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日油(株)【4403】の掲示板 2023/08/02〜

2024年3月25日化学工業日報
日油は、核酸医薬品向けドラッグ・デリバリー・システム(DDS)原料のパイロットプラントを愛知事業所(愛知県武豊町)に整備した。製造するのは機能性脂質で、製薬企業の研究開発用途への供給からスタートし、開発ステージの進展とともに事業規模の拡大を見込む。たんぱく医薬品向けポリエチレングリコール(PEG)修飾剤などの増強投資が進行するなか、市場拡大が期待される核酸医薬向け脂質の芽も育むことで、ライフサイエンス事業の持続的な成長につなげていく。
パイロットプラントには、溶剤タンクや脂質を濃縮する濃縮装置などを導入。核酸医薬において、核酸などの有効成分を内封し、細胞内の標的RNAに届けるキャリアであるDDSの脂質ナノ粒子(LNP)用の脂質を生産する。現段階では供給先の欧米の製薬企業を中心とするユーザーの開発ステージは研究開発の初期段階が多いが、今後のユーザーによる臨床試験への進展を見越し、GMP(適正製造規範)体制の整備も進めていく。
DDS原料の規模拡大は、ユーザーである製薬企業などの開発ステージの進展と連動するため長い時間がかかる。現状でこそ、たんぱく医薬向けのPEG修飾剤などの上市された医薬品向けの売上構成比率はDDS原料全体の6~7割に高まっているが、PEG修飾剤の製造を開始したのは2005年だ。沢村孝司社長はLNP用脂質について「臨床試験のステージが増え、26年度から始まる中期経営計画期間中に事業として形になれば」と期待を込める。
愛知事業所では、川崎事業所(川崎市)のDDS工場の高稼働を背景にPEG修飾剤の増強を中心とする投資額100億円超の工場建設が進行中。24年度下期の稼働を予定している。DDS原料を含むライフサイエンス事業を30年までの成長牽引役の一つに位置づけるなか、PEG修飾剤の需要増に応える能力増強とともに、次世代医薬品として期待される核酸医薬向けの素材供給が始まるのは、DDS事業にとっても小さくない一歩と言える。
DDS原料は、80年代には油脂の知見を応用したリポソーム医薬品向けリン脂質の供給を始めていたほど、研究開発や品質管理、製造の長い歴史を持つ。PEG修飾剤のリーディングカンパニーであり、黎明期の核酸医薬向け脂質でもニーズに応える市場開発を加速していく。