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  • 2021/08/31 08:31
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

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    ■ イーロン・マスクにとってカラ売りファンドは天敵

     投資家を惹きつけておくためには、株価を上げることが至上命令で、会社の欠陥を探して株価を下げようとするカラ売りファンドは天敵だ。

     マスクはSEC(米証券取引委員会)が十分にカラ売りファンドを取り締まっていないとして「SECはShort seller Enrichment Commission(カラ売り屋金持ち化委員会)だ」とツイッターで苛立ちをあらわにしたこともある。2019年に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者(CIO)の水野弘道氏が、カラ売り投資家への外国株の貸し株を停止したときには、「ブラボー、正しいことだ!  カラ売りは違法にすべきだ」とツイートし、翌年、GPIFを退任した水野氏を社外取締役に迎えた。

     テスラが最も苦しかったのは、株価が50~60ドルで低迷を続けていた2018年から2019年にかけてだった。当時、モルガン・スタンレーは「テスラの株価は10ドルになる」という衝撃的なレポートを発表し、カラ売り勢もテスラを破綻前のリーマン・ブラザーズになぞらえたりして危機感をあおった。

     精神的に追い込まれたマスクは言動がおかしくなり、2018年第1四半期の決算説明会では、質問したアナリストに対して「ボアリング!  ボーンヘッド・クエッションズ・アー・ノット・クール! (退屈だ!  間抜けな質問はクールじゃない! )」と暴言を吐き、批判を浴びて翌日謝罪したり、エイプリル・フールにツイッターに「非常に残念なことだが、マーズが完全かつ全面的に経営破綻したことをお伝えしなくてはならない」と書き込み、テスラ車に背中を預け、足を床に投げ出して死んだふりをしている自分の写真を投稿して株式市場を一時騒然とさせたり、根拠のない株式非公開化のツイートをしてSECから個人と会社にそれぞれ2000万ドル(約22億円)の罰金を科されたり、YouTubeで配信されていたインタビューの最中に「(カリフォルニアでは)合法だよね」と言って大麻を吸って物議をかもしたりした。

     しかしその後、幸いなことに旗艦車種の「モデル3」が何とか生産軌道に乗り、上海の大型工場「ギガファクトリー」も稼働を開始したこともあって、株価は急上昇を始め、現在は711ドルという高値圏に到達した。時価総額は約77兆円で、トヨタの2.5倍である。

     しかし、カラ売りの残高は相変わらず多い。サブプライムローン関連株をカラ売りして大儲けしたマイケル・バーリ氏のファンドなどが「テスラの株価は馬鹿げた水準」としてカラ売りに参戦したりしている。株価が過大評価されていると考えられる限り、カラ売りはなくならず、テスラとカラ売りファンドの戦いは百年戦争の様相を呈している。

    ■ イーロン・マスクは人類の救世主となるか

     ただマスクが目指すのは、トヨタやカラ売りファンドに勝つことではない。彼は、人類はこのままでは地球に住めなくなるため、火星に移住する必要があるが、実現にはまだ相当な時間がかかるので、それまで地球環境が悪化するのを遅らせるためにEVを普及させ、人類を化石燃料から切り離すと宣言している。

     彼は決して「テスラの時代が来る」とか「地球の道路をテスラの車で埋め尽くしてみせる」とは言わない。常に「EVの時代が来る」、「EVで埋め尽くす」と話す。自社が取得した特許もほとんど無償で公開しており、その志は、テスラという一企業の枠を超え、常に人類救済という壮大な目標に向けられている。

     テスラを軌道に乗せるために駆けずり回るかたわら、まったくのゼロから時価総額10兆円強といわれる宇宙ビジネスのスペースXを創り上げ、2012年以来、ISS(国際宇宙ステーション)に20回以上の貨物輸送を行ったほか、昨年6月には、民間企業として世界で初めて有人宇宙飛行を成功させてもいる。

     凡人には狂気か妄想としか思えない考えを次々と実現していくこの人物は、あらゆる戦いに打ち勝って、本気で人類を火星に移住させようと考えている。毀誉褒貶は多いが、コロナ禍で閉塞感が漂う世界にあって、見ているだけでわくわくさせてくれる稀有な存在である。

  • トヨタ超えでも満足しない、テスラCEOイーロン・マスクの野望
    8/31(火) 8:01配信

    JBpress

     (黒木亮・作家)

