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米なう☆の掲示板

>>12

しかし、これで本当に雇用環境が元に戻ったのではない。その7年の間に高校や大学を卒業した人、メキシコなどから米国に来た人が仕事を求めるからだ。これが労働市場のたるみ(=スラック)だ。賃金を上げなければ人を雇えなくなって初めてスラックがなくなる。ようやく賃金が上がり始めたのは2015年も秋のこと。スラックの解決にさらに1年ほどかかったことになる。つまり、雇用ショックとしてのリーマンショックは決して遠い過去のことではないのだ。

米国の利上げを後押しした賃金上昇

このところ、毎月の雇用者数や賃金は安定してきた。これこそが2015年12月、米国連銀が利上げに踏み切ることができた理由だ。人民元切り下げなどのリスク要因はあったが、少なくとも米国内の状況は順調に見えた。利上げの背景には、賃金の上昇が素直に米国の消費拡大を伴うインフレをもたらすとの期待があった。

ところが実際には、賃金の上昇はここまで消費拡大につながってきていない。そこで金融市場は待ちくたびれ、機嫌が悪くなってきた。雇用さえ増えればおのずと賃金が上昇し消費が増え、ひいては日欧の輸出が活性化、中国など生産国や資源国が回復するという好循環への期待はすっかりしぼんでしまった。

しかも、賃金上昇が消費に向かわない、その理由がよくわからない。

これを説明する仮説としては、(1)まだ久しぶりに賃金が上がりだしたばかりでまだ十分認知されていない、(2)社会的地位や給与水準など仕事の質がまだリーマンショック前に戻っていない、(3) 豊かさの経験に乏しいミレニアル世代(30~40歳くらい)が貯蓄率を上げる、(4)今後はどの世代もあまねく貯蓄率を上げる、といったものがある。

ここで最初の2つは時間が解決する問題であるが、後ろの2つは構造変化を意味していることに注意したい。つまり今のところ、賃金が増えても消費を増やさず貯蓄に回すことがごく一時的なのか未来永劫なのかがよくわからないのだ。

私は今のところ、消費が盛り上がらない理由は前の2つが大きく、(3)は少しあるかもしれないが(4)はなさそうだと見ている。

  • >>13

    経済情勢が厳しい時代に社会人になった世代が他の世代よりも貯蓄率が高い傾向はあるようだが、(4)のように全体として価値観が変わった例を見出すことは難しい。それゆえ、消費回復は時間の問題としてとらえている。いつ頃感覚が正常化するのかについては、3年とかではなく3カ月とか6カ月であろうと想定する。

    今がまさにリスク資産の購入タイミング

    米国の消費拡大が始まれば、ドル高、輸入増、日欧の輸出増加、生産国の製造業回復、資源国の活性化、世界需要の拡大の好循環を順次期待できるようになる。これで、いよいよ長かったリーマンショックからの世界的な正常化が最終段階を迎える。世界経済の基調は右肩上がりだ。トレンドが強い中でサイクルが弱い現状は、日本株や米国株などリスク資産の購入の良いタイミングだと判断する。

    ただ、市場にとってのリスクのひとつに米国の政治の行方がある。大統領選の結果はまだ分からないが、クリントン氏が選ばれれば不確実性が減り、トランプ氏となれば、自由貿易を好まずドル安を志向するかもしれない。

    より長期的な懸念材料は、トランプ旋風が示した既存の政治家やエスタブリッシュメントへの幅広い嫌悪だ。政治家の発言は説得力を失い、TPPは先送りされ、地政学的な不安定要素への対応が遅れがちになろう。そうなれば石油価格、クレジット関連市場、資源国やひいては先進国の為替や金利の変動が大きくなりやすい。

    リスク資産買い入れのタイミングをうかがう、またリスクシナリオを分析する、いずれにせよ、その成否に決定的な影響を及ぼすのは、米国の政治経済の行方いかんとなる。投資を考えるにあたっては、くれぐれも米国の重要性を過小に考えることのないよう注意しなければならない。