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■ イーロン・マスクにとってカラ売りファンドは天敵

 投資家を惹きつけておくためには、株価を上げることが至上命令で、会社の欠陥を探して株価を下げようとするカラ売りファンドは天敵だ。

 マスクはSEC(米証券取引委員会)が十分にカラ売りファンドを取り締まっていないとして「SECはShort seller Enrichment Commission(カラ売り屋金持ち化委員会)だ」とツイッターで苛立ちをあらわにしたこともある。2019年に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者(CIO)の水野弘道氏が、カラ売り投資家への外国株の貸し株を停止したときには、「ブラボー、正しいことだ!  カラ売りは違法にすべきだ」とツイートし、翌年、GPIFを退任した水野氏を社外取締役に迎えた。

 テスラが最も苦しかったのは、株価が50~60ドルで低迷を続けていた2018年から2019年にかけてだった。当時、モルガン・スタンレーは「テスラの株価は10ドルになる」という衝撃的なレポートを発表し、カラ売り勢もテスラを破綻前のリーマン・ブラザーズになぞらえたりして危機感をあおった。

 精神的に追い込まれたマスクは言動がおかしくなり、2018年第1四半期の決算説明会では、質問したアナリストに対して「ボアリング!  ボーンヘッド・クエッションズ・アー・ノット・クール! (退屈だ!  間抜けな質問はクールじゃない! )」と暴言を吐き、批判を浴びて翌日謝罪したり、エイプリル・フールにツイッターに「非常に残念なことだが、マーズが完全かつ全面的に経営破綻したことをお伝えしなくてはならない」と書き込み、テスラ車に背中を預け、足を床に投げ出して死んだふりをしている自分の写真を投稿して株式市場を一時騒然とさせたり、根拠のない株式非公開化のツイートをしてSECから個人と会社にそれぞれ2000万ドル(約22億円)の罰金を科されたり、YouTubeで配信されていたインタビューの最中に「(カリフォルニアでは)合法だよね」と言って大麻を吸って物議をかもしたりした。

 しかしその後、幸いなことに旗艦車種の「モデル3」が何とか生産軌道に乗り、上海の大型工場「ギガファクトリー」も稼働を開始したこともあって、株価は急上昇を始め、現在は711ドルという高値圏に到達した。時価総額は約77兆円で、トヨタの2.5倍である。

 しかし、カラ売りの残高は相変わらず多い。サブプライムローン関連株をカラ売りして大儲けしたマイケル・バーリ氏のファンドなどが「テスラの株価は馬鹿げた水準」としてカラ売りに参戦したりしている。株価が過大評価されていると考えられる限り、カラ売りはなくならず、テスラとカラ売りファンドの戦いは百年戦争の様相を呈している。

■ イーロン・マスクは人類の救世主となるか

 ただマスクが目指すのは、トヨタやカラ売りファンドに勝つことではない。彼は、人類はこのままでは地球に住めなくなるため、火星に移住する必要があるが、実現にはまだ相当な時間がかかるので、それまで地球環境が悪化するのを遅らせるためにEVを普及させ、人類を化石燃料から切り離すと宣言している。

 彼は決して「テスラの時代が来る」とか「地球の道路をテスラの車で埋め尽くしてみせる」とは言わない。常に「EVの時代が来る」、「EVで埋め尽くす」と話す。自社が取得した特許もほとんど無償で公開しており、その志は、テスラという一企業の枠を超え、常に人類救済という壮大な目標に向けられている。

 テスラを軌道に乗せるために駆けずり回るかたわら、まったくのゼロから時価総額10兆円強といわれる宇宙ビジネスのスペースXを創り上げ、2012年以来、ISS(国際宇宙ステーション)に20回以上の貨物輸送を行ったほか、昨年6月には、民間企業として世界で初めて有人宇宙飛行を成功させてもいる。

 凡人には狂気か妄想としか思えない考えを次々と実現していくこの人物は、あらゆる戦いに打ち勝って、本気で人類を火星に移住させようと考えている。毀誉褒貶は多いが、コロナ禍で閉塞感が漂う世界にあって、見ているだけでわくわくさせてくれる稀有な存在である。