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AGC(株)【5201】の掲示板 2020/06/04〜2020/09/18

(そこが知りたい)医薬品事業なぜ拡大 化学から派生、対コロナへ AGC社長 島村琢哉氏
2020/7/30付日本経済新聞 朝刊 15面 コラム欄:そこが知りたい:医薬品事業なぜ拡大:化学から派生、対コロナへ
AGCが医薬品事業を成長の柱に据えている。相次ぐ買収や大型投資で医薬品の受託製造を拡大し、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬候補の製造も始める。主力のガラス事業への依存を脱却するため医薬品を選んだのはなぜか。島村琢哉社長に聞いた。
――ガラスメーカーが医薬品の製造受託を手掛けているのはなぜですか。
「ガラスの原料を自社で調達するために始めた化学品事業がきっかけだ。化学の合成技術は医薬にも応用できる。1980年代に製薬会社向けに抗菌剤用の化学物質の受託製造をし、治療薬向けなどに品目を広げてきた。主力のガラスは安価な中国製品が増えて収益性が低くなった。新たな事業の柱をつくるために医薬品を中心に多角化を進めている」
――企業買収などで規模を積極的に拡大しています。
「バイオ医薬の受託製造のノウハウのある海外企業の買収を進めてきた。17年には米国のバイオ医薬品関連企業を買収した。特に今後の成長が期待できる動物細胞を用いた受託製造のノウハウを取得するためだ。生産能力拡大のためスペインや米国で既存メーカーの工場買収も進めている。6月には英アストラゼネカの工場も買収した」
――新型コロナのワクチンや治療薬候補の受託製造も始めます。
「新型コロナの影響で受託製造の商談が増えている。治療薬候補などの大量生産にも対応できる体制づくりを進めている。医薬品が中心のライフサイエンス事業は25年12月期に19年12月期に比べて6割増の売上高1000億円という目標を掲げていたが、2年ほど前倒しで達成できる見込み。足元でも医薬品がけん引して20年1~3月期の連結営業利益は223億円と前年同期比7%増えた」
――受託製造は競合も増えています。
「受託製造は製薬会社が生産を外部委託することが増え、大規模な生産設備を持たないバイオベンチャーからの案件も多く成長率が高い。より良い製造手法の提案で他社と差別化したい。遺伝子治療薬のような先端的な分野にも進出する。その分野の技術を持つイタリア企業を買収する」
――主力のガラス事業はコロナ危機で受注が減っています。
「特に自動車向けが厳しい。3月半ばから欧州向けは出荷がゼロになった。建築用も大幅に落ちている。事業の選択と集中が必要になる。20年末にセントラル硝子と国内の建築用ガラス事業を統合し、重複する拠点の集約も進める」
■ガラス事業不振、構造改革も必須
新型コロナの治療薬などを巡る医薬品業界の競争は苛烈だ。海外では韓国のサムスングループも新興企業が開発した治療薬候補の量産に向け、受託生産を決めた。受注するには一定の生産能力が必要で、工場の新設など先行投資がかさむ体力勝負のビジネスだ。
AGCは20年までの3年間でM&A(合併・買収)などに使う投資枠を2000億円設けたが、医薬関連の買収で既に使い切った。ガラス事業の不振で1~6月期の連結営業利益は前年同期から半減したようだ。医薬に投資し続けるには主力事業の構造改革も急ぐ必要がある。