はホワイトハウスでの記者会見で、「この夏に特例措置の限界が来るというシナリオは存在する」と語った。現行の債務上限の適用停止措置は7月31日に失効する。

    財務省は5日、議会が債務上限の引き上げか適用停止に動かなければ、政府は債務返済を履行するために連邦予算内での資金繰りを余儀なくされると警告していた。

    原題:Yellen Says Debt-Limit Measures Could Be Exhausted in Summer (2)(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • 中央銀行ののマネタリーベース(資金供給量)伸び率では、日本が米欧比で最優位の方向に向かい始めた。為替相場では対ドル、対ユーロでの円高抑制や円安の要因となりやすい。

    日本はコロナワクチン接種や感染封じ込め、経済制限の緩和などで米欧比での出遅れが目立ち始めており、中銀の「コロナ危機対応」金融緩和策の縮小では最後尾が見込まれている。かたや米欧ではワクチン普及や短期的なインフレ上昇圧力、財政出動などが重なり、危機1年経過とあいまって「前年比」でのマネタリーベース伸び率が先行鈍化してきた。

    米欧ではワクチン普及と経済制限緩和の先行進展もあり、少なくともコロナ危機対応に伴う中銀の金融緩和策は縮小の可能性が注目され始めた。すでにG7内では4月21日にカナダ中銀、5月6日に英国中銀が、債券購入の規模減額やペース減速決めている。順番からすると、追随する形で米国のFRBや欧州のECBも緩和縮小が焦点になっていく。

    反対にコロナ対応で周回遅れの日本では、最新4月の日銀マネタリーベース月中平均残高が、前年比+24.3%の664兆8961億円と過去最高を更新した。緊急事態宣言の再発動など受けたコロナ対応オペや短期証券の買い入れ増加などにより、伸び率は2016年7月以来の大きさとなっている。

    かたやFRBの総資産は、週間統計で最新5月5日週に52週前比(約1年前比)が+16.2%となった。前週4月28日週の+16.9%からプラス幅が縮小し、危機対応からの1年経過もあって2月24日週の+82.5%をピークに拡大ペースが鈍化している。日銀による「コロナ対応」緩和強化持続の中でのFRBの緩和ペース鈍化は、為替相場のドル/円で円高抑制や円安の支援材料となりやすい。

    FRBの総資産はマネタリーベースと関係しているが、4月末における「日銀マネタリーベース÷FRB総資産」の前年比格差は+7.4%の日本優位となってきた(日銀+23.4%−FRB+16.9%)。昨年5月には−80.3%の日本劣勢(米国の緩和優位)となり、相対的なドルのダブつき化がドル/円ではドル安・円高の圧力となってきた経緯がある。
    それが4月には昨年1月以来の日本緩和優位、2019年9月以来(+11.0%)という日本優位方向でのプラス幅となってきた。過去に同格差が長期の日本劣勢のマイナス化(米国緩和優位)からプラス化に転じたケースとして、2012年6月があった。
    当時は2007年以降の長期ドル安・円高が慣性的に持続していたが、ドル/円のドル安値は同月から同年10月にかけて77円台持続と下げ渋りに移行。2012年10月からはアベノミクス相場の始動という材料も重なり、ドル高・円安トレンドに転換した実績を有している。

    ECBについても、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での債券購入を含んだ「公的部門購入プログラム」の残高は、最新4月30日週の52週前比が+10.4%と前週の+11.3%から減速してきた。やはり危機対応からの一年経過もあって、2月12日週の+12.1%をピークにプラス幅を縮小させている。

    同プログラムと関係するECBのバランスシート総計も4月は前年比+41.5%となり、2月の+51.5%をピークに鈍化となってきた。結果「日銀マネタリーベース−ECB総資産」の前年比格差は、4月に−17.3%の日本劣勢(欧州優位)となっている。依然として欧州の緩和優位が続いているが、2月の−31.9%が日本劣勢のボトムとなる形で、方向性は日本の緩和優位へとトレンド転換し始めた。日銀の緩和持続と先行きECB緩和縮小が見込まれ始めるなか、ユーロ/円での円高抑制や円安要因となりやすい。

    その他、日銀のマネタリーベースは最新4月に「前月比年率」が+53.6%となり、前月の+11.2%から急拡大となってきた。昨年7月の55.2%以来の大幅増であり、日本株の流動性相場持続の支援材料として注目される。
    海外ヘッジファンドなどが緩和モメンタム判断で重視しているもので、過去には外国人投資家の日本株投資が追随増加となり、最低でも3−6カ月の株高ラリーが形成されてきた。

    統計学的にはGDPなどに代表されるように、前年比は「平均速度」と見なされる一方、前期比(前月比)年率は「瞬間風速」の判断材料となる。
    資金供給量の株価影響判断では、単純に前年比で高い伸び率が続いてもプラス幅が横這いとなれば、株価も高止まりとモメンタム減退が意識されやすい。反対に前月比年率で資金供給量が急増すると、連動する形で株式市場の形状も右肩上がり化のモメンタムを想起。期待先行の形で、緩和効果の先行き表出見通しと、投資家センチメントの前向き化が後押しされる傾向にある。

  • 3月の鉱工業生産指数(2015年=100)は前月比+2.2%の97.7と2カ月ぶりの上昇となり、コロナ危機前である昨年2月の98.7以来という水準を回復してきた。

    引き続き半導体不足などによる減産圧力のほか、国内でのコロナワクチン遅れと感染打撃の長期化、米中の新冷戦余波などが重石となるが、供給不足影響であっても在庫が抑制されている分だけ、良い在庫投資と生産増の伸びシロは残存している。在庫循環では景気回復の初期段階である「意図せざる在庫減(需要回復に対しての生産の出遅れ)」に移行してきた。

    「(生産の前年比と在庫の前年比を総合判断した在庫循環図では)今年1−3月から意図せざる在庫減局面にあり、在庫調整が着実に進んでいる様子が見られる」。
     経済産業省では最新3月の鉱工業生産に関し、このような解説を行っている。在庫指数は3月に94.5となり、前月の94.4から3カ月ぶりに上昇したが、「2015年=100の基準内で2番目に低い水準を維持した」(同)。

    ただし先行きに関しては、「コロナ感染の再拡大による内外経済の下振れリスクや、半導体不足による影響などサプライチェーンの状況に注意する必要」(同)がある。同時に半導体などの供給不足による減産圧力や、国内でのワクチン遅れと感染打撃の長期化、米中新冷戦の余波と台湾海峡を巡る日中関係の悪化懸念など、不透明性へのリスクは消えていない。

    それでも在庫循環面での「意図せざる在庫減」局面入りは、景気回復の初期段階で観測される現象だ。最新3月には生産指数が単純な前年同月比で+1.6%となり(2月は−3.1%)、2019年1月以来、実に26カ月ぶりのプラス回復となってきた。かたや在庫指数は−10.1%(2月は−9.6%)と、在庫調整が持続している。

    今後は「生産修復・在庫減持続」から、次なる循環改善ステージである「前向きな在庫積み上げや在庫不足対応に伴う生産・出荷の増加サイクル(生産増と良い在庫増)」への発展余力が注目されやすい。過去実績として日本企業の利益と日経平均株価は、悪い在庫の積み上がりと生産減速入りの直面までは改善・上昇サイクルが持続してきた。その意味では現在の場合、在庫が大幅に減少していることで、「良い在庫積み上げと付随した生産拡大の伸びシロ」が潤沢に残されている。

    2019年以降は「生産減速と悪い在庫増」という循環悪化局面を経て、「生産調整の中での在庫調整(在庫減)」が持続。それが3月からは「在庫大幅減の中で生産修復」となってきた。供給不足影響はあっても、需要回復と在庫不足の中での生産回復と、在庫不足比での生産の出遅れへと移行しつつある。

    もちろん、すでに日経平均は昨年11月からこうした循環回復と企業利益のV字回復を織り込んで急上昇し、足元では踊り場調整入りとなってきた。それでも価格調整と日柄調整を経ながら、先行き生産と在庫の循環改善ピークまで株高寿命は残存している。

