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(株)リクルートホールディングス【6098】の掲示板 2021/11/18〜2021/12/10

リクルートホールディングスは余剰資金を投資に充てる方針を明確にする。好業績でキャッシュが積み上がるなか、成長を見込む採用関連事業のM&A(合併・買収)などに配分する。一方で株主還元では配当性向の目安を撤廃し、1株あたりの配当は足元の20円程度で安定させるとみられる。余剰分を中長期の投資に充当することで利益拡大に弾みをつける。
 IR担当の荒井淳一執行役員が日本経済新聞社の取材に応じ、資金使途に関する転換を明らかにした。M&Aについては「足元で積極的に追求している」と強調する。2020年は新型コロナウイルス禍における事業の立て直しを優先したが、インディードを中核とするHRテクノロジー事業の競争力を高める投資を加速させる考えだ。
 インディードは求職者が企業の求人ページを閲覧する頻度に応じ課金する「クリック課金型」を採用しており、単価は求人情報を掲載する企業による入札で決まる。コロナ禍とその後の経済活動再開に端を発する、人材需給の逼迫を背景に単価が上昇し、利益拡大をけん引している。

 22年3月期の連結純利益(国際会計基準)は前期比97%増~2.1倍の2585億~2785億円を見込む。14年に上場して以来の最高益になる。この立役者がHRテクノロジー事業だ。21年4~9月期の調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は1559億円と、前年同期の約7倍になった。
 人材市場にはなお成長余地があるとみており、攻めの投資を継続する。荒井氏は「我々の持っていないアイデアやソフトウエア、事業の種を取り入れ、既存のサービスに付加価値をつけられるかが判断基準」と語る。

 大型買収に踏み切る資金的な余裕はある。9月末時点の現金・現金同等物は5899億円と5年前の2倍超に達する。フリーキャッシュフロー(純現金収支、FCF)は21年3月期に2462億円と、ここ数年は黒字で推移する。「大きな買収でも自己資金でまかなえるだけの備えはある。不足分の調達方法も柔軟に持っている」と投資への姿勢を強調する。
 積極投資とあわせて、株主配当の方針を今期から変える。前期までは連結配当性向30%程度を目安に、利益に連動する形で配当してきた。荒井氏は「配当性向の増減よりも実額として安定的に支払う」とし、今期以降は21年3月期の20円程度で推移する見込みだ。株主還元額の大きな変動を避けるほか、事業構造をテクノロジー企業にシフトするためだ。
 株式市場における同社の評価は高い。6日の時価総額は12兆円超と、トヨタ自動車とソニーグループ、キーエンスに次ぐ国内4位にある。株価もここ数年でみて高値圏にはあるが、11月15日につけた上場来高値(8180円)からは1割以上低い水準にある。売り材料の一つは、米国事業の失速懸念だ。
 米国は利益の多くを稼ぎ出す主戦場の一つだ。現地では人手不足傾向が続き、利益を伸ばす原動力となってきた。ただ、米国市場で今後求職者が戻り、人材獲得競争が収束すれば、利益に与えるインパクトが大きい。荒井氏も「来期も働き手がマーケットに出てくるかどうか読めない」と認める。
 そのような環境下で投資マネーを一層呼び込むには、人材関連事業を核とした成長戦略の明確化が欠かせない。国内事業の立て直しも急務だ。決済やPOS(販売時点情報管理)レジなどのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業をけん引役として位置づけ、採算改善を急ぐ。
 捻出した利益の使い道を配当ではなく投資に配分できるのは、現在の好業績があってこそだ。思うような成果が出なければ、投資家から還元強化を求める声が強まるのは必至だ。取り組みの成否は中長期的な株価を大きく左右しそうだ