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スルメイカ相場10年で2.5倍 漁獲回復に食物連鎖の壁も

刺し身や天ぷら、煮物など幅広い調理で食卓を飾るスルメイカの価格高騰が止まらない。2023年の平均卸値は10年前の約2.5倍に跳ね上がっている。資源環境の変化や外国漁船による乱獲、漁業者の減少など様々な要因で漁獲が減ったことが背景だ。ほかの魚種の資源増加に伴う食物連鎖の影響も絡み合い、漁獲回復が難しくなっている。

「価格がどんどん上がり、もう大衆魚とはいえない」。水産卸の担当者はこぼす。豊洲市場を含む東京都中央卸売市場におけるスルメイカの平均単価は23年に1キロ1193円と10年前の13年の464円から約2.5倍。「もはや高級魚だ」(水産卸)

  • >>6125

    背景にあるのは漁獲量の減少だ。水産庁の22年の漁業・養殖業生産統計によるとスルメイカの漁獲量は3万708トンとピーク時の1968年より95.4%少ない。全漁連がまとめた23年の国内スルメイカの漁獲量(生鮮・冷凍)は1万5548トンと前年比3割減だった。

    漁獲量の減少には様々な要因が指摘されている。ここ数年、漁師の間で指摘が目立ってきたのが、食物連鎖によるものだ。漁業者からは日本近海でクロマグロの資源が回復しているとの声が多くなっている。スルメイカはクロマグロの好物だ。全国的にもマグロの一本釣りにはまき餌にスルメイカが使われ、食いつきがいいという。

    漁業者からはイカ釣りの線を切られたなどとの報告が増えているという。クロマグロの資源が回復した結果、スルメイカが逃げているとの見方もある。

    漁業者の減少で水揚げが減ったことも大きい。全国いか釣り漁業協会によると23年6月時点で44隻が所属しているが、10年前は120隻いたという。船長となる日本人漁業者の高齢化や船の修繕のタイミングで引退する例もあるが、漁獲量の減少で収入を得られず漁業から手を引くケースも多いという。

    同協会の中津達也会長は「強い危機感を持っている。所属する船の経営を安定させ、隻数を増やさないといけない。スルメイカの代わりに太平洋公海に生息していて、資源が安定している赤イカをとることを推奨している」と話す。

    漁業者の声のほか、水産研究・教育機構(横浜市)が公表している資源量のデータでは、ここ10年ほどの漁獲減少の背景を2つに分類している。1つは16年から19年にかけての「外国漁船の漁獲圧による減少」。日本の排他的経済水域(EEZ)、大和堆での北朝鮮や中国の漁船の操業による乱獲だ。

  • >>6125

    寒流と暖流が交わる大和堆は好漁場として名高い。その辺りでは、乱獲のほか、日本のイカ釣り漁船は外国漁船との衝突やトラブルといった課題も生じた。水産庁が発表する外国漁船退去警告延べ隻数は19年に北朝鮮が4007隻、中国が1115隻にのぼった。

    大和堆では20年以降、外国漁船による漁獲は落ち着いている。23年に確認された外国漁船は北朝鮮は24隻、中国は44隻と減少傾向だ。新型コロナウイルス禍に伴う外国船の出漁の減少が大きいとみられる。

    聖学院大学の宮本悟教授(北朝鮮研究)は、とりわけ北朝鮮を巡っては、朝鮮中央通信が20年初めごろに海水からコロナに感染すると伝え、感染を恐れて出漁が減ったと考えられると指摘する。

    外国船の乱獲が減っても、20〜23年も漁獲は減少した。そこで想定される2つめの理由が「海中での資源環境の変化」だ。山陰から東シナ海北部に形成されるスルメイカの産卵場の環境悪化の可能性が考えられるという。水産研は「なんらかの影響で子どもが生き残れず、再生産できていない」と指摘する。

    漁獲が回復しない限り、高値は続く。都内の鮮魚店では23年、スルメイカを1匹500〜1000円で販売していた。スルメイカの買い付けを15年続けてきた同店担当者によると、かつては1匹100円の時代もあった。「値段が高くなっても売れ行きは堅調」と話す。

    原材料の価格高騰は加工食品にも影響を及ぼす。スルメイカの塩からやさきイカなどの加工会社が加盟している函館特産食品工業協同組合では、原材料の仕入れ値が過去10年で約6倍に跳ね上がった。コスト削減のため、材料の多くは中国からの輸入に頼っているという。

    商品の販売価格も2倍以上になったが、原材料コストの上昇が大きく、加工会社の多くは採算がとれない。イカから手を引き、他の魚種への転換を検討する動きもある。

    東京海洋大学の岩田繁英助教(水産資源学)は「海中の正確な資源状態は把握できていない。漁業者は漁場や魚種を変えるなどの工夫が求められる」と指摘する。スルメイカの高値は水産資源に寄り添う難しさを改めて突きつけている。