     今、世界で最も注目を集めている自動車メーカーは、シリコンバレーを本拠地にするEV(電気自動車)専業のテスラであることに異論の余地はないだろう。同社は昨年7月、時価総額でトヨタ自動車を抜き去り、自動車業界の世界首位に躍り出た。2020年の販売台数は50万台で、992万台のトヨタの約20分の1にすぎないが、EVの販売台数では2位の上海汽車集団、3位のフォルクスワーゲンに倍以上の差をつけて世界一だ。

    5月5日、イーロン・マスクが設立したスペースXは巨大宇宙船「スターシップ」SN15の試験飛行と着陸に成功した

     創業してわずか18年の新興自動車メーカーがなぜ株式市場でトヨタ以上に評価されるのか。筆者は今般上梓した『カラ売り屋vs仮想通貨』(KADOKAWA刊)の中の1編『電気自動車の風雲児』で、その軌跡を小説化した。

    ■ 「モジュール化」という産業革命

     自動車製造業は、巨額の工場建設コスト、高度な製造ノウハウ、生産台数が少なくても協力してくれる数千社の部品サプライヤー、広範囲な流通ネットワークなどが必要である。マイクロソフトのようなソフトウェア開発業や楽天のようなインターネットのショッピングモール、あるいはアップルのような携帯電話製造業などに比べても、桁違いに参入障壁が高い。しかし、「モジュール化」によって、それが一気に下がった。

     モジュール化とは、機能ごとに共通化されたパーツを組み合わせ、手早く製品を作ることだ。ガソリン車の場合、3万点を超える部品からなるが、EVは、モーター、バッテリー、制御装置、コクピット、充電器といった標準化された基幹装備(モジュール)を外から持ってきて、それを組み合わせて製品化する。工程は著しく単純で、車台の底にバッテリーパックを敷き、車輪の横にモーターを取り付け、モジュール化された部品を組み込み、ボディをかぶせれば出来上がる。ちょうど市販のパーツを買ってきて、パソコンを組み立てるようなものだ。

    ■ 既存メーカーの技術者はテスラが大嫌い

     既存の大手自動車メーカーの技術者は、テスラについて「胡散臭い」「やることが荒っぽい」と評し、嫌悪感を隠さない。

     なぜここまで「テスラ憎し」なのか疑問に思い、総合商社の自動車部OBに訊いてみると、「そりゃそうでしょ(笑)。100年以上も血の滲む思いをして、エンジンとか、電装・電子関係とか、トランスミッション(多段変速機)を開発してきたのに、EVの時代になって『そんな技術はもう用済み』といわれ、しかもモジュール化で車に縁もゆかりもないIT系のベンチャーなんかが、ぶっつけ本番でどんどん参入してくるんだから。面白いはずはないですよ」と言われた。また「EVは重心が低く安定していて走りが滑らかで、加速も早いし、騒音もしません。産業革命で蒸気機関が馬にとって代わりましたけど、近い将来、ガソリン・エンジン車に乗るのは馬に乗るようなものになるでしょうね」と言う。

     モジュール化は、大手自動車メーカーの下にぶら下がっている何万社もの下請け部品メーカーも用済みにし、自動車産業を垂直型から水平型へと激変させる。アマゾンの登場で、既存の小売店が淘汰されたように、テスラの登場で、今、下請け部品メーカーの急速な淘汰が進みつつある。運命共同体として下請けを守ってきたトヨタなど既存のメーカーにとって、面白いはずがない。

    ■ トヨタとテスラの因縁

     カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの工場は、元々はトヨタとGMが手放したがっていた合弁工場で、2010年にテスラが38億円という安値で買い取ったものだ。その際、トヨタは、当時、海のものとも山のものともつかなかったテスラに、ちょっとした援助のつもりで株の3.15%を5000万ドル(約55億円)で購入し、EVの共同開発も行うとした。前述のとおり、自動車製造業は参入障壁が非常に高いので、トヨタは、いずれテスラは事業を諦め、EVの技術だけが残ると考えていたふしがある。

     ところがテスラは苦闘の連続を乗り越え、世界で最も注目される自動車メーカーにのし上がった。EVの共同開発は、技術面における様々な意見の不一致でまったく進まず。トヨタは2017年にテスラの株をすべて売却し、提携を解消した。