    現在と同じような生産の前年比マイナスからのプラス回復と、在庫調整の持続という「意図せざる在庫減」局面としては、2016年8月から2017年9月があった。同期間中に日経平均は月間の高値比較で、2017年10月に前年比+26.5%という上昇ピークまで株高モメンタムが点火されている。その後も「悪い在庫増と生産減速」が本格化する2018年10月まで、前年比+10%から+20%の株高トレンドが持続していた。
    同期間中に内閣府の全産業・営業利益は、2017年6月に前年比+16.3%、2018年6月に+12.7%の2桁成長となるなど、前年比プラスの増益基調が持続している。

    鉱工業生産に関しては、昨年からの回復を先行牽引してきたハイテク関連の先行き動向が注目される。米国株市場では5月以降、ITハイテク株が高値警戒感で調整下落の場面があり、半導体不足や米長期金利上昇の懸念、ワクチン普及によるリモートや巣篭り特需の剥落、バイデン米政権による規制強化懸念、米中の新冷戦入りなどが悪材料になっている。

    しかし、日本の鉱工業生産では、最新3月にハイテクに関連した電子部品・デバイス工業の出荷指数が100.5となり、前月比+0.7%と2カ月ぶりに上昇した。直近最高である1月の103.6に近い水準で、まだ高止まりを保っている。在庫指数は前月比−7.0%低下の53.0となり、実に2006年5月以来、約15年ぶりの低水準に低下してきた。

    半導体不足などによる悪い在庫減の側面があるものの、半導体などハイテク関連の景気循環「シリコン・サイクル」に沿えば、良い在庫投資のあと、在庫増から悪い在庫積み上がりに至るまでは、循環的な回復局面と関連株の上昇が維持支援されやすい。今回も15年ぶり低水準という在庫について、先行き積み上がり余地が株高の持続余力となる。

    電子部品・デバイス工業の在庫指数は、前年比で3月に−30.0%の大幅低下となった。2017年3月以来の大幅な在庫減だが、当時の米国のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は月間高値の前年比騰落率でプラス基調が持続している。

    具体的には2017年3月の前年比+48.6%から、同年6月の+60.4%までプラス幅が拡大。その後は2018年10月まで、前年比プラスの株高ラリーが持続している。SOXが前年比マイナスの調整局面入りしたのは、2018年11月以降の「良い在庫増から悪い在庫積み上がり」への移行局面となっていた。

    その他、3月の鉱工業生産では、設備投資に先行する資本財の出荷(輸送機械を除く)が前月比−5.4%となった。半導体などの供給不足やコロナ感染の再拡大などで、設備投資への慎重姿勢が改めて示されている。

    一方で生産予測調査での予測修正率(今回予測調査による当月見込みの指数/前回予測調査による翌月見込みの指数)によると、資本財の生産は4月調査が+1.4%となった。3月調査の+2.6%に続き、「当初計画比での上方修正」という耐性増強が示されている。

    しかも資本財生産の予測修正率は昨年11月調査の+0.8%以降、6カ月連続でプラス化を維持している。内外コロナ打撃などでの悪材料続出に対し、事前計画が複合リスクを織り込んだ控えめ予測となっていることもあって、当初計画比での上振れが続いている。先行きの緩慢ながらも着実な設備投資の改善基調を担保するものだ。

    同時に想定外の複合打撃に連続襲来されながらの予測修正率のプラス定着は、日本企業の決算でも「事前の収益見通し比での下方修正リスク低減」に寄与するものだ。為替相場の安定化とあいまって、今後の決算発表での下振れリスク緩和と、収益実績のポジティブ・サプライズによる株高余地を支援する可能性を秘めている。

  • >>317

    2. サンクコストの誤謬(sunk-cost fallacy)
     「埋没費用」(サンクコストsunk cost)とは、埋没(サンク=sunk)した費用、事業投資金の内、事業の撤退や縮小を行っても回収できない費用のことである。「サンクコストの誤謬」とは、膨大な投資をした事業を継続した場合、損をするとわかっているものの、投資資金を無駄にしたくないという本能である損失回避(Loss aversion)により、計画を続行してしまう非合理的な心理的傾向である。

    【コンコルドの誤謬】(Concorde fallacy)
     1962年、イギリスとフランスは共同で、世界初の超音速旅客機「コンコルド」の開発を始めた。世界各国から100機を超える注文が入ったものの、開発を進めていくなかで、航路が制限される、価格が高い、燃費が悪い、といったことが判明したことでキャンセルが相次いだ。開発を継続しても利益の回収が見込めないことが判明したものの、開発を中止した場合、投資した膨大な予算、労力、時間などのサンクコストが無駄となるため開発計画は続行された。最終的には、250機の受注で採算が取れるとされていたものの、16機で生産は打ち切られ、1976年に定期運航が始まったコンコルドは、2003年に全ての就航を終えた。4000億円の開発費に対して、数兆円の赤字だったと言われる。

  • 1.「ぼったくり男爵」(Baron von ripper -off)
     米ワシントン・ポスト紙(電子版)は5月5日のコラムで、日本政府は五輪中止を決断し、負担の「損切り」をすべきだと主張した。コラムでは、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵(Baron von ripper -off)」と表現し、「地方行脚で小麦を食べ尽くす王族のように開催国を食い物にする悪い癖がある」とし、多額の大会経費を開催国に押しつけていると批判した。新型コロナウイルス対策によるさらなる経費増大を踏まえて、「パンデミック(世界的大流行)の中で国際的メガイベントを開催するのは非合理的」と指摘した。さらに、東京都に対しては、東京オリンピック中止は痛みを伴うが浄化される、として、早期の中止決断を促した。
     東京都は、かつて、2020年東京五輪・パラリンピックが及ぼす経済効果を、大会招致が決まった2013年から大会10年後の2030年までの18年間で約32兆円と試算していた。経済効果は、大会開催の直接投資や支出で生じる「直接的効果」が約5兆円、大会後のレガシー(遺産)で生じる「レガシー効果」が約27兆円に上ると推計していた。
     東京五輪の大会組織委員会は、2021年夏に延期された東京オリンピックの総経費は少なくとも1兆6440億円になるとの見通しを発表している。異例の開催延期と新型コロナウイルスの感染拡大防止措置により費用が膨らんだと説明した。
     英オックスフォード大学によると、過去の夏季五輪で最大の費用が掛かったのは2012年ロンドン五輪の149億6000万ドル(約1兆5000億円)で、東京五輪に予算通りの経費が掛かれば、史上最高額の夏季五輪になる可能性がある。
     IOCの2018年末の総資産は41億ドル、流動資産は23億ドル、非流動資産は19億ドル、現金およびその他の金融資産は計37億ドルとなっており、「アスリート・ファースト」ならぬ「マネー・ファースト」の貴族集団となっている。

  • バークレイズの全持ち株を売却-物言う投資家ブラムソン氏が標的変更

    (ブルームバーグ): 物言う投資家として知られるエドワード・ブラムソンのシャーボーン・インベスターズ・マネジメントは、保有する英銀バークレイズ株6%を全て売却し、他社への投資に振り向けている。

    シャーボーンは7日、「新たに見いだした投資機会はバークレイズへの投資を継続するよりも良好なリターンを株主にもたらす」と説明した。新しい投資先は明らかにしなかった。

    シャーボーンは2018年に最初にバークレイズ株を購入。その後、投資銀行部門を拡大するジェス・ステーリー最高経営責任者(CEO)の戦略を批判し、収益性を高めるためドイツ銀行のような縮小方針を取るよう働き掛けてきたが支持を得られず、同部門の最近の強いパフォーマンスで根拠が弱まった。

    原題:Activist Investor Sherborne Sells Entire 6% Stake in Barclays(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • 環境意識の高まりが逆風に、「座礁資産」化していく原油

    5月上旬の原油価格は堅調に推移している(1バレル=60ドル台半ば)。インドやブラジルでの新型コロナウイルス感染拡大の懸念はあるものの、堅調な米国の経済指標をはじめとする原油需要の回復期待などが支援材料となっている。

