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欧米 金融政策の掲示板

しかし以上に挙げたさまざまな金融・財政面の支えが今、おおむね尽きようとしている。政府が支出を抑えれば、米国の総需要と企業収益は圧迫されるだろう。FRBのリバースレポ・ファシリティにある超過準備は、ピーク時に比べればわずかな額に縮小している。消費者はパンデミック時の過剰貯蓄をほぼ使い果たした。

一方、金融引き締めは効き始めている。米国の商用不動産市場はスローモーションで大惨事へと近づいている。空室率は急上昇し、不動産価格は急低下。期間が通常3年の金利上昇ヘッジは期限を迎えようとしており、更新するにはコストが高過ぎる。商用モーゲージ担保証券のデフォルト(債務不履行)は急増している。

不動産ローンの借り手の多くは、満期を迎えるローンの変更や期間延長を模索している。アパートビルの所有者は、変動金利ローンの利払いに苦慮している。こうしたローンの多くはローン担保証券(CLO)として証券化されている。米国ではパンデミック中にアパートビルの建設が急増したため、供給過剰によって不動産価格はさらに圧迫され、開発業者と金融機関の両方が傷を負うかもしれない。

レバレッジドバイアウト(LBO)業界は金利上昇にあえいでいる。国際通貨基金(IMF)は最近、プライベートエクイティ(PE)企業が支配する「不透明で相互に絡み合った」2兆1000億ドル規模のプライベートクレジット界が、システミックリスクを招きかねないと警告を発した。債券市場にアクセスできないPE企業は、金利負担の増大に苦しんでいる。大量のゾンビ企業がゆっくりと墓場に戻っている。

経済学者のミルトン・フリードマン氏の有名な言葉に、金融政策は「長く、変わりやすいタイムラグ」を伴って効果を発揮する、というのがある。そのタイムラグは過去に比べてより長く、より変わりやすくなっているのかもしれない。しかし遅かれ早かれタイムラグは終わる。テトロック氏は、予想が外れた時に専門家が言いがちな反論をもうひとつ挙げている。「まだ起こっていない」というものだ。未だ訪れぬハードランディングを予想していた専門家も、同じ事を言うかもしれない。