     その間、トヨタはポスト・ハイブリッド・カーとして、経済産業省を巻き込み、水素を燃料とする燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)に傾注し、EVでは大きく出遅れた。

    ■ トヨタが水素自動車にこだわれば第二のGMに

     トヨタは、現在の利益の源泉であるガソリン車の開発や販売、そのための4万社以上ある下請け企業を見殺しにはできないので、EVに思い切って資源を投入できないという「イノベーションのジレンマ」に陥っている。

     一方、テスラのCEOイーロン・マスクは、「水素社会など来ない」「トヨタのフューエル・セル(ビークル)はフール(馬鹿げた)・セルだ」とこき下ろし、トヨタを激怒させた。

     しかし、マスクの指摘はかなり的を射ている。水や天然ガスを分解して水素を取り出すには莫大な電力や火力が必要な上、燃えやすい水素をどうやって水素ステーションに届けるかの問題がある。水素ステーションというインフラ整備自体にも、一基あたり4億円から6億円という大きなコストがかかる。さらにトヨタの燃料電池車「ミライ」は補助金を入れても一台550~720万円で、普及するには値段が高すぎる。

     すでに欧州委員会は2035年までにEU域内の新車供給をゼロエミッション車とする(ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は販売できない)という厳しい政策文書を発表し、米国、英国、中国、インドなども2030~35年に類似の規制をする。トヨタ同様、下請け企業に配慮していたドイツのフォルクスワーゲンやホンダ(本田技研工業)も背に腹は代えられず、EVへと大きく舵を切った(ホンダの三部敏宏社長は、去る7月、2040年にエンジン車の販売を全面的に停止すると表明した)。

     日本政府(経済産業省)は、国策として燃料電池車(水素自動車)の推進を後押ししてきたが、世界のEV化の趨勢やホンダの方針転換に直面し、今はおそらくトヨタと一緒になって、どうやってソフトランディングないしは名誉ある撤退をするか、頭を悩ませているはずだ。

    ■ カラ売りファンドとの百年戦争

     世界の脱炭素化の波に乗ったテスラだが、2003年の創業以来、万年赤字企業で、単年度決算で黒字になったのは、去年の12月期が初めてだった(売上げ315億3600万ドル=約3兆4690億円、純利益7億2100万ドル=約793億円)。

     2019年以前は、四半期決算ですら黒字になったのは数えるだけである。

     その万年赤字企業が2017年にGMやフォードなど「ビッグ3」を抑えて、時価総額で全米一の自動車メーカーになり、2019年にはトヨタを抜いて世界一になったのだから、カラ売り勢が見逃すはずがない。

     株価が一株あたりの純資産の何倍であるかを示すPBR(price book-value ratio)は適正株価を判断するための代表的な指標だが、トヨタが1.10倍、GMが1.56倍、フォルクスワーゲンが0.73倍であるのに対し、テスラは何と30.29倍という異様な高さである。

     また浮動株に対するカラ売り比率が10%を超えると、ちょっとしたことで株価が大きく変動するので、買いの投資家にとっても売りの投資家にとっても要注意銘柄となるが、テスラは、この比率がだいたい20%で、2012年頃には60%にも達していた。しかも時価総額が大きいので目立ち、ますますカラ売り筋を惹きつける。

     同社のカラ売りには、2001年にエンロンの粉飾決算を見破って一躍有名になったジェームズ・チェイノスも参戦し「テスラは借入れが極端に多く、構造的な赤字体質」「どの強気相場にもイメージキャラクターが存在する。その悪い1社がテスラ」「テスラは歩くインソルベンシー(破綻)で、袋小路に向かっている」と散々にこき下ろした。

     テスラのように赤字続きで銀行借り入れや債券の発行が簡単にできない会社は、将来性に賭けて株や転換社債を買ってくれる太っ腹な投資家が頼りだ(2010年にトヨタとGMの合弁工場を38億円で買ったときも、トヨタに出資してもらった約55億円でまかなった)。

  • 時事通信によると、金融庁の2022年度税制改正要望案の全容が24日、明らかになった。高齢者が認知症などで判断能力が低下しても株式など資産の管理が適切に行われるよう、金融機関に信託しやすくする仕組みをつくる。現状では上場株式などの信託が可能か税法上は不透明で、金融庁は信託できることを明確化し、顧客保護につなげたい考えだ。

