① 半減期がもたらす需給ひっ迫
ビットコインの価格動向を語るうえで欠かせないのが、「半減期」の存在です。約4年に一度、新規発行されるビットコインの量が半減する仕組みで、市場に放出される供給量が制限されるため、需要が維持されれば価格は上昇しやすい傾向にあります。過去を振り返ると、半減期後の価格が大きく上昇しており、今回もそのパターンをなぞる形で2025年以降のビットコイン上昇が意識されています。
保有量はアメリカ最大の暗号資産取引所コインベース(Coinbase:9267BTC保有)や、大手マイニング会社CA Hut 8(10,273 BTC)を上回り、テスラ<TSLA>に次ぐビットコイン保有世界8位となりました。現在では売上高の約90%がビットコインインカム事業となっており、直近では時価総額1兆円を突破して日本の大企業の時価総額を上回ってしまったことは投資家にとっても衝撃だったかと思います。
2024年1月に599万円台から始まったビットコイン価格は、2024年12月中旬には1660万円台(約2.7倍)まで上昇しました。そんなビットコイン価格の動きを横目に、今株式市場では、ビットコインを爆買いする企業(ビットコイントレジャリー企業)の株価がとんでもないことになっており、個人投資家の皆様なら既にご存じのメタプラネット<3350>を筆頭に、リミックスポイント<3825>、gumi<3903>など関連銘柄の株価動向に注目が集まっています。
本稿では、「ビットコインがなぜ注目されているのか?」「今後も伸びるのか?」「投資対象としてビットコイン爆買い企業をどう捉えるべきか?」を、株式投資家目線で検討しています。
■ビットコインの時価総額について
暗号資産市場の総時価総額は2025年5月現在500兆円にも上ります。そのうちビットコインは約313兆円で62.6%。2022年5月から2025年5月までの3年間で時価総額は約4.3倍と成長してきています。
■ビットコインがなぜ注目されているのか
ビットコイン価格が上昇している背景として影響が大きい要素は、以下の3つが挙げられます。
①半減期がもたらす需給ひっ迫
②機関投資家と国が動き始めた
③円やドルの相対的価値下落へのヘッジ需要
① 半減期がもたらす需給ひっ迫
ビットコインの価格動向を語るうえで欠かせないのが、「半減期」の存在です。約4年に一度、新規発行されるビットコインの量が半減する仕組みで、市場に放出される供給量が制限されるため、需要が維持されれば価格は上昇しやすい傾向にあります。過去を振り返ると、半減期後の価格が大きく上昇しており、今回もそのパターンをなぞる形で2025年以降のビットコイン上昇が意識されています。
②機関投資家と国が動き始めた
これまでビットコインは「投機的」「信用ならない」というイメージが強かったと思いますが、2024年1月の米国におけるビットコイン現物ETF承認を機に風向きが変わりました。ブラックロック、フィデリティ、アーク・インベストメントといった超大手資産運用会社がETFを提供し、年金基金やファミリーオフィスなどの機関投資家が本格参入しています。ちなみに、直近のデータでは、大きく流入した際はビットコイン価格も上昇する傾向がみてとれ、流入・流出の動向は注目しておきたいですね。
また、エルサルバドルに続き、中南米やアフリカの一部国家でも、ビットコインを法定通貨や準備資産として保有する動きが進んでいます。さらに、アメリカでは、「米国を仮想通貨大国にする」と公言したトランプ大統領が「ビットコインを含む国家的なBTC準備金を創設する」という構想を掲げているほか、一部の州ではビットコインを戦略的準備資産と位置づける法案が可決・成立しています。これにより「ビットコイン=投機商品」ではなく、「ビットコイン=デジタルゴールド」という新たな位置づけが世界的に浸透しつつあります。
③円やドルの相対的価値下落へのヘッジ需要
法定通貨の信用への懸念も高まっています。円の実質実効為替レートは過去最低水準にあるほか、2025年5月16日に米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げました。円やドルの相対的価値下落を想定している投資家の資産の逃避先としてもビットコインが選ばれています。
今回は上記の3点をビットコインの魅力として解説しましたが、技術的側面や金との比較などまだまだ魅力的な部分があり、ビットコイン価格のポジティブ要因はかなり多く、今後の伸びも比較的想定しやすくなっています。
■投資対象としてビットコイン爆買い企業をどう捉えるべきか?
