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全値戻協会本部~南無全値戻心経~の掲示板

30年後に銀行はあるか
2019年7月19日 2:00
大機小機

PBR(株価純資産倍率)は、株価を1株当たりの純資産で割った数値である。これが1であれば、株価とその会社の解散価値が等しいという意味になる。最近の東証1部上場企業のPBRは製造業が1.1倍、非製造業は1.4倍である。問題はPBRが大きく1を割っている場合だ。とくに0.5以下となると、市場はその企業を、簿価の半分以下の価値にしか見ていないことになる。

実はPBRが0.3の業種がある。もはや上場している意味はなく、市場から見捨てられているといっても過言ではない。銀行業だ。

銀行業、とりわけ地方銀行の経営環境は厳しい。貸し出し需要が伸び悩む中、長びく超低金利は欧米のように調達コストの低下をもたらさず、収益力を奪っている。預貸業務が構造不況に陥っているため、高リスク融資に乗り出さざるを得ない。加えて、ハイリスクの有価証券運用に頼る構造が定着している。

地銀の再編への動きは、むしろ遅きに失した観すらある。再編統合で先行した旧都市銀行は、13行から4グループに集約された。「金融革命」に見舞われた1980年代の米国では、毎年数百の貯蓄金融機関が淘汰された。いずれも金融の市場化、自由化と技術革新が大きな原因だった。

現下の地銀を襲う外部環境の変化の中でも、とくに大きい要因は桁違いのレベルの技術革新である。金融革命は高度コンピューター技術のなせる業といわれたが、今後はこれよりはるかに高い次元の革新が、金融業の在り方を変えていく。フィンテックと称される金融関連技術は、金融の概念自体を一変させそうだ。

その中心は「中抜き経済」、つまり仲介者を不要とするモデルである。金融取引のネットワーク化が、集権ではなく分散によって進んでいくと、仲介者は不要になる。資金の需要者と供給者が直接対峙できれば銀行はいらない。

さらに、現段階では問題が多い暗号資産(仮想通貨)だが、今後劇的に安全性と信頼性を高めれば通貨の概念そのものが一変する。これは物々交換経済から貨幣経済への移行に相当するインパクトを持つと思う。

地銀が統合を取り沙汰するうちはまだ牧歌的。30年後に銀行は存在するか、という問いかけこそ必要な時代ではないか。