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金融崩壊の掲示板

トランプが作る新しいSNSが1千億円以上を調達 しかし中国企業の関与などの疑惑深まる
1/30(日) 11:12配信
ニューズウィーク日本版

──トランプのメディア会社が、SNSを立ち上げることを発表した。しかし、中国企業の関与などの疑惑深まっている......

トランプが作る新しいSNSはどうなるか......

■ 根強いトランプ人気

昨年1月6日の議事堂乱入事件をきっかけにトランプはフェイスブックやツイッターのアカウントを凍結されているが、その前はフェイスブックで3,500万人、ツイッターで 8,800万人など各種SNS合計約1億5,000万人のフォロワーを持つ世界で最も注目されている政治家だった。しかし、アカウントの凍結後、これらSNSでトランプの名前が出るのはおよそ88%も減少した。

あの事件から1年経ってトランプの好感度は下がっておらず、上がっていた。FiveThirtyEight.com のアメリカ世論調査ではトランプに否定的なアメリカ人は約52%で肯定は43%と、9ポイントの差があった。その差は1年前には20ポイントだったことを考えるとかなりよくなっている。

一方、フェイスブックやツイッターなどはトランプを失ったことによるエンゲージメント数や利用者数への影響はほとんどなかった。フェイスブックはトランプの政治活動に販売したおよそ2億円以上の広告収入、トランプに言及した100以上の政治家やグループなどからの約11.5億円を失った可能性があるが、同社の莫大な売上に比較するとささいなものだろう。

アカウント凍結の前からトランプは数億円を投じて5,000万人ものトランプ支持者のリストを作っており、このリストを利用して1年間で56億円以上の寄付を得ていた。トランプを支持する人々はいまだに多数存在している。

■ トランプの新SNS Truth Socialは2月21日リリース?

大手SNSから追放されて以来、トランプはこれまで特定のSNSに深く関わることを避けて、近しい人物からのオファーも断ってきた。そして、2021年10月に、自身のメディア会社Trump Media and Technology Groupで、Truth Socialという新SNSを立ち上げることを発表した。

その発表直後、まだ未公開だったTruth Socialのサイトが何者かに発見され、豚の排泄画像を投稿されるなどのイタズラをされ、サイトはオフラインに戻った。また、その未公開のサイトのコードにはオープンソースMastodonのコードを利用していた可能性があり、Mastodon創始者はライセンス違反の可能性を指摘している。

Truth Socialはすでにアプリストアで予約を受け付けており、Truth Socialのサイトにはアップルストアのプリオーダーへのリンクがある。ただし、アメリカのストアのみのようである。リリース予定日は2月21日だ。

Truth Socialはツイッターの対抗馬と考えられているため、ツイッター社の株価にマイナスの影響を与えている。Truth Socialは、ツイッター利用者の多い日本でも多数の利用者を獲得するかもしれない。

■ 1千億円以上を調達するトランプの新会社と中国企業の関係

Trump Media and Technology GroupはSPAC(特別買収目的会社)という仕組みを利用して上場する予定であり、その際に1千億円以上の資金を得ることになっている。まず、SPACによって約300億円、その後の資金調達でおよそ1千億円以上だ。1千億円の資金提供者集めにトランプは奔走し、多くのヘッジファンドや投資会社にコンタクトした。ミレニアム・マネジメント、ハドソン・ベイ・キャピタルなどは断り、ペントウォーター・キャピタルやサビー・マネジメントは合意した。その結果、36の投資家から千億円以上の資金を調達できることになった。

SPACは、「上場後に有望な企業を買収する」ことを目的に起業した企業が上場して資金を集め、その資金で上場後に有望な企業を買収するという仕組みだ。有望な新興企業は上場準備の手間と時間を節約することができ、資金調達できるメリットがある。アメリカでは近年SPACを利用して上場する企業が増加している。今回、Trump Media and Technology Groupは、Digital World AcquisitionというSPACに買収されることになっている。Digital World Acquisitionの公開時の株価は10ドル程度だったが、Trump Media and Technology Groupの発表によって90ドル以上に跳ね上がり、今年に入ってアメリカ株式が下落する中でも60ドル前後と6倍の値をつけている。アメリカにおけるトランプへの注目度の高さがうかがえる。

しかし、Trump Media and Technology Groupの買収には暗雲がたちこめている。Digital World Acquisition社が上場の際にTrump Media and Technology Groupと買収に関する話し合いを持っていたことを開示していなかったことが問題となって、アメリカ証券取引委員会(SEC)が調査を行っているのだ。

また、上海に拠点を持つArc Capitalという中国企業の関与も問題視されている。同社はDigital World Acquisitionの設立を支援し、今回の買収にも関わっていた可能性が疑われている企業であり、ウォール街では悪い意味で注目されている企業である。

2017年にアメリカ証券取引委員会に同社が関与する企業3社の上場を「重大な虚偽の記載」を理由に差し止めた。過去10年間に数百の企業が上場したが、「重大な虚偽の記載」を理由に上場をアメリカ証券取引委員会が上場を止めたのはたった35件だった。

また、ウェブサイトにはモルガンスタンレー、ゴールドマン・サックス、PwC、KPMGなどの有名企業の戦略パートナーとなっていることが記載されていたが、これらの企業は関係を否定している。

以前、「アメリカの顔をした中国企業 Zoomとクラブハウスの問題」で見えない形でアメリカ国内に広がっている中国企業をご紹介した。金融業界にもArc Capitalのように入り込んでいる。

Trump Media and Technology Groupが調達する資金のほとんどは今回の買収が完了しなければ手に入らない。前途多難だが、もし無事に買収が完了すれば1千億円以上の資金を持つ新しいSNS企業が誕生することになる。その規模も目的も脅威だ。そして、ツイッターの対抗馬として日本に上陸してくる可能性は少なくない。

一田和樹