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"After Corona" の株式市場はどうなる?
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"After Corona" の株式市場はどうなる?の掲示板

日経平均3万円復活への「2つの条件」がほぼ整った
気になる菅内閣の支持率も今後徐々に回復へ?

平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

7月14日の109円安から始まった日経平均株価の下げに青ざめた投資家も多かったのではないか。14日以降は20日の264円安まで今年初めての5連続安。合計では1330円の下げとなり、20日は2万7388円(終値)となった。そして、昨年大納会からの4連続安の結果である1月6日の今年の最安値2万7055円(同)にあと300円ちょっとに迫るに至った。

日本株だけが出遅れた2つの要因とは?
世界は今、新型コロナウイルスのデルタ株の脅威にさらされている。事実、ニューヨーク(NY)ダウ平均も16日の299ドル安、19日の725ドル安の連続下げで、「プチ・デルタ株ショック」とでもいうべき動きを見せた。

ただ、その直後からは20日の549ドル高、21日の286ドル高と、大きく戻しているように、新たなコロナ禍の中でも、欧米各国の株価は比較的しっかりしている。NYダウは昨年末に対してプラス約14%の位置にあり、その他はS&P500種指数や仏CAC40、独DAXも14~17%前後のプラスとなっている。

それらに若干劣っている英FTSE100ですら、プラス約10%といった水準だ。しかし、日経平均は昨年大納会2万7444円に対して、4連休前の21日の引け値はプラス約0.4%(東証株価指数=TOPIXは約0.8%)と、出遅れが著しい。

すでに世界は「ウィズコロナの時代」を受け入れようとしており、短期間での金融引き締めなど「夢のまた夢」だ。日本銀行が異次元金融緩和の継続を言明している日本も同様で、マネーストックM3(市中の現金と預金の合計)の6月平残は史上最高の1518兆8000億円と、お金ジャブジャブ状態で、需給相場の観点から下げる余地は乏しい。

では「世界に劣後する日本株」の原因は何だろうか。ひと言でいえば、投資家が迷っていることだ。

迷いの原因は2つ。すなわち、日本が世界と決定的に違うのは、デルタ株の不安の中で発進した「2020東京五輪」の存在と、「極めて低い政府への信頼感」だ。

7月13日に出た有力新聞社の世論調査では、菅義偉内閣の支持率は37%、不支持率は53%だったが、これを東京都に限ると支持率28%、不支持率はなんと63%だった。

政府のコロナ対応についても、感染者が多い東京都では「評価する」が24%でしかなかった。兜町筋から、この数字では「株は力を入れて買えない」という話が多数聞こえてくる。

5月以降、相場格言が通じなくなった
一方、「株のことは株価に聞け」との相場格言があるが、そのようにしたらどうなったか。最近の日経平均の動きに従ってみると、5月11~13日に大陰線が3本連続し2000円以上の値下がりとなり、直近の安値2万7663円を下回った。

本来、これは明らかな「相場の崩れ」の形で、株価的には完璧な売りシグナルである。早速翌日の寄り付き(2万7723円)で売ったと仮定したら、6月15日には2万9441円の引け値まで一気に戻して、大外れとなった。

またその後の7月9日には、200日移動平均線や5月13日の安値まで下ヒゲを出しての「手繰り陽線」が出た。これは明らかな買いシグナルで、翌日7月12日の寄り付き(2万8412円)で買ったと仮定したら20日の引け値は2万7388円で、今度は逆の形で大きな痛手を受けたことになる。このように昨今は「株価に聞く」こともできない。

もう1つ、迷ったときには「国策には逆らうな(素直に国の政策に資金を乗せろ)」ともいわれる。しかし、残念ながらこちらも前述のごとき国(内閣)への「低支持率」では、素直に資金を乗せられない。

では、今後日経平均が上昇する条件とは何か。前述の2つの格言「株のことは株価に聞け」「素直に国の政策に資金を乗せろ」が、格言として「復権」することだろう。

7月19日の週は、立会日数3日間の変則的1週間だったが、4連休直前21日の日経平均は159円にはなったが、反発して下げ止まりを見せた。

日本市場でも業績相場へ移行する準備は整った
一方、23日のアメリカ株は、NYダウ、ナスダック総合指数、S&P500指数がそろい踏みで史上最高値を更新した。

この日発表になったアメリカン・エキスプレスの2021年4~6月期の決算が市場予想を上回る数字を連発して、消費関連銘柄が上昇した。これによって今週発表されるハイテク株に連想的業績期待が高まり、ほぼ全面高となった。先物の指標であるシカゴのCME日経平均先物価格は円建てドル建てともに2万8200円前後で帰って来た。

日本の個別企業の決算発表でも、日本電産は2025年度までの中期経営計画で、電気自動車向けの事業を拡大するなどして、今後5年間で売り上げを2.4倍の4兆円に引き上げるとしている。

同社の2021年4~6月期決算では売上高4474億円と、この期としては過去最高を記録し、最終利益は前年同期比66%増の334億円だった。これは日本市場に活を与えるには十分な内容だ。

アメリカでは業績相場がすでに始まっているが、日本でもその可能性が見えてきた。好業績による問答無用の株高があれば、投資家のセンチメントは大きく改善する。

一方、「素直に国の政策に資金を乗せろ」だが、東京五輪は泣いても笑ってもすでに動き出した。もう中止はない。無事、大イベントの通過が見え、パラリンピックが始まる頃には不安感もさらに落ち着き、同時に国への支持率も上がると想像できる。

今後は、前述のように、とくに東京都における内閣支持率が重要であり、それが株価の趨勢を決めると思っている。時を同じくして、これから日本企業は4~6月期決算発表のピークを迎える。NYダウは3万5000ドルに史上初めて乗せ、さらに上を目指す勢いだ。

PER(株価収益率)も13倍台と、それほど高くない日経平均の目標を、ひとまず3万円においても高望みではあるまい。日経平均3万円が回復できれば、市場外に待機している資金がどっと入ってくるというのが「兜町強気派」の合言葉だ。