こうしたグローバルなビットコインを中心とする暗号資産の盛り上がりを背景に、ビットコイン価格は上下を繰り返してまだまだ上昇するという見方が広がる中、日本でも「ビットコインを自社資産に組み入れている」企業(ビットコイントレジャリー企業)への注目が高まっています。
最近大注目の銘柄は、メタプラネット<3350>です。
同社は日本初にして唯一の上場ビットコイン・トレジャリー・カンパニーとなります。元々ホテル事業を営んでいましたが、2024年4月以降、ビットコインを大量購入する方針を発表、その後ビットコインを爆買いしてきましたが、6月23日には新たに1,111BTCを追加購入。今回の買い増しにより、同社のビットコイン保有量は累計1万1,111BTCに到達しており、通算での平均購入単価は1BTCあたり1,407万7,243円、総取得額は約1,564億1,200万円となりました。
保有量はアメリカ最大の暗号資産取引所コインベース(Coinbase:9267BTC保有)や、大手マイニング会社CA Hut 8(10,273 BTC)を上回り、テスラ<TSLA>に次ぐビットコイン保有世界8位となりました。現在では売上高の約90%がビットコインインカム事業となっており、直近では時価総額1兆円を突破して日本の大企業の時価総額を上回ってしまったことは投資家にとっても衝撃だったかと思います。
この株価上昇が続くかどうかという視点では、保有しているビットコインの時価総額との比較がわかりやすいとされています。現状、保有ビットコイン枚数の約6倍の企業価値がついてしまっているため、割高感が感じられ、今後の株価の伸びには懐疑的です。
ただ、同社は「555ミリオン計画」を発表しており、保有目標は2026年末までに「10万BTC」、2027年末最終目標で「21万BTC以上」の保有を目指しています。仮に3年後までに本当に21万BTCを保有し、その時ビットコイン価格が5000万円に到達していた場合、単純計算で10兆円規模のビットコインを保有していることになります。株式時価総額がそれに比例する場合は、同様な企業価値がついてもおかしくないと言えてしまうでしょうか。いずれにせよ、メタプラネットの株価上昇は、多方面からポジティブ・ネガティブな声が聞こえています。
最後に一点だけ注目するとしたら、同社は従来から社債発行や新株予約権の行使を通じて調達した資金をビットコインの購入原資として戦略的に活用している点です。このスキーム が今後も継続し、ビットコインを購入する資金を集め続け、ビットコインが上昇し続けるのか。仮にビットコイン価格が急落したときどうなってしまうのか。それはそのときになってみないとわかりません。
そのほか、ビットコイン関連株として、リミックスポイント<3825>、Sサイエンス<5721>、gumi<3903>などが話題になっています。リミックスポイントは「エネルギー事業」と「レジリエンス事業」を本業としていますが、2025年6月時点で11,111BTC保有しており、保有分のBTC時価総額は約1660億円で企業価値の約2.2倍と、メタプラネットと比較すると割安感があるとも言えます。gumiは2025年6月11日、自社資金10億円規模でビットコインを取得したことを公表。また、SBIホールディングスと共同で上場仮想通貨の運用ファンドを組成すると同日に発表していました。
ちなみに、国内上場企業では、ネクソン<3659>が2021年4月28日に1億ドル(111億円)相当のビットコインを購入しています。
■結論:熱狂と警戒が共存する「テーマ株バブル」にどう向き合うか
2025年、暗号資産関連株というよりもビットコイントレジャリー企業というテーマの力強さを背景に大きく物色されています。その一方で、株価の上昇が事業の実態や業績を伴わないまま進んでいるケースも多く、市場には過熱感や投機性も否定できません。
特に、トレジャリーでビットコインを保有する企業や、暗号資産関連の事業を打ち出したばかりの企業が株価上昇の中心となっている現状は、2017年や2021年の暗号資産バブルを思わせる展開でもあります。過去起こっていたアルトコインバブルが起きていない現状で、ビットコイン関連株式に投機的なマネーが集まっていると見えなくもないでしょう。株式投資家としては、このブームを「時流に乗った投資機会」と捉える一方で、本質的な事業成長や資産価値の裏付けを冷静に見極める視点が求められそうです。
また、ビットコインは暗号資産交換所で現物を購入できるため、前半部分でビットコインの将来性を感じた場合は、ビットコインの現物を購入する株式投資家が増える可能性もあるでしょうか。
今後、ビットコイン価格が本格的に上昇トレンドを維持できるか、そしてそれが企業価値の向上にどれだけ結びつくか——。暗号資産関連株は、短期的にはテーマ性・材料性で動きやすい一方で、長期では中身が問われる相場となる可能性が高いです。
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