     ロイターによれば、OPECの4月の原油生産量は前月比10万バレル増の日量2517万バレルだった。増加した主な要因はイランである。イランの原油生産量は前月比20万バレル増の日量250万バレルとなった。

    ■ 協調減産の規模を縮小するOPECプラス

     コロナ禍で低迷するリスクを抱える原油価格を下支えしてきたのは、OPECとロシアなどの大産油国で構成される「OPECプラス」である。OPECプラスは4月27日、共同閣僚監視委員会を開催、「世界の原油需要の回復見通しに変わりはない」と判断して、5月から7月にかけて協調減産の規模を段階的に縮小していく方針を確認した。

     OPECプラスは現在、サウジアラビアの自主減産(日量100万バレル)を含め日量約800万バレルの減産を実施している。今回の決定により、OPECプラスの減産幅は5月、6月それぞれ日量35万バレル、7月は約44万バレル縮小し、サウジアラビアの自主減産幅も5月に同25万バレル、6月に35万バレル、7月に40万バレル縮小することになる。これにより7月までにOPECプラスの協調減産の規模は日量580万バレルとなる計算である。

     OPECプラスの今回の増産は、「原油価格の上昇が国内経済に悪影響を及ぼす」と懸念する米国の意向を踏まえ、サウジアラビア主導で決定された経緯がある。この方針が打ち出された4月初めの時点では原油価格の下落が危惧されていた。

     OPECプラスは「今年の世界の原油需要は日量約600万バレル増加する」との強気の見方を維持しているが、次回の閣僚級会合を6月1日に開催し、7月と8月の生産水準を検討するとしている。

    ■ 化石燃料は今後「座礁資産」に? 

     足元の原油需要は回復基調にあるが、中長期的な展望は芳しくない。

     OPECプラスの協調減産は2022年4月まで続くことになっているが、ロシア第2位の石油会社であるルクオイルの幹部は4月26日「OPECプラスが目指す世界の原油市場の均衡化は長期的な取り組みとなる。気候変動を巡る新たな現実を踏まえれば、恒久的なものになるかもしれない」との見解を示した。

     国際エネルギー機関(IEA)は4月14日、「世界の原油需要がコロナ前(2019年)の水準である日量1億バレルを超えるのは2023年になるが、ガソリン需要は2019年の水準に戻らない可能性がある」との予測を示した。

     原油を巡る環境が悪化している背景に、気候変動問題への危機意識に対する国際的な高まりがあることは言うまでもない。トランプ前政権とは異なり、バイデン政権は4月22日から23日にかけて気候変動サミットを主催するなど極めて前向きである。自らが提案したインフラ投資計画の財源を捻出するため、化石燃料企業への助成を廃止する(今後10年間で350億ドル規模)としている。

     世界の投資家の間では「原油などの化石燃料は今後『座礁資産』となる可能性が高い」との見方が広まっている。座礁資産とは、社会の環境が激変することにより、価値が大きく毀損する資産のことを指す。二酸化炭素排出量の大幅削減を余儀なくされる環境下で化石燃料の資産価値が大きく下がるというわけである。

    ■ ロシアの石油産業が抱える「深刻な問題」

     原油が「座礁資産」化するとの見方は、今後の価格動向に影響を与える。

     英エネルギーコンサルタント会社であるウッド・マッケンジーは4月15日、「各国政府が足並みを揃えて化石燃料の消費削減を推し進めれば、原油価格は2030年までに1バレル=40ドル前後にまで下落する可能性が高い。2050年までに1バレル=10~18ドルにまで下がるかもしれない」とする衝撃的な予測を出した。

    「価格が下がれば収入を確保するために増産しなけれなばならない」という悪循環が起き、世界の石油会社は今後「冬の時代」を迎える可能性が高い。中でも深刻な問題を抱えているのはロシアの石油産業のようである。

     ロシア天然資源・環境省のキセリョフ次官は4月中旬、政府機関紙であるロシア新聞のインタビューで「ロシア産原油の可採埋蔵量は58年分あるとされているが、そのうち現在の条件下で利益が出るのは19年分に過ぎない」と発言し、話題を呼んでいる。

     エネルギー省のソロキン次官も今年(2021年)1月、「エネルギー政策」という雑誌に投稿した論文の中で「ロシア産原油の可採埋蔵量は約300億トンとされているが、このうち現在のマクロ経済条件下で利益が出るのは36%のみである」としていた。ロシアのここ数年の原油生産量は約5.5億トンであることから、ロシア産原油の「寿命」は約55年だが、利益が出る部分(36%)のみをカウントすれば、20年弱である。

     このようにロシア政府幹部が相次いで「自国産原油の寿命が20年に満たない」と語っているのである。2020年6月に採択された「2035年までのエネルギー戦略」でも「2035年時点の原油生産量は良くて現状維持、悪ければ現在より12%減少する」と見込んでいる。

     悲観的な予測の要因として、ロシアの原油生産に関する開発条件が急速に悪化していることが挙げられる。ロシアを石油大国の地位に押し上げたのは、西シベリアのチュメニ州を中心とする大油田地帯である。巨大油田が集中し、生産コストが低かったが、半世紀以上も大規模な開発が続けられた結果、西シベリア地域の原油生産は既にピークを過ぎ、減産フェーズに入っている(過去10年間で原油生産量は10%減少)。ロシアが現在の原油生産量を維持するためには東シベリアや北極圏などで新たな油田を開発しなければならない。だが、2014年のロシアによるクリミア併合に対する欧米諸国の経済制裁が続いている中では、技術・資金両面で制約があり、期待通りの開発が進んでいない。

     ロシアの石油産業は同国のGDPの15%、輸出の40%、連邦財政の歳入の45%を占める経済の屋台骨である。旧ソ連崩壊を招いた大本の原因は1980年代後半の原油価格の急落であると言われている。プーチン大統領の登場後に世界の原油価格は上昇し、ロシアは大国の地位に返り咲けたが、自国の原油埋蔵量の枯渇という未曽有の事態が生ずれば、再び苦境に立たされてしまうのではないだろうか。

    ■ 連日フーシ派の攻撃を受けるサウジアラビア

     世界第4位の原油輸入国である日本にとって、原油価格が今後長期的に下落していくことは朗報のはずだが、手放しで喜べないかもしれない。日本の原油輸入の4割を占めるサウジアラビアが苦境に陥ることが予想されるからである。サウジアラビアは「ビジョン2030」を掲げて脱石油経済を進めようとしているが、足元の状況は石油依存がかえって高まるというジレンマに陥っている。

     サウジアラビアにとっての頼みの綱である国営石油会社サウジアラムコの株価が今年4月以降下落している。イエメンのシーア派反政府武装組織フーシ派がサウジアラムコの石油施設に対してミサイル・無人機による攻撃を連日のように実施しているからである。サウジアラビアによるイエメンへの軍事介入は7年目に入ったが、戦果を挙げるどころか、フーシ派から手痛い反撃を食らう事態が多くなっているのである。

     バイデン政権は発足直後からサウジアラビア主導のイエメン内戦への軍事介入に関する支援を打ち切り、人権問題を理由にサウジアラビアに対する武器売却を凍結している。サウジアラビア側は「フーシ派の攻撃を未然に防いだ」との大本営発表を繰り返しているが、自国の対空防衛システムがうまく機能していないことから、新たな高性能対空防衛システムを購入すべく欧米諸国に使節団を派遣したとの情報がある。

     サウジアラビアはさらにフーシ派の後ろ盾とされるイランにも「助け」を求め始めている。英フィナンシャルタイムズは4月18日、「激しい対立が続くイランとサウジアラビアが2016年の断交以来初めて直接協議を行った」と報じた。イラクのカディミ首相の仲介によりバグダッドで行われた協議の内容は、フーシ派によるサウジアラビアへのミサイルや無人機による攻撃についてである。「バイデン政権があてにできない」と判断したサウジアラビアの苦渋の選択なのだろう。「バイデン政権は中東地域における主要な同盟国をサウジアラビアからアラブ首長国連邦にスイッチしようとしている」との憶測も生じている(3月22日付OILPRICE)。

