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(株)大阪チタニウムテクノロジーズ【5726】の掲示板 2021/03/27〜2021/06/09

>>93

しきちゃんさん、いつも詳しい説明ありがとうございます
ド素人の自分も調べてみたのですがしきちゃんさんの仰る点がいくつか確認できないことがあるのでご教示いただきたいです
・ここが航空機向けは戦争用(戦闘機向け?)チタンしか作っていないという根拠
・ロシアのVSMPO(エアバス向け60%、ボーイング向け40%)はエアバスだけでなく米国ボーイングへ輸出しているようですが、しきちゃんさんが米国にロシアがスポンジチタンを輸出できないと仰っていた根拠

  • >>95

    やぎさん、こんばんわ♪ ご質問にお答えしますね。

    >ここが航空機向けは戦争用(戦闘機向け?)チタンしか作っていないという根拠

    これはココとお隣さんのチタンの製造法をよく調べればわかります。ココがどうやってチタンを作ってるかはココのHPに詳しくカキコしてあります。

    スポンジチタンの製法であるクロール法は大戦前からしられていて、現在でもほとんどのチタンがこの方法で作られていますし、スポンジチタンそのものは世界中いたるところで作られています。問題は戦争用の超高純度チタン4N(99.99%以上)のチタンをつくることができるかどうかです。

    クロール法はチタン鉱石であるルチルTiO2やイルメナイトFeTiO3からまず四塩化チタンTiCl4を作ってこれを精密蒸留で高度に精製してマグネシウムと反応させてつくります。主要な化学反応式は以前にもカキコしましたけど、

    TiCl4 + 2Mg → Ti + 2MgCl2  ①

    です。どこの国でもほとんどこの方法でチタンがつくられているんです。それではココとお隣さんのチタンは何が違うのか?

    それはマグネシウムMgなんです。いくら高純度の四塩化チタンを作っても、マグネシウムに不純物が含まれていると戦争用高純度チタンをつくることはできません。ですから超高純度の金属マグネシウムをつくるところが他国でやってる方法と違うんです。

    金属マグネシウムは酸化マグネシウム(マグネシア)MgOを酸化カルシウム(生石灰)CaOとともにケイ素(シリコン:実際には鉄との合金であるフェロシリコンが用いられる)とともに高温で反応させて作られるのです。反応式で示すと、

    2MgO + Si → 2Mg + SiO2   ②
    SiO2 + CaO → CaSiO3

    です。これが一般に最も安価にマグネシウムを作る方法です。ただこの方法でできるマグネシウムの純度は低いために、高純度のマグネシウムを作るためにはマグネシウムを精製しなければなりません。マグネシウムを精製して超高純度のマグネシウムを作ることは大変なんです。ところがココもお隣さんは独自の方法でこの問題を解決したのです。それは塩化マグネシウムMgCl2の電気分解で超高純度のマグネシウムを作るとゆう方法です。

    MgCl2 → Mg + Cl2  ③「

    の反応を電気分解で行うとゆうことですね。しかしこの方法を行うには大量の電力がいるので、よほど電力が安いところでない限り反応式②の方法よりも製造費用が高くつきます。とくに日本のように電気代が高い国では非常に不利です。それにこの方法で超高純度のマグネシウムを作るには、超高純度の無水塩化マグネシウムMgCl2が必要です。超高純度の無水塩化マグネシウムを作ることは非常に難しいのです。この問題点をココとお隣さんは、①の方法でできたスポンジチタンと無水塩化マグネシウムの混合物を高真空化で高温で塩化マグネシウムを気体にして分離して、これを冷却して無水塩化マグネシウムにする方法で解決したのです。

    しかし、無水塩化マグネシウムは融点714℃、沸点は1412℃で非常に高く、スポンジチタンに付着している塩化マグネシウムを気体にして取り除くのは高真空化、高温で長時間を要し、非常に手間がかかる方法なんです。

    つまりココとお隣さんのやり方はチタンの付加価値が極めて高い「戦争用チタン」でないと、とても経済的に採算が合わない方法なんです。因みにフツーのやり方では、スポンジチタンに付着している塩化マグネシウムを取り除くには水で洗っているのです。塩化マグネシウムはきわめて水に溶けやすいので簡単にスポンジチタンから取り除くことができます。

    以上のことから、ココとお隣さんのスポンジチタンの製法をよく考察すれば「戦争用」以外の用途は考えられないのです。もちろんこの方法でも不純物が混入して純度が低いチタンができることもあり、一般用にも使われることもあるでしょうけど、あくまで戦争用チタン製造が主力なんです。

    日本は資源貧国で、鉱物原料は輸入に頼らなければならないし、電力も高く、労働力も高いですから、他国と同じ方法でチタンを作ってもとても採算があわないのです。日本独特の技術力を最大限に生かして付加価値が高い戦争用チタンしか作っていないのはそのためです。

    >しきちゃんさんが米国にロシアがスポンジチタンを輸出できないと仰っていた根拠

    これは舌足らずの表現でした。ロシアは戦争用と航空旅客機などの一般用のチタンを両方つくってますよ。ですから「戦争用チタン」についての話です。航空機用でもロシアの技術力は世界一で、敵国関係にあるNATO各国をはじめ多くの国にチタンを輸出しています。

    因みに、冷戦時、経済力では米国の5分の1もないソ連が米国に対抗できたのは、航空宇宙分野でソ連の技術力は米国を凌駕していたからです。スターリンがもっとも力をいれていたのがチタン製法と加工技術だったそうです。これは現在でも変わりません。最近、米国防省は『米国製の戦闘機はロシア製には敵わない』と公式に述べているんです。