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2160 ‐(株)ジーエヌアイグループの掲示板

線維症や硬変と聞いても、すぐにはイメージできない方もいらっしゃると思います。私も4年前まではそうでした。そこでちょっとだけ解説してみようと思います。担当医との短いやりとりが下敷きなので解りやすさ優先。不正確な部分があることをお許し下さい。

<肝臓の新陳代謝>
ヒトの肝臓は、2500億個の肝細胞と縦横に張り巡らされた毛細血管で出来ている。毎日15〜20億個の肝細胞が寿命を終え、新たな肝細胞に置き換わる。細胞ベースで「生まれて5か月で死ぬ」の繰り返しだが、これは普通の新陳代謝。

<役目を終えた肝細胞のゆくえ>
細胞は、細胞膜とその内容物(複数の蛋白質)で出来ている。
役目を終えた肝細胞のうち、その内容物は、肝臓内を通る毛細血管/静脈に取り込まれ、腎臓に運ばれて体外に排出される。
健診で行なう血液検査にAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の項目があるが、これらは肝細胞の中だけに存在する特殊な蛋白質。血中のASTとALTが正常値以上を示せば、炎症等による肝細胞の大量崩壊を意味する。

<問題は寿命を終えたor壊死した細胞膜>
細胞膜は線維質を含むので、そのままでは毛細血管に取り込めない。そこで、線維質を分解するための特殊な物質を肝臓自体が生成するが、能力に限界がある。新陳代謝以上に崩壊し、それが続くと、処理しきれなくなった線維質(元は死んだ細胞膜)が肝臓内に溜まる。これが線維化。
(#12885 hapさんの「傷」の説明はとても解りやすいです。)
線維化が進むと、肝臓内は細胞の死骸と役目を果たせずに膠化した蛋白質(コラーゲン)で埋め尽くされ、硬くなって機能しなくなる。これが肝硬変。

<線維症や硬変の改善・良化に向けたF351への期待>
従来の治療は、硬変まで進んだら元に戻らないことを前提に肝細胞の継続的大量壊死を防ぐことに重点。
核酸アナログ製剤に線維化を抑える働きがあるのではという議論はエンテカビル上市時からあったが、明確なエビデンスは獲得できず。
また、新陳代謝レベルなら線維化を防ぐ機能が肝臓自体に備わっているので、線維化や硬変に効く薬がない以上、医療現場にとっては肝炎の沈静化を図ることが最優先。
まだ先の話だが、B型肝炎由来の肝線維症・肝硬変の治療法が大きく変わるかも知れない。