     このように、大油田地帯である中東地域やロシアで政情が不安定化すれば、「座礁資産」とみなされつつある原油の価格が急騰する可能性がある。くれぐれも「油断」は禁物である。

    藤 和彦

  • 欧州が半導体確保に本腰へ、これまで「甘かった」-欧州委ブルトン氏

    (ブルームバーグ): 欧州委員会のブルトン委員(域内市場担当)は、過去数十年にわたり欧州は半導体設計・製造の相当な部分を外注することに関して認識が甘かったと述べた。欧州委は5日に域内の半導体生産を2030年までに倍増させる計画の詳細を公表する。

    ブルトン氏は半導体を巡る不均衡の是正は可能だと指摘。自動車メーカーや電子部品サプライヤー企業の足を引っ張っる世界的な半導体不足は、今こそ行動を起こすべき時であることを示していると続けた。

    フランスの大手IT企業アトスやフランス・テレコムの最高経営責任者(CEO)を務めた経験もあるブルトン氏はブルームバーグとのインタビューで、「われわれの産業ニーズに応えるため、以前のような半導体製造のシェアを取り戻したいと考えている」と発言。欧州のシェアが長年にわたって落ち込んだ理由は欧州が「あまりにも認識が甘く、オープンであり過ぎた」ためだと語った。

    欧州委は今年3月、半導体生産を30年までに倍増し、世界シェアを少なくとも20%へ引き上げる計画を打ち出した。ブルトン氏によれば、5日公表する詳細には、欧州の主要な半導体企業や研究所、多数のEU加盟国政府で構成する業界連合の設立が盛り込まれている。これまでに少なくとも22カ国が趣意書に署名したという。

    欧州はかつて世界の半導体製造を支える中心的な存在だった。1990年代に世界の約44%を担っていた欧州の半導体製造能力は今は10%程度だ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と米半導体工業会(SIA)によれば、台湾と韓国、日本が半導体製造で世界の約60%を占めている。

    原題:Europe Looks to Secure Chip Supply After ‘Naive’ Past Approach(抜粋)

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • ブルームバーグによると、半導体や鉄鋼、木材、綿などさまざまな原材料の在庫が逼迫(ひっぱく)していることが調査データで顕在化している。欧米の製造業者は今週、受注残が過去最高となり、投入価格が上昇していると指摘。各社は在庫補充を急ぎ、加速する消費者の需要に追い付こうとしている。

    エコノミストや米連邦準備制度などの中銀当局者の多くは、物価上昇は一時的なもので、新型コロナウイルスを巡る懸念や失業といった要因によって抑制されるとの立場を維持している。一方、投資家は依然として懐疑的で、ネスレやコルゲート・パルモリーブなどの企業は値上げの必要があると既に表明している。

    連邦準備制度理事会(FRB)前議長でもあるイエレン米財務長官は4日に公開されたインタビューで、政府の支出拡大に伴い金利は上昇する公算が大きいとの認識を示し、市場の動揺を招いた。その後、同長官は利上げを予想したわけでも推奨したわけでもないと釈明した。

  •  2021年9月26日のドイツ連邦議会選挙を5カ月後に控えて、調査会社フォルザが4月20日に発表した世論調査結果によると、野党の緑の党が28%で首位、連立与党のキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)が21%、連立与党の一角を占める社会民主党(SPD)が13%で続いた。
     ドイツ政治のリスクシナリオは、総選挙で緑の党が躍進し、ベアボック第9代独首相が誕生する可能性、すなわち、ロシア、欧州連合、米国との対立鮮明化となる。

    1. ベアボック緑の党首相候補(1980年生まれの40歳女性)
     4月19日、ドイツの野党「緑の党」は、気候変動に立ち向かうグリーン経済の推進者であるアナレーナ・ベアボック(1980年12月生まれの40歳)をドイツの次期首相候補に指名した。

    ・16歳:米国のフロリダに交換留学生として1年間滞在したことで英語が堪能
    ・トランポリン:ドイツ選手権で銅メダルを3回獲得
    ・学歴:
     ハンブルク大学(政治学と法律)
     ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(国際公法)
    ・2005年(24歳):緑の党に入党
    ・2013年(32歳):ドイツ連邦議会議員
    ・2017年(36歳):ドイツ連邦議会議員再選。
    ・2018年1月(38歳):「緑の党」の共同議長に選出
    ・2021年4月(40歳):「緑の党」の次期首相候補に指名

    ■緑の党
    ・2030年までにCO2排出量を1990年比で55%から70%削減する
    ・子力発電の終了時期を、現在の2038年から2030年に早める
    ・天然ガスのパイプライン・プロジェクト「ノルド・ストリーム2」に反対
    ・ドイツがNATO内で約束している2%の防衛費目標に反対

    2. ラシェット独キリスト教民主同盟(CDU)首相候補(1961年生まれの60歳男性)
     4月20日、ドイツ最大与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は、アルミン・ラシェット氏(CDU党首、ノルトライン・ウェストファーレン州首相)を首相候補として選出した。ラシェット氏は、メルケル独首相の側近であり、独首相に選出された場合、中道路線を継承することが予想されている。

    ・1979年(18歳):キリスト教民主同盟(CDU)に入党
    ・1994年(33歳):ドイツ連邦議会議員
    ・2017年(56歳):ノルトライン=ヴェストファーレン州首相
    ・2021年1月16日(59歳):CDU党首
    ・2021年4月20日(60歳):CDU/CSUの次期首相候補に指名

  • >>310

    今回のベライゾンのケースは、キャリアとメディアのビジネスの相性の悪さを示した、巨大な失敗例と言える。

    さらに、デジタル広告市場で、グーグル、フェイスブックの間に割って入るのは、資金力のあるキャリアでも、相当にハードルが高いということもわかる。

    一方で、このところ、メディア買収に名乗りを上げるのは投資ファンドが目立つ。だがこれまでの事例は、いずれも激しいリストラで利益を絞り出すという、メディアにとっては辛い状況となっている。

    ベライゾンの戦略の変遷は、そんなメディア状況を考える手がかりにもなりそうだ。

  • 1兆円の「歴史遺産」Yahoo、AOLが半値で売り払われる

    買収にかかったコストは総額で1兆円近く。ウェブメディアの「歴史遺産」米ヤフー、AOLを売り払う日が来た――。

    米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズと投資ファンドのアポロ・グローバル・マネージメントは3日、ベライゾン傘下のメディア部門、ベライゾン・メディアの買収契約で合意した、と発表した。買収金額は50億ドル(約5,450億円)。買収後の名称は「ヤフー」となる。

    ベライゾンは6年前から本格的なメディア戦略に乗り出し、米ヤフー、AOLといったインターネットの「歴史遺産」とも言うべきウェブメディアを次々に買収。その総額は約90億ドル、日本円で1兆円近くにのぼった。

    「コンテンツバブル」とも呼ばれたブームに賭けたベライゾンのメディア戦略は、結局、グーグル、フェイスブックによるデジタル広告市場の複占に切り込むことはできず、ハフポスト、タンブラーなどを売却済みだ。今回の売却で、その戦略は幕を閉じる。

    グーグル、フェイスブックが支配するデジタル広告市場、ネットフリックス、アマゾンのサブスクリプション(定額)動画配信。これらのプレイヤーのはざまで、どうポジションを取るのか。

    メディアビジネスの現在地が見えてくる動きだ。

    ●メディア戦略からの撤退
    ベライゾン・メディア売却の動きは、この数日、ウォールストリト・ジャーナルやブルームバーグが相次いで報じていた。

    ベライゾンとアポロの3日の発表によれば、ベライゾンは現金で45.5億ドルとベライゾン・メディア(新ヤフー)の優先株で7.5億ドルを受け取り、同社の株10%を保持する。CEOはベライゾン・メディアのグル・ゴウラパン氏が引き続き務める。

