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デ~タラデ~タラの掲示板

日本で発生例のない豚やイノシシの伝染病「アフリカ豚熱(ASF)」が、韓国で急拡大している。2024年に入り、養豚王国の九州から近く、長崎・対馬から約50キロの韓国・釜山(プサン)で相次ぎ感染を確認。有効なワクチンはなく、ひとたび感染が拡大すれば壊滅的な被害も想定されるため、国内の港などでは、水際での厳戒態勢が敷かれている。

 「お荷物、嗅ぎます」。2月下旬、福岡市の博多港国際ターミナルでは釜山からの新型高速船「クイーンビートル」が入港後、禁止されている肉製品の持ち込みがないかどうか、農林水産省の委託を受け、検疫探知犬を操るハンドラーが入国者の荷物を調べて回った。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によると、ASFウイルスは冷凍豚肉の中で110日以上、くん製ハムの中でも300日以上感染力を失わないとの報告もある。
韓国では19年に北部でASFの感染事例が初めて確認されると、感染域は南下し、23年12月には釜山でも初めて、感染した野生イノシシが見つかった。釜山では今年に入っても、旅客定期便がある港から5キロほどしか離れていない山で野生イノシシの感染事例が15件相次いでいる。

 ウイルスは人の靴の裏や車、自転車のタイヤなどに付着して遠方に運ばれる可能性がある。釜山港と日本国内を結ぶ航路は、博多港のほかに、大阪市、山口県下関市、対馬があり、これらの港や航空機の直行便がある空港などで、靴の消毒用マットを敷いたり、旅行者らにASFの流行を知らせるボードなどを設置したりして警戒を呼びかけている。

 農水省が豚の「最強の悪性感染症」として厳戒態勢を取る理由が、ASFの感染力や致死率の高さだ。

 ASFは感染した豚などの体液や排せつ物に混じったウイルスから感染する。発熱や皮下出血、粘血便などの症状が表れ、致死率はほぼ100%。豚の感染症には、すでに国内で感染が広がっている豚熱(CSF)があるが、これとは別のウイルスで、感染力はより強いという。通年で感染のリスクがあり、CSFには有効なワクチンが存在する一方、ASFにはない。人には感染しない。

 1900年代初頭にアフリカで症状が出た豚が見られ始め、20世紀後半になって欧州などに広がった。2018年にはアジア初となる感染を世界最大の豚の生産国である中国で確認。19年に死亡や殺処分で中国国内の飼育頭数は約4割減り、豚肉価格が2倍以上に急騰した。周辺諸国にも拡大し、東アジアで感染が確認されていないのは、日本と台湾のみだ。

 国内で感染が確認された場合はどうなるのか。感染した野生イノシシが見つかれば、半径約3キロ圏内に他に死んだ個体がいないかどうか捜索し、感染拡大防止のために必要に応じて周囲に電気柵やわなを設置する。農場の豚に感染した場合は、発生農場だけでなく、未感染豚も含めて一定範囲内の豚を殺処分する「予防的殺処分」も認められている。


 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、国際的な人の往来が活発化するなか、飼養頭数が約280万頭で国内全体の3割を占める一大養豚地帯の九州では、不安が広がる。

 鹿児島県さつま町の養豚場「旭ファーム」の大迫尚至社長は「(日本にASFが入るのは)時間の問題ではないか」と警戒。「農場に入る前に職員にシャワーを浴びさせ、外部の人を入れないために見学できないようにするなど、できる対策をしている」と気を引き締める。