ここから本文です
Yahoo!ファイナンス
投稿一覧に戻る

(株)多摩川ホールディングス【6838】の掲示板 2021/04/06〜2021/07/10

多摩川HLD<6838> ローカル5Gの潜在力見越し、多摩川ホールディングスが仕掛ける先行策 22年3月期は業績「V字回復」を期待
四季報速報
アナログ高周波技術をコアコンピタンスとする電子・通信技術用機器事業と太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギー事業を展開する多摩川ホールディングス(6838)は2021年3月期利益予想を大幅減額修正とした。

 目算が狂ったのは、長崎県の五島太陽光発電所の売却が環境悪化により想定価格で売却できなかったためだ。五島発電所は発電能力5.847MW(メガワット)で、同社最大のメガソーラー発電所。九州は太陽光発電の供給過剰で競争が激しいうえ、離島というハンディキャップを抱えていたことから計画を下回る価格で売却せざるをえなかった。

 当初、売却を予定していた北海道登別太陽光発電所(2MW)より大型案件であったことや電子・通信事業が想定より好調に推移していることもあり、計画を下回る売却価格とはいえ、全体の売り上げへの影響は限定的だったが、利益への打撃は大きかった。

 今21年3月期(20年4月~21年3月)は当初計画の売上高69億3700万円(前期比9.6%増)、営業利益8億5000万円(同5.5%増)、経常利益7億1300万円(同6.1%増)、純利益4億9900万円(同13.7%増)。

 修正後は売上高68億0900万円(同7.5%増)、営業利益2億2500万円(同72.0%減)、経常利益1億7000万円(同74.7%減)、純利益1億2700万円(同71.0%減)と増収の一方で、大幅減益の予想となった。

 ただ、これを機に同社の再生可能エネルギー事業は大きな戦略転換をすることになる。売電用の太陽光発電所は登別発電所を22年3月期上期中に売却を予定、残るは静岡県島田市の小規模なソーラーシェアリンク発電所(406KW)だけとなる。今後はよい案件があれば手掛けることはあるが、固定価格の引き下げ等により需要が減少していることからメガソーラー発電所からは完全撤退する。

 これに代わって注力するのは発電能力が20KWの小型風力発電所。太陽光発電所は固定買取価格(FIT)が36円/kwhで投資利回りも3.4%と低いのに対し、小型風力発電は固定買取価格が55円/kwhと高く単純利回りも13%と収益性は抜群。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)段階での利益率は70%前後が見込まれる。太陽光発電所は多額の投資資金を要し資金が固定化してしまうのに対し、資金が少なくて済み小型で売却も容易なため資金効率性が高いというメリットもある。

 小型風力発電所は21年3月期に30基が稼働、22年3月期はさらに100基を計画している。27年3月期までに延べ500基の売電の権利をすでに取得している。売電収入の着実な成長と計画的な売却(毎年30%程度)をすることで収益の安定成長をもたらすというのも狙いで、軌道に乗れば業績への貢献は格段と増すことになる。

 再生可能エネルギー事業以上に期待が大きいのが主力の電子・通信用機器事業。通信のデジタル化が急速に進む中、必要不可欠なのがアナログ高周波技術であり、この分野の技術者がいないこともあって同社は高いシェアを持つ。同事業は公共、官公庁、移動体通信、信頼性試験などの計測機器関連の4部門からなる。公共は主力顧客の鉄道がコロナ禍で投資が抑えられており低迷が続くが、官公庁は防衛関連、計測分野は半導体向け、移動体通信は5G向けに好調が続いている。

 特に、移動体通信はJTOWER社向けの5G用アンテナ共用品を軸に期初計画の2倍のペースで増えている。受注に一服感もあり後半ややペースダウンとなるものの、同事業の売り上げは40億円(前期比17.1%増)と拡大基調が続いている。

 移動体通信分野は5G投資が急ピッチで進む中で順調に伸びる見込みだが、同社がターゲットにしているのはローカル5Gだ。ローカル5Gは工場、病院や地域内など特定エリアに限定した自営のネットワークであり、運営主体の企業や地域が自らシステムを構築するようになるという。このため、Wi-Fiなどの無線ブロードバンド環境の設計、設置、運用のノウハウを持つJTOWER社の子会社のナビック社と20年9月に資本業務提携、5Gの通信ソリューションを一気通貫で提供できる体制を作り上げた。

 また、今、超高速、大容量通信の5Gに不可欠なミリ波開発にも力を入れており、20年10月にミリ波に関連する計測・検査装置やアンテナの設計・開発技術を持つ台湾のTMYテクノロジー社に資本参加(出資比率8.5%)し、開発を進めている。技術的課題とともに、ローカル5Gの普及に大きな壁となっているのは高価なことだ。ローカル5G普及には一システムで10万円以下にすることが課題だ。そうした諸々の課題をクリアし、市場に投入するまでには2年ぐらいかかるといわれるが、TMY社との共同開発の進展具合によっては前倒しも可能という。

 潜在力を秘めたローカル5G市場で先手を打って確固たる地歩を築き上げることができるかどうか、同社の成長を占ううえで大きなポイントとなりそうだ。

 東洋経済では、再生可能エネルギー事業戦略の過渡期、5G等の開発投資なども勘案した上で、22年3月期の業績を売り上げ72億円(前期比5.8%増)、営業利益9億円(同3.9倍)、経常利益8億円(同4.7倍)、純利益5・5億円(同4.2倍)と予想する。

(田中 房弘)

(百万円)    売上高  営業利益 経常利益  純利益 1株益¥ 1株配¥
連本2020.03  6,332 805 672 439 96.4 7 
連本2021.03予 6,800 230 170 130 22.9 7-10 
連本2022.03予 7,200 900 800 550 96.9 7-10 
連中2020.09  2,256 56 22 32 6.1 0 
連中2021.09予 2,900 420 400 220 38.8 0 


(株)東洋経済新報社