    ベライゾン・メディアの売却は、携帯電話契約者数で米最大手のベライゾンによる、デジタル広告収入獲得を狙ったメディア戦略からの撤退を意味する。

    ベライゾンはメディア戦略の中で、2020年までに年間売上高100億ドル達成を掲げていた。だが2020年のベライゾン・メディアの売上高は71億ドル。目標には届かなかった。

    ただ、新型コロナ禍でのデジタル需要は追い風となっており、ベライゾン・メディアの2021年の第1四半期の売上高は19億ドルで前年同期比10.4%増。2020年の第4四半期も23億ドル(11.4%増)と2期連続の10%台の伸びを示している。

    ベライゾンとしては、“売り時”と判断したようだ。

    ベライゾン・メディアが擁するのはヤフー、テッククランチ、エンガジェット、AOLなど。

    ヤフーは1994年設立のネット検索の草分け。AOLは前身の設立が1983年にさかのぼる、パソコン通信時代からの老舗。2000年のタイム・ワーナーとの「世紀の合併」は、メディア界におけるインターネット時代の到来を印象づけた。

    ●「コンテンツバブル」の中で
    ベライゾンが本格的なメディア戦略に乗り出したのは、2015年のAOL買収だ。買収額は44億ドル。

    「コンテンツ」と「スケール」が合言葉となり、大手の通信会社やメディア企業が入り乱れ、新興のウェブメディア買収劇が繰り返された時期だ。

    ※参照:米メディアの相次ぐ買収劇は「コンテンツバブル」終焉の始まりか(05/30/2015 新聞紙学的)

    AOLは「世紀の合併」の失敗を経て、2009年にタイム・ワーナーとは分離しており、ネット接続事業のほかに、ハフィントン・ポスト(現ハフポスト)、テッククランチ、エンガジェットなどのネットメディア、さらにネット広告事業を抱えていた。

    当時のベライゾンの会長兼CEOのローウェル・マカダム氏は、この買収について、「デジタルコンテンツと広告への市場の移行に参入する」と述べている。

    また、買収後もAOLの会長兼CEOとして続投したティム・アームストロング氏も、「モバイルと動画による次世代メディアをつくる」と宣言した。

    さらにベライゾンは、翌2016年にはヤフーの買収を発表。2017年の44億8,000万ドルでの買収完了に合わせて、「オース」という社名のもとに、50にのぼるメディアブランドを運営する。

    アームストロング氏はこの時、「2020年までに年間売上高を100億~200億ドルに」という目標を公言している。

    ●グーグルとフェイスブックの壁
    だがメディア事業は低迷を続けた。「コンテンツとスケール」の戦略は、グーグルとフェイスブックによる、デジタル広告市場の複占の壁に突き当たり、ネットメディアの苦境が露呈する。

    イーマーケターのデータによると、2020年の世界のデジタル広告市場は、3,781.6億ドル(約41兆2,500億円)。同年のグーグルのサービスの広告を中心とした収入は1,686億ドル。フェイスブックの広告収入は842億ドル。

    つまり、グーグルとフェイスブックが6割近くを占める複占状態だ。ここにポジションを取れるかどうかが戦略の要になる。

    ※参照:「スケールか死か」米メディアで起こる地殻変動(11/18/2017 新聞紙学的)

    そして、2018年に潮目が大きく変わる。

    メディア戦略を主導したベライゾンCEO、マカダム氏の2018年7月いっぱいでの退任が発表される。後任となったのが、同社の上級副社長で、元エリクソンCEOのハンス・ベストバーグ氏だ。

    ベストバーグ氏は、5G推進へと大きく舵を切る。そして、メディア戦略を公約を掲げた「オース」のアームストロング氏も同年9月で退任。翌月、COOでアリババやヤフーでのキャリアもあるグル・ゴウラパン氏が新たに就任する。

    そして同年12月には、「オース」について46億ドルにのぼる評価損を計上している。ベライゾンがAOLとヤフーの買収に投じた約90億ドルの半分が、評価損として消えたわけだ。

    証券取引委員会(SEC)への報告で、ベライゾンは「オース」の事業をこう総括している。

    2018年を通じての競争と市場の圧力の高まりを受け、売り上げと収益は予想を下回る結果となった。この圧力は今後も続くことが見込まれ、すでにデジタル広告事業における競合社に対する市場ポジショニングを失う結果となっている。オースはヤフーとAOLのビジネスの統合によって期待された収益を達成できなかった。

    グーグル、フェイスブックの複占に対して、ポジションは取れなかった、という結論だ。

    これと合わせてメディア事業名の「オース」も、わずか1年半で、ベライゾン・メディアへと変更された。

    さらに翌2019年1月早々に、社員の7%にあたる750人のリストラが始まる。

    ※参照:米メディア、1日で1000人のリストラ明らかに(01/25/2019 新聞紙学的)

    その果てに、傘下のブランド売却が進む。まず2019年8月、マイクロブログサービスの「タンブラー」を、ブログサービス「ワードプレス」を運営するオートマティックに売却。

    さらに2020年11月、バズフィードによるベライゾン・メディア傘下のハフポストの株式交換による買収が明らかになる。

    ※参照:編集長たちは次々と去り、残ったメディアは合併する(11/22/2020 新聞紙学的)

    そして、メディア戦略からの撤退戦の仕上げが、今回のベライゾン・メディアの売却となる。

    ●メディアの現在地
    ベライゾン・メディアの売却先とされるアポロ・グローバル・マネージメントの名前は、2019年のゲートハウス・メディアによるガネット買収の際にも登場している。

    ※参照:デジタル移行への布石か、焼き畑ビジネスか|ガネット買収で誕生する巨大新聞チェーン(08/07/2019 新聞紙学的)

    この大型買収により、合わせて発行部数870万部という全米最大の新新聞チェーン「ガネット」が誕生した。この時の買収額は13億8,000万ドル。

    この買収に際して、ゲートハウスのゲートハウスの親会社、投資ファンドのニュー・メディア・インベストメント・グループ(NEWM)に18億ドルの融資をしたのが、アポロだ。

    ニューヨーク・タイムズなどによると、アポロは、今回のベライゾン・メディアの買収によって、ヤフー・スポーツでのスポーツベッティング(賭け)や、ヤフー・ファイナンスのプレミアムサービスなどでの収益増を見込むという。

    一方のベライゾンは、5Gインフラへのオークションなどで、すでに530億ドルを投入。さらに今後3年間で100億ドルの設備投資を計画している。

    ベライゾン・メディアで手にする45.5億ドルの現金も、この5G投資の負債に当てるものと見られている。

    コンテンツ戦略については、2019年11月に、ディズニーとの間で「ディズニー+」のユーザーへの1年間の無料提供に合意するなど、調達路線を取る。

    一方で、メディア戦略を続ける大手通信会社もある。AT&Tは2016年にタイム・ワーナーを854億ドル、債務負担を含め1,087億ドルで買収している。

    そして、タイム・ワーナー傘下のケーブルチャンネルの「HBO」に加え、2020年5月からは定額動画配信「HBOマックス」をスタート。合わせて、2025年までに1.2億~1.5億ユーザー獲得を掲げる。

    ネットフリックス、アマゾンがひしめく定額動画配信の一画をうかがう構えだ。

    メディア環境の変化と現在地の中で、その戦略をどう見定めるのか。

  • 「眠らぬ街」復活か ニューヨーク、経済活動を再開へ

     米国で新型コロナワクチンの接種が急速に進むなか、ニューヨーク(NY)市が7月1日にも経済活動を全面再開させる方針を示した。感染拡大の中心地だったNYは、これまで飲食店の営業などで厳しい制限が課せられてきた。「眠らない街」といわれた都市は、元の姿を取り戻すことができるのか。(ニューヨーク=藤原学思、真海喬生)

     「NY市における完全な経済活動の再開について、目標を設定すべきときが来た。7月1日だ」

     デブラシオ市長は4月29日、会見でそう発表した。「みなさんがワクチンを受けているからだ。トンネルが終わる光が見える」。実現すればオフィスや飲食店、文化施設の人数制限が約1年4カ月ぶりになくなる。