    株や債券など異なる金融商品の損益を相殺して税負担を軽くする金融所得課税の一体化では、対象に金融派生商品(デリバティブ)を追加するよう求める。個人が投資しやすい環境を整える狙い。ただ、デリバティブ取引をめぐっては、租税回避への懸念があるため、年末などの時価を基に損益を計算する時価評価課税を適用するといった防止策を講じる。

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    ──金利が中央銀行によって完全に操作されるのは問題ではないのですか。価格統制は、市場経済とは言いにくいように思えます。

    中央銀行が介入しなくても金利はゼロになります。ゼロを上回る金利がすべて人為的なものなのです。仮に、中央銀行が日々の金利の支払いを民間銀行の預金に入れるのを止めれば、非常に短期間のうちに金利はゼロになります。

    MMTでは、自然利子率はゼロとしています。ゼロよりも高い金利はすべて人為的であり、中央銀行が金融政策の実施に見合った金利水準はもっと高いと判断したことを示しているのです。

    それは中央銀行による金利の操作であり、人為的に決めた価格なのです。日銀は金融政策の目標に合わせて金利水準を固定しているだけであり、それ以上のことはしていません。

    MMTのインフレ対策とは?
    ──民間で仕事が見つからない人は国家が全員雇って、どんなときでも完全雇用を保障すべきだと主張されていますよね。

    ハイマン・ミンスキーに着想を得て、提言したことです。私に言わせれば、ハイマン・ミンスキーは、20世紀最大の経済学者の一人です。彼が研究したのは、1930年代の大恐慌であり、とりわけ金融市場を研究していました。

    ミンスキーが不思議に感じたのは、米国の連邦政府がFRBを「最後の貸し手」として創設し、危機が起きても流動性はつねに保たれると金融市場に示したのに対し、言ってみれば、「最後の貸し手」の財政版といえる「最後の雇い手」になる機関を創設しなかったことでした。私は創設されなかったその機関を「連邦雇用保障」と呼んでいるのです。

    新型コロナ危機でいま非常に危惧されているのは、今回、失業した人たちが、長期失業者になってしまうことです。長期失業者になってしまうと、景気が回復しても雇いづらくなってしまうからです。

    ですから、人が失業したときに、衝撃を緩和する仕組みが必要です。失業者が最低限の賃金をもらいながら、失業期間中も働き続け、仕事の能力と働く習慣を保てるようにするのです。そうすれば景気が循環して、企業がまた人を雇うようになったら、企業はそういった人たちを雇えます。

    そういう人たちを雇うには、最低限の賃金に少しだけ上乗せすればいいので、競合他社から有能な人材を高い給与を提示しながら引っ張ってくるという、インフレの要因になるようなことをしなくても済むのです。

    ──MMTでは、どうすればインフレを防げることになっているのですか。

    前述の「連邦雇用保障」が第一のブレーキになります。歴史を見ると、米国政府は、小麦の備蓄をしたりするなど、農産物価格の安定化に積極的でした。

    連邦雇用保障は同じ働きをします。景気が悪くなれば、連邦雇用保障を通じて自動的に政府の支出が増えるのです。人が雇われ、景気が回復したときに雇いやすい人材の蓄えを作るのです。

    逆に景気がよくなったときは、連邦雇用保障から支出される金額は自動的に減る仕組みになるわけですし、税収も増えるので、それがインフレを防ぐのです。

    ──しかし、またインフレが起きてしまったら、どうするのですか。

    1970年代にインフレが起きることになった当初の要因は、原油価格の上昇とベトナム戦争でした。企業の従業員がいまよりも労働組合に加入していたので、賃上げを求めやすかった側面もありましたけれどもね。

    さて、このように国外から輸入されたタイプのインフレを、どうやって抑えられたのでしょうか。金融政策が抑えたわけではありません。FRBのポール・ヴォルカー議長の利上げでインフレが抑えられたのではありません。むしろヴォルカーの政策は景気後退を引き起こすものだったというべきです。

    効果をあげたのは、ジミー・カーターが実施した天然ガス産業の規制緩和政策でした。それが天然ガスの価格を下げ、天然ガスが石油と競争できるようになったのです。

    インフレを相手に闘うとき、今のように金利と金融政策という、たった一つの武器しか持たないのは得策ではありません。金融政策という武器は、インフレを相手に闘うとき、役立たないことが多いのです。インフレの性質を見きわめてから対策を練るべきです。

