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VALUENEX(株)【4422】の掲示板 2018/12/13〜2019/03/09

未来は予測できる、GAFAの隙間技術で勝負することが日本企業の生きる道 (1/3)
2019年01月15日 11時30分 公開

後編では、ランチセッションで登壇したVALUENEX 代表取締役社長の中村達生氏の講演「大量の情報を俯瞰して未来を拓く」の内容と、その他の講演内容を紹介する。
技術情報から未来を読み解く
 VALUENEXは特許情報を独自の技術文書解析技術により読み解き、技術開発の指針策定や製品ロードマップの策定などを支援するサービスを展開する企業である。中村氏は「特許情報には権利書としての側面と技術書としての側面がある。この技術書としての側面を読み解く」と同社の役割について述べる。また、テキスト情報を画像化して技術情報を分かりやすく俯瞰図とし読み取れるようにするなど、独自ツールとコンサルテーションと組み合わせたサービスも行っている。

VALUENEX 代表取締役社長の中村達生氏
 多くの技術情報に触れてきた中で中村氏には現在のIoTなどの盛り上がりはどのように見えているのだろうか。
 中村氏は「日本が豊かな国であることは事実だが、成長率は世界でもワーストに近い状況がある。その理由の1つとして、新しいところにお金が流れていないところがあると考えている。新たな企業や事業が育っていないのだ。その背景としてバズワードに流されすぎるという点がある。今回のIoTもそうだが、バズワードになった状況で手を打ってももう遅い。先に布石を打たないとだめだ。IoTでいえば、『I』の部分はクラウドプラットフォーマーなどが握っており、『T』の部分は一般消費者などに委ねる部分だ。その間の道のような部分をどうするのかという勝負となっている」と語る。
 こうした状況に対して中村氏は「技術を俯瞰し隙間を見つけて自社が取り組むべき領域を把握することが重要だ」と語る。例えば、1990年代はあらゆるものがデジタル化されコピーされやすくなった時代で「自分の情報だけでビジネスを行うことができなくなった時代だ」と中村氏は振り返る。さらに2000年代にはインターネットの定着とサーチエンジンの普及により「サーチャーが職を失い始めた」(中村氏)。2010年代にはICTであらゆるものがつながる時代に入り「アナリスト受難の時代といえるだろう」(中村氏)。
 2020年代についてはAIがあらゆるものに広がると予測。「学習させて同じ動きをするものにはAIが全て適用されていくだろう。現状は異なる動きをするものや、新たなインサイトを生み出すようなものにはAIは使えず、そこはコンサルタントなど人が役割を果たしている。ただ、インサイトを得るには量子コンピュータの発展でできるようになるかもしれない」と中村氏は将来を予測する。
 これらの状況を踏まえて中村氏は「現在の環境は、技術的な過渡期である。過渡期に最適化してはだめだ。先を見ていかないといけない」と技術的な展望の重要性について語っている。
写真フィルムメーカーの三者三様
 これらの技術情報からはどういうことが読み取れるのだろうか。中村氏が例として紹介したのが、写真フィルムメーカーの動向だ。写真フィルムメーカーの大手企業としては富士フイルム、コニカ(現コニカミノルタ)、コダックなどが存在したが、デジタルカメラの普及により写真フィルムを使用しなくなって転身を余儀なくされた。
 富士フイルムはデジタルカメラ事業や化粧品事業など知見を他の分野に展開し生き残りを進めた。ただ「特許の動きを見ていると大きな変化があったわけでなく徐々に化粧品などの領域での技術に向けて開発を進めてきていたことが分かる。大きなジャンプや方向転換があるわけではなく、研究開発の部門では化粧品にも使えるということがはっきり分かって特許も出しているということが読み取れる。早くから応用領域を把握していたということが分かる」と中村氏は技術動向を読み解く。
 一方、同様の特許情報の動きをコニカで見てみると「ミノルタとの合併により、大きな変化があるということが分かる。技術開発の方向性も大きく変化をし、ツールでは進む方向性が大きく変わった。合併による新たな動きで活路を見いだそうとしたことが分かる」(中村氏)とする。
 さらにコダックについては「技術情報を見るとほとんどその領域を変えることなく他領域などに応用するような考え方はなかったということが分かる。そして企業体としては消えていった(現在は事業を縮小して再出発)。ただ、技術の側面だけ考えれば動かずに深めていくということは一概にマイナスだとはいえない。結果としてコダックの持つ技術は多くの企業に買われており、知財としてはペイできている」と中村氏は語る。
論理的に考えれば未来は予測できる
 これらの将来を予測した技術開発について中村氏は「論理的に考えれば未来は予測できる。未来を見て活動を進めることが重要だ」と強調する。その例として1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」の朝食のシーンを紹介。「どう考えてもiPadを見ながら朝食を取っているように見える。これは人間工学的に考えても昔も今も変わらない本質だということだ。こういう点を見つけ出していくことが重要だ」と中村氏は語っている。
 そして企業として未来に向けた技術開発を進める方針としては、未来を3つの事業に分けて取り組むということを訴える。1つ目が「先進事業」である。これは同じ事業でコア技術の横展開を行うということだ。2つ目が「創造事業」だ。これは技術やエレメントは同じだがそれを全く異なる事業に展開し新たな事業を創造するということだ。3つ目が「未来事業」で、2050年などの長期間を描き、今やっている製品や技術エレメントなどを使わずに会社としてやるべきかどうかを描くというものだ。
 「未来事業は想像しにくいと思うが、例えば、宇宙エレベーターが将来生まれると考える。その場合に、その宇宙エレベーターに必要となるケーブルはどういうモノになり、どういう素材になるのかなどを想定して技術開発を行うということだ」と中村氏は説明する。
 IoTでも同様に、未来を予測し、既存の技術開発領域のホワイトスペースを見つけることで勝負は可能だとする。「例えば、GAFAの技術動向を見てみると、アップルだけは他の3社と動きが全く異なり、やはりメーカー的な動きをしていることが分かる。これらの技術開発の隙間を見ると、いくつかの傾向も見えてくる。例えば、サウンド系の技術やセンシング系の技術などは手薄な領域として見える。こうした動向を読み解くことで未来を考えて、技術開発を進めていくことが重要だ」と中村氏は強調した。