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>>143

 それでも日銀が2%物価目標を掲げ続ける最大の理由は、それがグローバル・スタンダードだからである。実際、日銀が「点検」の付属文書として公表した52ページからなる「背景説明」は、2%物価目標が適切でありグローバル・スタンダードであるとの説明から始まっている。

 すなわち、「インフレは2%程度が望ましく、かつそれは金融政策で達成できる」という政策思想が、経済学界を中心にグローバルに形成されており、それを多くの海外中央銀行が実践しているのである。その政策思想が日本の現実と折り合わない点は、日銀にとっては不幸であった。

 近年の中央銀行には説明責任が強く求められる。目標を10年間達成できない理由を説明するのも大変だが、グローバル・スタンダードに従わない理由を説明するのはそれ以上に大変な面がある。

 本当は日本発で新たな政策思想を構築し、今のグローバル・スタンダードがすべてではないことを世界に発信できれば一番良いが、日本のアカデミズムからそのようなエネルギーが沸き上がる気配はない。日本の現実がグローバル・スタンダートに合うように変化する可能性も低い。

 だとすれば結局、海外でも低インフレ環境が当たり前になって、グローバルな政策思想そのものが変化するのを待つしかない。ただ、これも仮に起こるとしてもだいぶ先のことになりそうだ。

 こうした袋小路から脱する良い戦略は今のところ見当たらない。だからこそ日銀は3月の「点検」で、異次元緩和を長く続けても致命的な問題が起きない工夫をするしかなかった。しかし、ETF買入れやマイナス金利を出口なく続けること自体に、問題が残っていないとは思えない。いずれ次の「点検」もあるとみておくべきだろう。

■門間 一夫( みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミスト)