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その他☆の掲示板

■大卒後、最初の仕事はアナリスト 業績予想に自信

 大学卒業後に入社した大和証券での最初の仕事はアナリストでした。任天堂とかセガ・エンタープライゼス(当時)などいろんな会社を回り、業績予想をまとめました。アナリスト時代は株式の売買はしませんでしたが、業績予想にはかなり自信を持っていました。

 個人として投資を始めたのは、米国留学と大蔵省財政金融研究所への出向を経て店頭デリバティブ部門に異動してからです。分散投資の理論にもとづき、景気敏感の証券株、景気に左右されにくいディフェンシブの公益株、それにアジア株の投資信託を保有しました。

 自分は元アナリストだし、デリバティブも多少わかっているし、教科書通りにやれば勝てると考えていました。価格の変動幅を示す標準偏差(リスク)や過去何年かのリターンを自宅のパソコンに入力して分析しました。同じリスクで最も高いリターンが期待できる「効率的フロンティア」を構築し、自分のポートフォリオがいかにいいのか満足していたわけです。

■アジア危機で資産目減り、妻に「プロってそんなもの?」

 そこにアジア通貨危機が到来しました。株価急落でポートフォリオの資産価値も下がりましたが、市場平均は上回っていました。市場平均が10%下がっても自分は8%程度。プロの世界ではそれでよしとしますので、それを妻に話したら「それでもマイナスよね。証券アナリストってそんなもの?」と言い返されました。

 そのときはかなりアタマにきたわけですが、確かに負けは負け。「プロの常識は非常識である」ことに気づき、絶対リターンをプラスにする運用を追求しようと決心しました。自分がその道で食っているのに、投資家に役に立つアドバイスをできていないのはかなりふがいないとも思いました。

 それから本格的に投資を始め、実際に自分でいろんな運用を試しながら、失敗の原因を解明しました。「手がね」を突っ込むとわれわれの業界ではいうんですけれど、自分のお金で投資するときと他人のお金のときとは全然違います。

 たとえば業績のいい、PERが低い地味な会社に投資する、割と教科書に出てくるような投資法は意外にもうかりませんでした。相場の流れが反転しつつあるときは株価が先に落ちても業績はまだ落ちないのでPERが低く見えます。ところがそこで買うと業績が悪くなってPERが急上昇するのです。

  • >>2

    ■投資始めて常識覆る、国際分散投資も万能ではない

     国際分散投資も万能ではありませんでした。世界経済がグローバル化するとマーケットが同じ方向に動きやすいためです。いったんクラッシュしたらそれまで個別株の成績がいくらよくても一気にもうけが吹き飛びかねません。だから個別株投資は全体の流れを見ないと大けがをするということも学びました。

     いろいろ考えたところ、結局経済学にしても投資理論にしても第2次世界大戦ちょっと前の、せいぜい70年とか80年の歴史しかない。しかもアメリカ株が前提です。日本みたいにバブルが崩壊して人口が減って、20年間株が下がりっぱなしという状況では長期投資は難しいとも実感しました。

     とはいえ、相場にはサイクルというものがあります。「大底で買い天井で売る」ことができればもうかる。この点については多くのプロもあきらめている人が多い。あきらめたらプロではありません。それはわたしからいわせれば人のお金だから。自分のお金だったら、あきらめないでしょうと。

    ■個人投資家の目線でアノマリーに注目

     それから個人投資家の目線で何が投資手法として有効なのか真剣に考えました。結論の一つが相場のアノマリーです。日本は1960年代以降、いざなぎ景気、列島改造ブーム、株・不動産バブル、ITバブルとかだいたい7年から10年ごとにバブルの生成と崩壊を繰り返してきました。

     投資は勘で考えてやるとたいてい負けますが、個人投資家が勝つためには7~10年のサイクルをアタマに入れたうえで、局面をうまくとらえて行動することが必要です。まず相場がどんどん上がる期間。これは誰でももうかる相場です。いまでいえば2012年の終わりから、14年の半ばぐらいまで。投資家には少し上がっただけで利食いをしてしまう人がいますが、これだと大きくもうかりません。利食いは我慢し利益をいかに伸ばすかがポイントです。

     次にどこで下りるか。神様でもない限り最高値の水準で売るのは不可能です。自分が考えたのは相場が上がってきてちょっと落ちたところ。つまり、高値から少し下がった水準で売ることです。ここでいかに下りるかが勝負で、これをひたすら研究しました。