    通貨主権のないユーロ圏の国家はどうなる?
    ──米国の財政赤字や公的債務について言えることが、そのままフランスには当てはまらないのはなぜですか。

    フランスが、通貨に関しては主権国家でなくなっているからです。フランスが使っているのはユーロであり、フランはもう使っていません。そのため、フランスの財政支出能力はかなり制限されてしまっています。フランス政府は金利も設定できません。

    フランスが米国や日本と違うのは、そこのところです。貨幣を発行しているのは欧州中央銀行なのです。新型コロナ危機が始まった頃、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、ユーロ圏の長期国債の利回り格差は自分の職務の範囲ではないと発言した後、すぐにそれを撤回し、その後は利回り格差が広がることは許さないという姿勢を示しました。

    欧州中央銀行は欧州の共通通貨を発行しているので、どんな債務も持続可能にできるのです。誰も欧州中央銀行を相手には闘えないのです。クリスティーヌ・ラガルドは、各国政府にコロナ対策の支出に何の不安も感じなくてもいいと理解させたのです。

    そのように行動したことで、欧州中央銀行は、ユーロ圏の国家の通貨主権を回復させたようなところがありました。ただ、問わなくてはならないのは、それがいつまで続くのか、というところです。私が不安に感じるのは、そこのところです。

    ──一部の経済学者は、ユーロ圏の国家の債務を減らすために、欧州中央銀行が新型コロナ危機の最中に買い入れた国債を放棄する債務帳消しを提言しています。どうお考えですか。

    欧州中央銀行が、いまの政策を続けることに決めるだけでも、長期的に債務を持続可能にすることはできます。債務の帳消しは、欧州中央銀行ができるもう一つの方法です。

    最悪なのは、ユーロ圏の政府が、膨れ上がった債務残高を減らすために緊縮財政を実施しなければならなくなることです。それに比べれば、どんな解決策も好ましいです。欧州中央銀行には、債務帳消しができるバランスシートがあります。債務帳消しをしたときにネガティブな影響を受ける人はどこにもいません。

    中央銀行は、資産がマイナスになっても問題はありません。損失を無限に吸収できるのです。ただ、債務帳消しという解決策には問題が一つだけあって、それは政治の問題が出てくるということです。

    Marc Vignaud

  • 現代貨幣理論(MMT)の中心人物が語る「財政赤字や公的債務が膨れ上がっても何の問題もない」
    8/22(日) 9:00配信

    日本でも注目を集めつつある現代貨幣理論(MMT)の主唱者、ステファニー・ケルトン。日本のように自ら貨幣を発行できる国は財政破綻することがない、という大胆な理論を唱える彼女に、仏誌「ル・ポワン」が徹底的に疑問をぶつけた。

    米国の連邦議会にはハトとタカの二派がいる。ハトは減税よりも財政支出拡大を好む一派で、民主党の議員に多い。一方のタカは、財政支出拡大よりも減税を好み、共和党の議員が大半を占める。

    そんなハトとタカだが、アメリカ政治という鳥小屋では意見が一致することもある。たとえば中期的には、公的債務が増大するのを全力で食い止めようとするのはハトもタカも一緒だ。

    そんななか、フクロウを自任する米国人経済学者がいる。その名もステファニー・ケルトン(51)。フクロウとは財政赤字も公的債務も重視する必要がないとする一派である。

    ケルトンは2015年から米上院予算委員会の民主党のチーフエコノミストを務めてきたニューヨーク州立大学教授で、民主党内の左派のバーニー・サンダースの政策顧問も務めた。MMT(現代貨幣理論)の中心人物の一人である。

    MMT派に言わせれば、主権国家は自国の通貨を発行できるのだから、国債でお金を借りる必要はない。国家が経済に注ぎ込んだお金がインフレという眠れる怪物を起こさないかぎり、債務は際限なく増やせるという。

    世界各国の政府が、新型コロナがもたらした経済と社会の危機に対処しようとするなか、MMTが魅力的な理論として受け取られるようになった所以(ゆえん)である。ステファニー・ケルトンに話を聞いた。

    政府の「赤字」は、国民の「黒字」
    ──国家の財政赤字や公的債務を心配する必要はまったくないと仰っていますが、それはなぜですか。

    通貨主権を保てている国家には米国、英国、日本、オーストラリアなどが挙げられますが、これらの国家にとって財政赤字が積み重なってできた公的債務は、世間で言われているほど、危険なものでも、無責任なものでもありません。

