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DRAM大口、1年5カ月ぶり下落 PC・スマホ不振で

半導体メモリーの一つ、DRAMの9月の大口取引価格が、1年5カ月ぶりに下落した。国内外でパソコン(PC)やスマートフォンの実需の鈍さが意識された。中国のDRAM大手が大型投資を検討しているとの観測もあり、先安観を警戒する声もある。生成AI(人工知能)向けの需要は引き続き強いものの、業界内では「潮目が変わった」との声も聞かれ始めた。

DRAMはPCやスマホ、データセンターのサーバー機器などに組み込んでデータの一時保存に使うメモリーだ。大口取引価格は売り手のメモリーメーカーと、買い手のデバイスメーカーやモジュールメーカーが月ごとや四半期ごとに決める。

9月の大口取引価格は、指標となるDDR4型8ギガ(ギガは10億)ビット品が1個2.04ドル前後だった。容量が小さい4ギガビット品は同1.57ドル前後。いずれも前月比で3%安い。前月比での下落は1年5カ月ぶりだ。

  • >>13284

    DRAMは、約50%がPCとデータセンターのサーバー機器、約35%がスマホ向けとされる。個人向けを主とするPCやスマホの需要が振るわず、値下がりで価格交渉が決着した。米調査会社IDCによると、2024年7〜9月の世界パソコン出荷台数(速報値)は6880万台で前年同期から2.4%減った。

    DRAMは韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーが大手3社で、台湾の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)、華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)などが後を追う。

    大手3社は指標品のDDR4型の次世代品にあたるDDR5型のほか、DRAMを積層してつくる、生成AIの駆動に必要な「広帯域メモリー(HBM)」の生産にシフトしている。「2024年12月期決算を前に、大口取引価格を下げて手元のDDR4型の在庫を減らそうとする動きもある」(エレクトロニクス商社の担当者)ようだ。大手4位以下の企業も価格を下げて対抗しているとみられる。

    PCやスマホに組み込まれるDRAMは現状、DDR4型とDDR5型が混在している。一部では「来年あたりに、DDR4型の生産を止めるのではないか」(別のエレクトロニクス商社の幹部)との見方もあった。

  • >>13284

    加えて、中国のDRAM大手が大型投資を検討しているとの観測も業界内で流れており、供給量の増加に伴うDRAM相場の先安観を警戒する声も聞かれる。

    前述のエレクトロニクス商社の担当者は「中国は半導体の内製化を進めており、同国の一部企業は供給枠をすでに確保している」と明かす。日本のある半導体製造装置メーカーは「DRAM用製造装置は、中国を含む海外向けの需要が増えている」と話す。

    英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは、「中国企業は米国の規制により装置が買えるかどうかわからない状況」としながらも、「仮に購入可能であるとすれば、供給量の増加により、将来的なDRAM価格の低下につながる可能性がある」と予測する。

    生成AI向けのHBMの引き合いは変わらず強いものの、米半導体大手エヌビディアの次世代画像処理半導体(GPU)の生産が遅れる点が懸念されている。

    HBM市場ではSKハイニックスとマイクロンが、HBMの第5世代に相当する「HBM3E」を最大顧客であるエヌビディアに出荷している。仮に、エヌビディアの次世代GPUの投入が遅れるなかでサムスンもHBM3Eの納入を始めれば「エヌビディアの手元にHBMがとどまる状況が続き、供給過多になる可能性があるだろう」(前述のエレクトロニクス商社の担当者)との声もある。