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(NEXT FUNDS)NOMURA原油インデックス上場【1699】の掲示板 2020/04/11〜2020/04/12

操業停止に追い込まれるイラクの油田

 原油価格はこのまま長期間低迷を続けるとの見方が強まっているが、はたしてそうだろうか。

 筆者は「新型コロナウイルスの感染拡大により、中東地域の原油生産活動に大きな支障が生ずる」と懸念しているが、その懸念は日を追うごとに現実味を帯びてきている。

 WHO(世界保健機関)は4月2日、「中東地域で新型コロナウイルスの感染者が急増しており、封じ込めの機会が失われつつある」と警告を発した。
中東地域で最も新型コロナウイルスが蔓延しているのはイランである。米国の制裁により原油の輸出量は日量約30万バレル(輸出先はシリアと中国)に激減しており、世界の原油市場に与える影響は少ない。

 筆者が以前から注目しているのは、OPEC第2位の原油生産国であり、日量約380万バレルの輸出量を誇るイラクである。4月2日付ロイターは「イラクの新型コロナウイルス感染者は公式発表をはるかに上回る規模で急拡大している」と報じたが、イランとのつながりの深さが災いしている。イラクの医療システムは、数十年にわたる制裁や戦争などにより限界状態にある。

 昨年(2019年)10月にアブドルマハディ首相が「国内の混乱を招いた」として辞任表明を行ったが、その後、現在に至るまで後継政権ができず、無政府状態が続いている。財源の95%を原油販売代金に依存していることから、直近の原油価格急落でイラク政府の歳入は半減しており、「イラクは内戦勃発の瀬戸際にある」との懸念が強まっている(原油情勢に詳しいニュースサイト「OILPRICE」)。

 イラクの反米武力組織の度重なる攻撃に手を焼く米国政府は4月7日、イラク政府との戦略対話を開くことを明らかにしたが、一向に改善しない治安状況に米国政府の堪忍袋の緒は切れかかっている(4月8日付OILPRICE)。

 イラクでは3月中旬、新型コロナウイルスのせいで南部の油田(日量約10万バレル)が操業停止に追い込まれており、国内の治安悪化もあいまって、今後原油生産量が大幅に減少する可能性が高まっている。

■ サウジ、ラマダン入りで感染大爆発の恐れ

 だがここに来て最も心配な動きを見せているのが、OPEC第1位の原油生産国であるサウジアラビアである。
サウジアラビア保健省は4月7日、「国内の新型コロナウイルス感染者が今後数週間で最大20万人に増加する公算が大きい」とする見通しを明らかにした。サウジアラビアにおける直近の感染者数は3000人強だが、4月下旬にラマダン(断食月)入りすることで感染爆発が起きる恐れがあるからだ。

 宗教行事をきっかけに新型コロナウイルスの感染が広がる例が世界で相次いでいるが、宗教行事の中で最も大きなイベントはラマダンであると言っても過言ではない。サウジアラビアをはじめ各国政府は大規模な集会を避けるよう求めているが、4月下旬から約1カ月続くラマダンはイスラム教徒信仰心が一段と高まる時期である。

 4月8日付ニューヨークタイムズは「サウジアラビアの王室で約150人が新型コロナウイルスに感染している」と驚くべき事実を報じた。中でもリヤド県知事はICU(集中治療室)に収容され、サルマン国王とムハンマド皇太子は紅海の孤島などに避難しているとされている。サウジアラビア王室内の動きが漏れることは少ないが、報道の内容はともかくとしても、新型コロナウイルスの深刻な影響が出ていることが推測できる。

■ コロナ禍が世界の大原油地帯を襲う

 サウジアラビアの新型コロナウイルス感染拡大にさらに悪影響を与えるのは隣国イエメンである。
サウジアラビアが主導するアラブ連合軍が内戦に介入してから5年が経過したが、イエメンでは数万人が死亡し、コレラ流行など深刻な人道危機が起きている。
感染爆発が起きているイエメンから次々と新型コロナウイルス患者がサウジアラビアに押し寄せ、感染者が増えていることは容易に想像できる。この事態に慌てたサウジアラビア政府は4月9日、イエメンの反政府武装組織フーシに対し停戦を呼びかけた。しかし、時すでに遅しである。フーシ側も停戦に応じないとしている。

 サウジアラビア東部の大油田地帯はシーア派住民がマジョリティを占めていることからイランとの往来が多く、一部地域は3月上旬から封鎖されたが、原油の生産活動には支障は生じていないとされている。しかし、イラクに加えてサウジアラビアで新型コロナウイルスが蔓延し、隣接するアラブ首長国連邦(UAE)やカタール、クウェートなどアラビア半島での原油生産にも悪影響が及べば、世界の大原油地帯(日量2000万バレル以上)が新型コロナウイルスのせいで封鎖されるかもしれないのである。