    財政赤字とは何でしょうか。それは単純に言えば、国家が毎年、経済に支出している金額と国家が租税などで得ている金額の差です。年度の終わりに収入の額から支出の額を引いたとき、マイナスになれば財政赤字だということになります。

    さて、これは実際に何を意味するのか。それは政府がその金額を、家計や企業などの民間部門に渡しているということにほかなりません。つまり、米国政府にとっての赤字は、米国民にとっての黒字だというわけです。

    財政赤字に不安を抱くというのは、国家が民間部門を黒字にすることに不安を抱くのと同等の話です。国家が支出するというのは、誰かの銀行口座にその金額が入り、その人がそのお金を使えるようになるということなのです。

    MMTでは、財政赤字や公的債務の増大のせいで国家が破綻するのを不安視することはありません。国家を破綻させるのはインフレなのです。国家が経済に注ぎ込むお金がインフレを引き起こす要因にならないかぎり、財政赤字も公的債務も何の問題もありません。その証拠に、米国政府の2020年の財政赤字が3.1兆ドルという天文学的な数字になっても、何の影響も出なかったのです。

    世間の人は「公的債務」という語句を聞くだけでネガティブにとらえがちです。それは公的債務とは、自分たちの借金であり、いずれは増税か歳出削減のどちらかで返さなければならないお金なのだという説明を刷りこまれてきたからです。

    しかし、公的債務とは、国債という形をとった国民の貯蓄の一部であり、国民の富の一部なのです。米国に財政赤字問題は一切ありません。通貨主権を保てている国は、どこも財政赤字問題など抱えていないのです。

    国民が望めば、いつでもキーボードを叩くだけで、すべての債務を即時に支払えます。公的債務についてはPRの失敗がありました。使っている用語が悪いのです。

    ──税を徴収して財源を確保しなくても国家は支出ができるということですが、どうしてそれが可能なのですか。

    租税が必要なのは、それが国家が発行する貨幣に価値を与えるからです。それをしなければ、国民は商取引にその貨幣を使ってくれません。

    しかし、財政支出の規模に応じて、租税で徴集する額を決める必要はまったくありません。米国の連邦議会は、何の増税もすることなく、数兆ドル規模の財政支出計画を可決できたのです。連邦議会が支出をすると決めたとき、誰かにお金を借りに行く必要はありません。中国にも、ほかのどの国にも、お金を借りる必要はないのです。

    連邦議会がすべきなのは、法律に署名をし、どんな政策にどのくらいの金額を使う用意ができているのかを示すだけです。その指示が米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)に出され、実際のオペレーションはFRBが担当します。FRBが、政府が支出したい分の金額だけ貨幣を発行するのです。その過程で増税が必要になる局面は出てきません。

    ただし、経済が完全雇用に近づいたときは、何の埋め合わせもなく新しい財政支出計画を実施することには注意を払ったほうがいいです。租税という形で民間経済からお金を回収しないと、インフレが復活するおそれがあります。

    ──国家が自国通貨さえ発行すれば、つねに債務を支払えるとお考えなのですか。

    国家が支出をするには、自国通貨の発行しか手段がありません。MMTは、政府にお金をどんどん刷るよう推奨する理論だと戯画化されることが多いです。しかし、MMTが国家にそのように推奨しているわけではありません。MMTは、単に貨幣の制度と財政の仕組みを、ありのままに説明する理論に過ぎません。

    政府のすべての支出は、実際には貨幣の発行で賄われているのです。国家が金融市場に債券を出しているかどうかは関係ありません。国家が増税するかどうかも関係はありません。

    すべての支出は、国家の予算担当機関とでもいうべき中央銀行によってなされています。中央銀行が、政府に許可された支払いを実行しているのです。中央銀行が、対象となる口座に電子的にお金を入れるわけです。

    米国政府は新型コロナ危機で、米国の家計に給付金として、まず1200ドルの小切手、その次に600ドルの小切手を送付しましたが、そのときも中央銀行が民間銀行の口座にお金を入れ、民間銀行がそのお金をすぐに顧客の口座に入れるということをしていました。その後、米国では1400ドルの小切手も送付されました。

    「金利の水準はあまり重要なことではない」
    ──ジョー・バイデン大統領は、2021年3月に1兆9000億ドルという巨額財政支出計画に署名をしましたが、インフレは始まりそうでしょうか。

