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コロナワクチン、日本でなぜ生産できないのか

日本でも高齢者から 新型コロナワクチンの接種が始まった。写真は村の診療所でワクチンを接種する67歳の男性(写真:時事通信フォト)
新型コロナウイルスのワクチン接種が4月から高齢者向けに始まった。春先までは、わが国で必要とされるワクチンをいつ、どれだけ確保できるのか気をもむ時期もあった。だが、ワクチン確保に一定の目途が立ったようだ。

2020年度の補正予算でもワクチン確保に相当腐心してきた。アメリカのモデルナ社から5000万回分、ファイザー社から1億4400万回分、イギリスのアストラゼネカ社から1億2000万回分の計3億1400万回分を購入する経費として、2020年度の予備費から7270億円を捻出した。

それ以外にも、ワクチンの接種体制の整備やワクチン生産体制等緊急整備基金などにも予算を割き、ワクチン確保・接種関連の予算として2020年度に1.7兆円が計上された。

ワクチン追加購入費は予備費から
4月16日の日米首脳会談の後、菅義偉首相はファイザー社のアルバート・ブーラCEOと電話会談し、ワクチンの追加供給を要請した。ファイザー社からの追加供給は5000万回分との報道はあるが、本稿執筆時点で合意書はかわされていない。

追加供給分のワクチンの購入費は、2021年度の新型コロナウイルス感染症対策予備費(5兆円)の中から捻出される見込みである。

別の言い方をすると、供給契約が締結された3億1400万回分のワクチンは、2020年度補正予算で費用を計上したが、3月26日に成立した2021年度当初予算には、ワクチン購入費用をあらかじめ計上していなかった。予算成立時点で追加供給のメドが立っていなかったためだ。

追加供給があったときは予備費で対応する。もちろん、ワクチン接種体制の整備や開発などに関する経費は、別途計上されている。

わが国は、先進国の中でもワクチン接種開始が遅く、16歳以上の国民全員分のワクチンを2021年9月までに確保するメドをつけるには紆余曲折があった。前述の3社と供給契約を結んでいるものの、本稿執筆時点で実用化されているのはファイザー社製だけである。

しかも、ファイザー社製のワクチンはベルギーからの輸入に依存している。アメリカ国内でのワクチン接種を優先的に進めるために、バイデン政権はワクチンに国防生産法を適用しており、アメリカから日本にワクチンは供給されていない。ましてや、日本国内では生産されていない。

基金を使い、ワクチン国内生産を支援
日本政府はワクチンの国内生産体制の支援をおろそかにしているわけではない。研究開発と並行して生産体制を整備することで、供給開始までの期間を短縮することを狙いとして、2020年度第2次補正予算でワクチン生産体制等緊急整備基金を1377億円計上した。

同基金は、国内外で開発されたワクチンを国内で生産・製剤化するための施設・設備等に対して企業に補助金を出している。武田薬品工業と提携してアメリカのノババックス社のワクチンを日本国内で年間2.5億回分生産する体制を構築する。その生産体制に301.4億円を補助した。

ただ、ノババックス社製ワクチンは、2月から治験が始まったばかりで、本稿執筆時点で日本のワクチン接種計画に含まれていない。

それ以外にアストラゼネカ社に対しても、ワクチン生産体制等緊急整備事業での財政支援を行うことになっており、国内生産に期待がかかる。ところが、アストラゼネカ社製のワクチンで接種後の血栓発生が諸外国で報告されており、日本国内で同社製ワクチンをどう接種するのか不透明になっている。

では、日本国内で最初に実用化したファイザー社の製ワクチンは、国内生産できないのか。これは、技術面や財政面の障害が取り除かれても、生産者にとって最も悩ましい問題があり、容易に着手できないのが実情だ。