     NY市では、疑いも含めれば全市民の1割以上に当たる92万人が新型コロナに感染し、3万2千人以上が死亡した。一時は24時間で新規感染者が6千人を超えたこともあったが、現在は1千人台で推移し、減少傾向が続いている。

     NYでは昨年12月中旬、医療従事者や高齢者施設の入所者を対象にワクチンの接種が始まった。それから一般高齢者、疾患を抱えている市民と徐々に対象を拡大。16歳以上の市民は現在、予約なしでワクチンを受けることができる。

     市が掲げる目標は「6月までに500万人の接種完了」。これまでに18歳以上の5割強にあたる350万人が少なくとも1回の接種を終えており、達成は十分可能なペースだ。

     ワクチン接種会場は大リーグ・ヤンキースの本拠地や、市内最大規模のコンベンションセンターにも設置された。4月23日には、アメリカ自然史博物館内の、長さ29メートルに及ぶ等身大のクジラの模型下にもできた。接種後には4人分の博物館入場券がもらえるというオマケ付きだ。

    ■疲弊した街にともる希望

     文化や経済の中心地であるNY市には2019年、過去最多の6660万人が訪れた。だが、新型コロナの影響で20年は2230万人と3分の1の水準になり、21年も3640万人と予想されている。以前は700あった宿泊施設のうち約200が閉まった。

     NYの観光業は40万人の雇用を生み、700億ドル(約7兆6千億円)もの経済効果を地域にもたらしてきた。壊滅的な打撃を受けた業界を支えようと、市は6月から、3千万ドルをかけてマーケティングキャンペーン「NY市再覚醒」を始める。

     特に再開が待たれるのはブロードウェーだ。すでに1年以上公演が休止されている。デブラシオ氏は9月までに再開したい意向を示している。

     中心部のタイムズスクエアには4月、劇場関係者のためのワクチン接種会場ができた。ミュージカル「ハミルトン」で脚本と作詞作曲、主演を担ったリン・マニュエル・ミランダ氏はその際の会見で、「また集まりたい。暗闇の中で物語をつむぎたい。安全だと思えなければ、それはできない」と声を震わせた。

     「眠らない街」の象徴として24時間運行を続けていた地下鉄は、コロナ禍で未明の4時間を消毒に充てていたが、現在の運行休止時間は1日2時間。4月8日にはコロナ禍で初めて1日の乗客数が200万人を超え、ようやくコロナ前の4割ほどの水準になった。

  • アリババクラウド、クラウド市場で世界3位を維持 シェアは5年連続で上昇

    米調査会社「ガートナー(Gartner)」が4月21日、世界クラウドコンピューティング市場追跡データを発表した。アリババグループ傘下の「アリババクラウド(阿里雲)」の市場規模は643億9000万ドル(約6兆9300億円)で世界3位、アジア太平洋地域では1位だった。

    今やアマゾンの「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」、マイクロソフトの「Azure」、そしてアリババクラウドによる「3A」体制が確立されつつある。

  • 高級物件が販売好調、米経済のK字回復傾向が鮮明に

    オンライン不動産仲介会社の米レッドフィン(Redfin)によると、同国の高級住宅の販売数は今年第1四半期、前年比およそ42%増となり、その他の価格帯の住宅を大幅に上回る伸びを記録した。回復傾向が見られる経済において、不平等がさらに拡大していることがうかがえるという。

    レッドフィンは売りに出されている住宅全体のうち、価格の上位5%までに入る住宅を高級物件としている(価格の中央値は97万5000ドル、約1億600万円)。「手ごろな価格」に分類される住宅の価格の中央値は、18万4440ドル(販売数は前年同期比7%増)、「中価格帯」の中央値は27万2000ドル(同5.9%増)だった。

    また、昨年同期と比べて高級住宅の販売数が最も増加したのは、フロリダ州マイアミ(+101.1%)、カリフォルニア州サンノゼ(+92.3%)、カリフォルニア州オークランド(+82%)、カリフォルニア州サクラメント(+79.3%)、ラスベガス(+72.7%)の各都市となっている。

    個人向け金融情報サイト、バンクレート(Bankrate)の主任アナリスト、グレッグ・マクブライドは、失業や収入の減少など、パンデミックの影響を最も直接的に受けた世帯の家計状況が悪化する中、多くの世帯が資産を増やしており、米経済の回復は「K字」型になっていると指摘している。

    住宅ローン金利が低水準に抑えられていることで、特に沿岸のリゾート地で、裕福な世帯はより大きな住宅、セカンドハウス、別荘を購入しているという。

    米国モーゲージ銀行協会の広報責任者、アダム・デ・サンクティスは、高所得世帯の多くのはパンデミックによる失業の影響を受けておらず、「多くはこれから休暇を楽しむために、貯蓄を使ってリノベーションをしたり、より大きな家を購入したりしている」と述べている。

    一方、マイアミに拠点を置くある不動産業者は、「フロリダ州には所得税がないこともあり、南フロリダの高級住宅は買い手にとって非常に魅力的だ」として、次のように話している。

    「顧客の多くは、ニューヨークやコネチカットなどの州から来ている。中にはヘッジファンドで働く人たちなどもいる」

    「サンフランシスコほど遠く離れたところから問い合わせを受けるのは、初めてだ。また、問い合わせてくる人たちは退職したスノーバード(冬の間だけフロリダ州に滞在する北部州の住民)ではない。現役世帯の人たちだ」

    また、パンデミックの影響を受け、近所の住民との接触が避けられないコンドミニアムではなく、隣家との距離がある住宅、中でもウォーターフロントの物件を探す人が多くなっているという。

    高価格帯は売り物件が増加

    高級住宅市場では今年第1四半期、新たに売りに出される物件が前年比15.8%増加した。一方、その他のすべての価格帯では、市場に出てくる物件が減少していた。

    レッドフィンのチーフエコノミストによれば、手ごろな価格の住宅は、大幅に不足している状況だ(同3.5%減)。高級住宅以外の物件を所有している人たちは、新しい家が見つからないことを懸念し、今住んでいる家を手放そうとしないという。

    高級住宅は、売りに出されてから買い手がつくまでの期間も大幅に短縮されており、平均日数は61日。昨年同期と比べて、38日少ない日数となっている。

  • >>305

    欧米的理想の「欧米中心主義的な部分」を冷静に見極め、ちゃんとローカライズを行うことで、その「理想」を非欧米諸国にも根付かせることが初めて可能となる。

    米中冷戦の時代に「2つの世界」を止揚する明確な世界観を立ち上げ、米ソ冷戦時代の日本にあったような独自の繁栄のポジションを築き上げることは十分可能だと私は考えています。

    色々と難しい状況下に、徹底して本質的に考えるべき課題が山積みですが、なんとか一歩ずつあるべき理想へと近づいていきましょう。

    倉本圭造

  • >>304

    3:富裕層や多国籍企業への増税は「やる気の問題」である

    変な言い方ですが、サエズ氏の本を読んでいて印象的だったのは、「富裕層や多国籍企業にちゃんと税金を課す」のは、「やる気の問題」であるということです。

    「レーガン時代」以前までは、アメリカは累進税率もかなり高く、法人税も高い国と言われていて、特にそれが問題だと捉えられてもいなかった。

    しかし、レーガン時代あたりから「税金は個人の財産権への泥棒だ」といったような理解が広まり、課税逃れを実際にする人が「先に」増えることで、後付け理論で税制がネオリベ的に転換してきたのだ…という分析が面白かったです。

    そして、じゃあ80年代までアメリカが「富裕層や多国籍企業に厳しい態度」を取れていたのはなぜかというと、それは「戦争の記憶」、具体的に言えばフランクリン・ルーズベルト大統領の記憶…といったものであるようです。

    戦前においても、「課税逃れを目指す富裕層と連邦政府との争い」は常にあったんだけれども、戦時中のルーズベルト大統領がかなり真剣に「そういう考え方は悪だ」と言ってまわり、具体的な規制を次々と打ち出し、実際に摘発もしていったことで、「富裕層や多国籍企業が高い税率を払うのは当然だ」という風潮はギリギリ維持できていた。

