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アマゾン、22年に米最大の小売業者へ

 アマゾン・ドット・コムは商品取扱高の規模で、2022年にも米ウォルマートを抜き米国最大の小売業者になりそうだと、米CNBCが6月11日に報じた。

■ アマゾン、20年の流通総額34.7兆円

 米JPモルガン・チェースのアナリストによると、2014~20年の米国内におけるアマゾンの流通総額(GMV)の伸び率は、米小売業販売額と米電子商取引(EC)販売額の伸び率を大きく上回った。

 アマゾンとウォルマートはいずれも自社の流通総額を明らかにしていない。だが、JPモルガンの推計によると、20年におけるアマゾンの流通総額は前年比41%増の3160億ドル(約34兆6900億円)。これに対し、ウォルマートは同10%増の4390億ドル(約48兆1930億円)。

 「このペースで推移すると、アマゾンの金額は22年にウォルマートを上回り、米国最大の小売業者になる」とアナリストらは指摘している。

■ 拡大続く出品業者の取引額

 アマゾンの流通総額とは、同社が直販する物品販売額と、ECマーケットプレイスに参加する出品業者の物品販売額を合わせた額だ。

 アマゾンが先ごろ公表した21年1~3月期の売上高は前年同期比44%増の1085億1800万ドル(約11兆9100億円)だった。内訳は直営EC事業の売上高が529億100万ドル。出品業者からの手数料および物流サービス収入が237億900万ドル。

 このほか同社はクラウドサービスのAWS事業や「ホールフーズ・マーケット」などの実店舗事業、ネット広告事業などで収益を上げている。

 だが、直販ではない外部の出品業者が販売を行うマーケットプレイスの取引額はこれに含まれていない。その額はアマゾンのEC総取引額の約6割を占め、今後も拡大が続くとみられている。

 JPモルガンによると、アマゾンの強みは2つあるという。1つは、食料品やアパレルなど、さらに成長が見込まれる商品分野が残っていること。もう1つはプライム会員の規模。アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は21年4月、世界の会員数が2億人を超えたと明らかにした。会員数は20年初頭の1億5000万人から着実に増大している。これが出品業者の販売を押し上げる大きな要因になっている。

 新型コロナ感染拡大の影響でECの利用が増え、小売市場におけるアマゾンの優位性がさらに強固になった。JPモルガンによると、14年に24%だったアマゾンの米国EC市場シェアは20年に39%に拡大した。

■ 70億個の荷物を自社配送、UPSを超える見通し

 こうしたEC需要の増大はアマゾンの他の事業にも寄与している。CNBCは、アマゾンがまもなく米国最大規模の物流業者になると報じている。

 アマゾンは、「ラストマイル」と呼ばれる、最終物流拠点から顧客宅までの配送業務の多くを自社便で賄っている。カナダのサプライチェーン・物流コンサルティング会社MWPVLインターナショナルによると、アマゾンの自社配送による荷物の個数は21年に70億個となり、米ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の60億個を上回る見通し。

 アマゾンは20年に自社のEC事業を通じ73億5000万個の荷物を顧客に発送した。うち50億個を自社便で配達。残りの12億5000万個と11億個を、UPSと米郵政公社(USPS)がそれぞれ配達したという。

 国土の広い米国では、従来プライム会員向け配送サービスは翌々日配送が標準だった。しかし19年に標準サービスを翌日配送に短縮する目標を掲げ、物流事業への投資を拡大した。

 21年1月には、ボーイングの中型旅客機「767-300」11機を購入したと明らかにした。アマゾンが航空貨物事業「Amazon Air」を始めたのは16年。当初は航空貨物会社からボーイング機をリースしていた。だが、コロナ禍の航空旅客需要の落ち込みを背景に中古機の価格が下落。購入に踏み切った。アマゾンは22年までにリース機を含めて85機超の貨物機を抱えるとみられている。

 (参考・関連記事)「アマゾンがボーイング旅客機11機を購入」

小久保 重信