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【USD】米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後政策金利発表の掲示板

FOMC声明とパウエル議長会見 「利上げ」以外の注目ポイントは?
1/28(金) 11:44配信
Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE

 米連邦準備制度理事会(FRB)は26日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の声明で、3月にゼロ金利政策を解除し、利上げに踏み切る方針を示しました。FOMCの声明とFRBのパウエル議長の会見の注目すべきポイントについて、第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。

サプライズのなかったFOMC決定
 1月のFOMCでは金融政策の現状維持が決定されました。以下、ポイントを整理します。

 初回利上げは次回の3月FOMCでほぼ確定です。声明文には「政策金利の引き上げが近く適切になる(it will soon be appropriate to raise the target range for the federal funds rate)」と記載されました。市場参加者の想定通りで意外感のない文言と言えます。

 同時に発表された別紙「バランスシート縮小の原則」には、「QT(FRBのバランスシート縮小=量的引き締め)は予見可能性の高い方法、主にFRB保有証券の満期償還に伴う再投資停止によって実施される」との記載がありました。一部市場関係者は「売りオペ(満期償還前に保有証券を市場売却)」によるQTを警戒していたので、そうした過激な引き締め策を否定する含意があったようにみえます。

 他方、1月FOMCで「決定されなかった」重要な点は、QE(資産購入)の早期終了です。昨年12月のFOMCにおいて資産購入の終了時期は3月と決定されましたが、それをさらに前倒しして終了するとの見方が一部にあり、筆者もその可能性がわずかにあるとみていました。この点は安心材料でした。

「タカ派」と受け止められたパウエル議長会見
 上記は声明文と別紙から得られた情報です。これは市場参加者にとってサプライズではなかった模様で、声明文発表直後の株価は高値圏を維持しました。しかしながら、その後のパウエル議長記者会見はややタカ派に受け止められ、株価の下落や金利上昇(ベア・フラット化)の引き金となりました。

 利上げについて、パウエル議長は一切の言質を与えない姿勢でした。政策決定は「敏捷性」が求められるとして、今後の金融政策についてあらゆる可能性を否定しませんでした。そうした中で市場参加者に注目されたのは「3月以降全てのFOMC(年8回)で利上げを実施する可能性も否定しない」との発言です。これによって「3・6・9・12月」の四半期利上げペースを想定する平均的な市場参加者は、追加で1回の利上げを意識したとみられます。将来の政策金利予想を反映するFF金利先物が織り込む2022年の利上げ回数は4.7回(直近1週間は4回程度)へと上昇し、米長期金利は政策金利の見通しを反映する2年を中心に全ての年限で上昇しました。

 QT開始時期については次回3月FOMCで「議論」するとされました。したがって3月FOMCにおける「決定」の可能性は大幅に低下したと考えられます。これまでのFRBからの情報発信を整理すると、年後半の開始が最も蓋然性が高く、最速スケジュールは6月決定、7月開始が想定されます。

株価下落への口先介入は?
[グラフ]資産保有額上位1%世帯が占める全資産の割合

 今回のFOMCは事前に極タカ派な予想が多く飛び交い警戒感が強い中で迎えました。そうしたこともあってサプライズ感はありませんでしたが、やはりパウエル議長が利上げについてあらゆる選択肢を排除しなかったことはタカ派な印象を受けました。

 1月に入り、米国株は急落しています。従来ならパウエル・プット(株価下落を止めるべく口先介入)の発動が期待されるところですが、1月FOMCでそうした素振りはほとんど見られませんでした。パウエル議長はインフレ沈静化を最優先課題とする構えを見せており、株価に配慮する意思は乏しいようです。

 その一因にコロナ禍の資産価格上昇で超富裕層の資産が膨張したことがあるでしょう。資産保有額上位1%の世帯が占める総資産の割合はパンデミック発生以降に急上昇しています。通常、資産効果と言えば株式や不動産といった資産価格上昇がマクロの消費増加に寄与することを意味しますが、資産がごく一部の超富裕層に偏在している状況においてマクロ的な消費刺激効果は限定されます。その反面、多額の資産を有しない中間層以下は、給付金効果が枯渇する下でインフレに直面したことで暮らし向きが悪化し、過去数か月の消費者心理は底割れ状態にあります。こうした状況で、FRBが株価を下支えする姿勢に転じることは当面考えづらいです。

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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。