    しかし、第二次世界大戦の記憶=ルーズベルト的価値観が薄れてくると、ちゃんと「富裕層への課税に対する多くの人の共感」を得られなくなってくるわけですね。

    そうすると、実際に課税逃れも増えるし、理論的裏付けを唱える経済学者や政治家に働きかけるロビイストたちが現れることで政策が転換されていった。

    日本においても、アメリカ型格差社会に近かった戦前から、戦争中の「国家総動員体制」を経ることで、「日本型雇用モデル」を中心とする昭和の「一億総中流」的社会が実現した…という指摘はよくされていますよね。

    ライターの赤木智弘氏が「「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」という論考を2007年に発表して当時話題になっていましたが、「現代の個人主義的文明社会が果てしなく社会を“個人”だけにバラバラにしていくと、富裕層への課税といった政策課題への合意すら本能レベルで雲散霧消してしまい、結局そういう社会の存続すら危うくなってしまうのだ」という人間社会の真実とぶち当たっているのかもしれません。

    バイデンの演説はかなりルーズベルトを意識しているという話があります。

    単なる「議論」を超えて実際に「国家」を動かすには、トランプ派を黙らせるだけの「愛国心のコア」として、民主党側の象徴的記憶としてのルーズベルト的なものが必要だということなのかもしれません。

    そして、「米中冷戦」「対コロナ戦争」を強調することで初めて、「富裕層や多国籍企業」への増税を正当化し、「アメリカは再び動き出した!」と宣言することができつつある。

    最近日本でも話題になっているマイケル・サンデルの新刊『能力主義は正義か』では、

    「アメリカの有名大学を中心とするエリート主義が、無意識に“普通の人”を見下していることがトランプ的ポピュリストの反撃につながったのであり、そういう能力主義とは隔絶した“国民にとっての共通善”という概念を取り戻すべきだ」

    という議論がなされていますが、こういうのも同じ「時代の気分」として今後立ち上がってきているものなのだと思います。

    先程、「アメリカ型の経済学」を転換する役割を果たしているのはフランス人が多いという話をしました。

    サンデルはアメリカ人ですが、若い頃英国留学経験もありますし、そもそも専門分野が「欧州的な政治哲学」なのは明らかです。

    これは、「アメリカ型の何でも政治争点化して果てしなく糾弾しまくる傾向」への反発をフランス人インテリが表明しつつある流れや、おりしも欧州サッカーの「スーパーリーグ」といういかにもネオリベ的な改革が「草の根サッカーファンの反発」で頓挫しつつあるように、「個人だけが存在する」世界観への大きな転換期に、今の世界はあるわけですね。

    その「欧州型共同体思想」だけでは単なる「インテリの内輪の話」ですが、それに ・アメリカにおけるフランクリン・ルーズベルトの思い出 ・欧州サッカーにおける、有名ビッグクラブだけでない比較的無名なローカルチームへの狂気レベルの地元の思い入れ といった「ナショナルなもの」を共鳴させることで、本当に具体的な「格差是正策」を動かしていくことが可能になるのだと言えるでしょう。

    日本においても、「ネオリベ路線を拒否する共同体主義的理想」を「受肉」させるヨリシロとしての、「フランクリン・ルーズベルト」や「欧州サッカーのローカルチームへの狂気レベルの思い入れ」的なものを用意できるかどうか?それがこれからの課題でしょう。

    そういう意味で考えたい余談なのですが、先ほど紹介したサンデル『能力主義は正義か』の感想で「アンチリベラル派のネット論壇の面々が言ってきたことと近い」という意見がいくつも見られたことが非常に興味深かったです。

    それが何かをざっくり言えば、いわゆる「ポリコレ運動」が、アメリカにおいて「大卒でない白人男性」に対してあまりに攻撃的な態度に出過ぎることは問題だよね…といった話がサンデル本には書かれているんですが、日本における「立憲民主党がポリコレ的理想ばっかり掲げて、最大多数を占める無党派の『まずはこの不景気をなんとかしてくれ』という切実な願いの実現を二の次にしている(ように見える)から、いつまで経っても支持されず自民党に勝てないんだ」という批判を「トランプ支持者が増えた理由」と重ね合わせているということです。

    とはいえトランプや自民党を支持しないリベラル派からすれば、「国会議事堂を暴力で占拠するトランプ派や、公文書を改ざんする自民党政権の方がよっぽど酷いことをしてるじゃないか!」と反論したくなると思います。

    ただ「中間層の復活」路線を単にインテリのオシャベリに終わらせるのではなく、「フランクリン・ルーズベルト的紐帯の中心」に昇華させるためにこそ、「大卒でない白人男性」的な存在にも納得してもらえる姿勢や方法論を打ち出す、つまり「批判を受けて立つ」必要はあるんじゃないかと私は考えています。

    その話については「サンデル新刊「能力主義は正義か」と日本のネット論壇が描く新しい未来像」というnote記事でたっぷり書きましたので、興味のある方はお読みいだければと思います。

    4:アメリカ人が団結する「ルーズベルト的理想」を日本でどう用意するか?
    日本でも、今後この大きな世界的流行は重要性を増していくはずです。

    アメリカの場合は「フランクリン・ルーズベルト」という「(ポリコレ的にも)正しい記憶」を呼び覚まして、国民の糾合の本能的裏付けにすることができますが、日本においては、「昭和の一億総中流」を支えたバックボーンとしての「国家総動員体制」に対して一方的なスティグマを貼る風潮が激しいところが、なかなか難しい部分となるかもしれません。

    日本における保守派グループが、MMTなどを通じた「国民総中流への回帰」を目指す時に成立させている議論の方向性には、ある種の一貫性はあります。

    一方で、日本社会の「みんな」主義的なものに反発を覚えたり、日本の保守派の一部が持つ歴史修正主義的な傾向に反発を覚えたりする左派の人は、今後日本において「バイデン民主党が本能レベルで呼び覚ます起点となっている“みんな”主義」のようなものを、日本でも同じように持ち出せるにはどうしたらいいのか?について本質的に考えることが必要になるでしょう。

    左派的理想を、「草の根の民衆的感情」のレベルまでしっかりと結びつけ、「トランプ主義」的なものとガチンコで押し合っても負けない紐帯を作り出す、「左派的な愛国心の旗」に仕上げることが必要になる。

    アメリカにおいて本能レベルで成立する議論が、日本においては難しい部分がそこにある。

    「バイデンの理想」の背後には中国という「欧米社会の外側の敵」が本能的に前提されているとしたら、非欧米国である日本において同じ「理想」を、単にインテリ世界の内輪トークでなく、国民全体の深い共感を呼び覚まして具現化するのに必要なことは何なのか?

    結局その先では、戦前の日本の「欧米の帝国主義への必死の反撃」をしていた部分をちゃんとフェアな目線で名誉回復した上で、一方でその大きな流れに巻き込まれた、国内外の戦争被害者への平等な補償や敬意を持った接し方を両立させていく…という難しい課題に直面することを意味するのだと思います。

    先日、網野善彦という日本史学者の議論を参照しながら、「アメリカ的なリベラルの先鋭化」をいかに「日本的な調和」の中に包み込むべきか?という議論をしたnote記事がそこそこ好評をいただいたのですが、「バイデンの改革」を日本でもやるには、単なる欧米文明の延長ではない、自分たちの歴史的経緯や紐帯のコアにさかのぼって考える、もっと根底的な「捉え返し」が必要とされるようになるでしょう。

    そしてそれは、前回記事「「人権か中国市場か」ウイグル問題に揺れるユニクロやアシックスはどんな態度で臨むべきか」で書いたような、「中国の領土的野心にちゃんとNOと言うためにこそ、欧米文明中心主義とは離れた独自の視座を提示することが日本の使命となる」といった話につながってくるはずです。