    これは今、米国で大きな議論の対象になっています。ローレンス・サマーズなどのごく少数の経済学者が、1兆9000億ドルの財政支出計画が米国経済を過熱させると言っていますが、同意する人はほとんどいません。

    もちろん、私もまったく同意できません。FRBのジェローム・パウエル議長も、そのような状況にはまだほど遠いと明確に説明しています。

    経済が完全雇用になっていればインフレ復活のおそれもありますが、失業者に関して適切な統計を見るかぎり、完全雇用にはほど遠いのが実状です。本当の失業率は10%に近いのです。

    それに、この1兆9000億ドルの財政支出計画は、2021年3月に切れてしまう失業者への給付を延長し、2021年9月まで継続させたものです。企業もこれまでどおり、この財政支出計画で得たお金から従業員の給与を支払えます。

    つまり、これは追加の支出ではないので、インフレを引き起こすわけではありません。もちろん細かく見れば、追加の支出となっている部分もありますが、基本的には、すでに可決された支出計画を単に延長したものです。

    ──とはいえ米国債の利回りが上昇する局面もありました。不安を感じませんか。

    FRBの元議長のアラン・グリーンスパンが言うように、米国という国家が破産するリスクは一切ありません。

    「米国はすべての債務を支払えます。なぜなら米国はいつでもお金を刷れるのですから」。これはグリーンスパン本人の言葉なのです。米国の債務は、すべて米ドル建てなので、FRBが銀行口座の数字を変更するだけで、債務をすべて支払えます。自国の通貨が不足する事態はありえません。

    80年代のはじめ、ロナルド・レーガンが米国の大統領に就任したとき、FRB議長のポール・ヴォルカーのもと、米国の10年物国債の利回りは16%を超えました。レーガン政権の8年間、長期金利は7%を下回ることはありませんでした。

    その間、レーガンは何をしたでしょうか。大規模な減税をする一方で、軍事支出を膨大に増やしたのです。その結果、米国の公的債務は3倍になりました。でも、それで何か問題が起きたでしょうか。何の問題も起きなかったのです。

    金利の水準はあまり重要なことではないのです。いったいどこの国の政府が、金利の水準によって債務危機を引き起こすのを許すでしょうか。

    日本の事例を見てください。日本の公的債務はGDP比で250%を超えましたが、10年物国債の利回りはゼロのままです。なぜなら、中央銀行がイールドカーブをすべて制御しているからです。日銀は国債を買う必要すらありません。金利がゼロを上回ったら、中央銀行が介入すると市場がわかっているからです。

  • 半導体不足、ついにスマホメーカーにも 危険水域に

    小久保重信

    半導体供給網を見直し バイデン氏が大統領令署名(写真:ロイター/アフロ)
    米ウォール・ストリート・ジャーナルは世界的な半導体不足の波が、ついにスマートフォン業界にも押し寄せたと報じた。

    出荷台数減少、発売遅延
    スマホメーカーは通常、主要部品を約半年前に調達しており、自動車やパソコン、家電などのメーカーが直面しているような部品不足問題を回避してきた。だが、ここに来てスマホ各社の在庫も減少しており、大手の出荷にも影響が出始めているという。

    韓国サムスン電子も主要部品の調達で苦戦しており、今後のスマホ出荷台数が前年比で20%減少するとみている。米グーグルは「Pixel 5a 5G」について、2021年は米国と日本の2カ国限定で発売すると明らかにした。中国の小米(シャオミ)は21年4月にインドで「Mi 11 Ultra」を発表したが、発売時期が同7月にずれ込んだ。

    業界アナリストによると、高価格帯端末を手がける米アップルはサプライチェーン(供給網)に大きな影響力を持っており、こうしたトラブルに巻き込まれていない。サムスンも大半の高価格帯端末でこの問題を回避できている。その一方で、スマホ業界の8割超が部品調達の問題を抱えているという。

    年後半、1.3%増にとどまる見通し
    香港の調査会社カウンターポイント・リサーチによると、21年1〜3月期の世界スマホ出荷台数は前年同期比で20%増加。新型コロナの影響がなかった19年1〜3月期との比較では4%増加した。

    ワクチン接種の進展や、経済再開がもたらす消費増によって、21年のスマホ市場は好調に推移するものとみられていた。しかし、ここに来て半導体不足問題が市場に暗い影を落としている。21年後半の世界出荷台数は7億7100万台で、前年同期比1.3%増にとどまるとカウンターポイントはみている。

    供給リードタイムは「危険水域」
    米サスケハナ・ファイナンシャル・グループのアナリストによると、健全とされる半導体の供給リードタイムは12~14週間。しかし21年6月のリードタイムは19週間で、サプライチェーンの危険水域とみなされる16週間よりも長かった。

    こうした遅延に加え、スマホの主要な製造拠点であるインドやベトナムで新型コロナの感染が引き続き拡大しており、メーカーはこれらの問題に対処しなければならない。

    この状況はスマホ新製品の市場投入にも影響を及ぼしているという。カウンターポイントによると21年前半に世界のメーカーが発売した新モデルは約300機種。前年同期の370機種に比べ18%少ないという。

    小米の4〜6月出荷台数、アップル抜き2位に
    シンガポールに本部を置く調査会社カナリスによると、21年4〜6月期の世界スマホ出荷台数は前年同期比で12%増加した。好調に見えるが、これは1年前に、新型コロナの影響で大きな落ち込みとなった反動だ。

    21年4〜6月期のメーカー別出荷台数の上位5社は、サムスン、シャオミ、アップル、中国OPPO(オッポ)、中国vivo(ビボ)の順。

    シャオミはアップルを抜いて初めて2位に浮上した。ただし、シャオミ端末の平均販売価格はサムスン製品に比べて40%、アップル製品に比べて75%安価。

    シャオミにとって今後の課題は高価格帯製品の販売を伸ばすことだとカナリスは指摘している。

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    (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年7月21日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

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    「トヨタ・ショック」でプラチナ価格が急落、コロナ感染拡大の余波

    小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

    8/20(金) 13:12

    トヨタ自動車は8月19日、9月の世界自動車生産を計画の90万台弱から50万台強に引き下げた。世界的な半導体不足の影響は限定的だったが、自動車部品工場が集中する東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大する中、部品調達が停滞しているため国内外の工場が稼働縮小を迫られている。

    業績が好調だったトヨタ自動車の大規模減産が報じられると、同日の同社株価は前日比4.4%安と急落し、他の自動車メーカーや部品メーカーも連想売りで大きく下押しされる展開になった。日経平均株価も304.74円安の2万7,281.17円まで下落している。一種の「トヨタ・ショック」が発生した格好になる。

    一方、これと同様に大きなダメージを受けたのが、プラチナ(白金)とパラジウムだ。指標となるNYプラチナ先物相場は1オンス当たりで前日比25.20ドル安の971.20ドル、パラジウム先物相場は同125.40ドル安の2,297.90ドルとともに急落している。プラチナやパラジウムは自動車の排ガスから有害物質を除去するための触媒用貴金属として使用されているが、トヨタ自動車の大規模減産によって、触媒用貴金属需要の落ち込みも同時に警戒されたためだ。

    プラチナ相場は今年2月16日には1,348.20ドルまで値上がりしていた。新型コロナウイルスのショックが緩和されて自動車生産・販売が回復したことに加えて、中国などで環境規制強化からより多くの触媒用貴金属が必要とされる状況が、プラチナ需給の引き締まりを強く警戒させた結果である。しかし、6月前後から半導体不足による自動車工場の稼働停止報告が目立つ状況になると1,000~1,100ドル水準までコアレンジを切り下げ、7月下旬以降は東南アジアの新型コロナウイルスの流行で部品工場におけるクラスター発生、部品生産・流通の停滞報告から更に1,000ドル台も割り込む展開になっていた。

    その意味では、トヨタ自動車の大規模減産も「サプライズ」というよりも「やはりトヨタもか」といった受け止め方の方が優勢だが、それでも自動車生産環境の苦境を象徴する動きとして、プラチナやパラジウム価格を大きく押し下げる要因になっている。

    自動車に対するニーズそのものが大きく落ち込んでいる訳ではないため、半導体不足や部品調達の停滞が解消に向かえば、逆に自動車増産の動きがプラチナやパラジウム需要を回復させるとの期待感もある。しかし、トヨタ自動車の減産発表を受けて、まだ厳しい状況が続くとの警戒感が強くなっている。プラチナとパラジウム相場の急落は、まだこの問題に出口が見えてきていないことを示唆しているようだ。

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