  • 全世界驚愕「バイデンの富裕層増税」
    日本に中間層の復活を目指すビッグウェーブを取り入れるために必要なこと
    【あたらしい意識高い系をはじめよう】

    バイデン大統領が4月29日(日本時間)に行った施政方針演説の「ウォール街ではなく、中間層がこの国を作ったのだ
    」というフレーズは、世界的にもなかなか好意的に受け止められているように思います。

    「富裕層をもっと豊かにすればその恩恵は「滴り落ちる」ように広い範囲に行き渡るという発想=“トリクルダウン”は決して起きなかった。下から、中間層からの経済発展を模索するべき時だ」

    これはバイデン大統領のツイートの意訳ですが、現役アメリカ大統領が発言するというのはほとんど“歴史の転換点”と言ってもいいぐらいの現象だと感じます。

    その具体策としては、日経新聞の「富裕層増税10年で160兆円、米政権 格差是正へ新構想」という記事がよくまとめてくれていますが、

    ・法人税率アップ
    ・アメリカに本社のある多国籍企業の海外収益への課税強化
    ・大企業の会計上の利益に最低でも15%の「ミニマム税」を課す
    ・富裕層への個人所得税率およびキャピタルゲイン課税税率アップ
    ・富裕層や企業への税務調査の徹底

    など、「豊かな層」から取ることで4兆ドルもの税収増を実現し、その財源を元に中間層の子育て世代の支援や、巨額のインフラ投資などを行っていくようです。

    この「富裕層増税プランと中間層重視の政策」は、昨年の選挙前ぐらいからバイデン支持者の中で色々と政策案が語られているのをSNSで散見していたのですが、いわゆる「最も左のサンダース主義」とはある程度距離を置きながら、現実的なラインで「中間層重視」を打ち出すところまでたどり着いたバイデン大統領の手腕はなかなか見事なのではないでしょうか。

    選挙前に、「最高に理想的な予測」として囁かれていた、

    「議会経験が豊富なバイデンなら、右の過激派(トランプ派)とも左の過激派(サンダース派)とも適切な距離を起きつつ、対中国で必要なレベルの強硬策と、対国内で必要なレベルの格差是正策を実現していくということができるのではないか?」

    といった方向性が、ある程度は具体化できてきていると言えるかもしれません。

    もちろん、この案がそのまま通せるかどうかは依然不透明な状況ではありますが、とにかく「80年代のレーガン政権時代から続いてきた“個”のみを重視するネオリベ(市場原理主義)路線」が、大きな転換期を迎えていることは間違いないでしょう。

    こうした政策が「どの程度成功するか」は現時点で不透明ながら、今後世界的な「流行」が逆流していく事は十分に予想され、その流行を日本でも取り入れられる未来が来ることはほぼ間違いありません。

    今回の記事では、突然出てきたようにも見える「バイデン演説」の背後にある考え方の変化や、歴史的背景、そしてこの流れを日本でも取り入れていくには何を考えるべきか?について考えてみます。

    1:アメリカの主流派経済学に対抗するフランス人学者たちがトレンドを作った

    今回バイデンが打ち出した政策は、ほんの数年前ぐらいまでの「アメリカの普通の経済学者の見解」からするとかなり違和感があるというか、なかなか発想しづらいものが含まれていると思います。

    特に、エマニュエル・サエズというスペイン生まれのフランス人経済学者が書いた本『つくられた格差 不公平税制が生んだ所得の不平等』などが生んだ「新しい流れ」が反映されている事は間違いないようです。

    昨年の大統領選挙あたりから、「最も左のサンダース派」までは振り切れない中庸的なアメリカ民主党支持者が、議論の中でどういう未来像を描いているのか、SNSで時々観察していたのですが、この本自体を挙げるのでないにしろ、この「サエズ路線」的な方向性を思い描いていることが多いようでした。

    この本で提案されている方向性は、今回のバイデンの政策よりもさらにもっと踏み込んだものも含まれていますが、逆に言えばバイデンの政策はほとんどこの本に書かれていると言っていいように思います。

    本の中では、「アメリカ人の主流派経済学者はこうは考えないだろうが、私の研究では…」的な表現が随所にあって、この本が書かれた当時(英語版の出版が2019年なのでおそらく執筆はもう少し前)は、「アメリカでは明らかに異端」だった考え方が、徐々にメインストリームに躍り出てくる流れがあったと考えられます。

    このサエズ氏は、あの「r>g」のトマ・ピケティの共同研究者としても有名らしく、世界におけるこの分野におけるフランス人研究者の志向が、過去40年近く世界を席巻した「アメリカ型の市場原理主義」を置き換えつつある流れがあると言えるかもしれません。

    2:40年続いた「ネオリベ的税制」の揺り戻しが遂に訪れる
    サエズ氏の『つくられた格差』を読んでいて印象的だったのは、アメリカにとって80年代のレーガン政権の政策が持った意味がいかに大きかったか…という点です。

    たとえば、86年の税制改革によって、超高額所得に関して90%を超える税率を適用してきたアメリカが、その税率を28%にまで下げることになった…というような「そこから40年弱の間続いたネオリベ的政策」が具体化していった転換点だからです。

    サエズ氏はこう書いています。

    「現在ではこの法案は、格差を拡大する大きな要因になったと広く認識されているが、その作成に関わった人はみな、いまだにこの改革を肯定的にとらえている。アメリカの大学に籍をおく経済学者たちも、この改革の利点を吹聴することを職業上の義務とみなしているかのようだ。」

    このように、サエズ氏の議論は仮想敵として「アメリカの主流派経済学者」が毎回出てきて、その「過去30年間のアメリカの主流派経済学」との論戦の形式を通じて、

    ・資本課税と労働課税のどちらが望ましいのか
    ・多国籍企業への法人税を上げると国外に逃げ出してしまう説は本当なのか
    ・富裕層の租税回避を止める方法はないというのは本当か

    といった細かい論点を具体的に解きほぐしていく本になっています。

    サエズ氏の本を読んでいて印象的なのは、「できるだけイデオロギー的にならないように具体的な議論をする」スタイルです。

    現行の資本主義が行き過ぎた問題を抱えていて何らかの是正が必要だとして、それが結局「マルクスの亡霊」というか、人間社会の運営上どうしても必要な資本主義的ダイナミズムをも殺してしまうような提案しかなかったら、人間社会は「20世紀を通して行われた巨大な実験」の教訓ゆえにそちらに戻っていくわけにはいかない事情があるわけですね。

    しかし、「多国籍企業への法人税を、国際協調の枠組みの中で無理なく上げていく仕組みの提案」といった具体的な話が積み上げられていけば、先日、アメリカ財務長官のイエレン氏が実際にG20会合で取り上げたというニュースにもつながってくる。

    4月6日の日経記事「「法人税の国際最低税率導入を」 米財務長官演説」にはこう書かれています。

    「イエレン米財務長官は5日の演説で「主要20カ国(G20)と法人税のグローバルな最低税率導入で合意すべく協議している」と述べた。7日に予定されているG20財務相・中央銀行総裁会議を前に法人税に関する国際協調を呼びかけた。」

    バイデンの提案が今回どこまで実現するかは未知数です。

    「レーガンから始まる40年」の間も、レーガンがあまりにやりすぎて課税逃れが増えすぎた事で是正されるなど、「三歩進んで二歩下がる」的な押し合いへし合いの中で、過去40年間を見れば明らかに

    「法人税下げ・富裕層減税・中間層や底辺層への増税・資本課税よりも労働課税を重視・色々な課税逃れの結果的な黙認」

    …といった「ネオリベパッケージ」が実現していった流れがあったと言えます。

    だからこそ、逆に「バイデンが今回やりすぎたことでまた次期大統領が巻き戻す部分はある」としても、大きな流れとしては、

    「法人税上げ・富裕層増税・中間層や底辺層への減税(あるいは少なくとも据え置き)・労働課税よりも資本課税を重視・色々な課税逃れへの監視を厳しくする」といった、「フランス人経済学者の考える社会的公正路線」への転換が巻き戻せない流れとして生まれつつあることは間違いないように思われます。

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