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コラムの掲示板

加谷 珪一 :

企業にとってはコスト増加要因、国内で販売する製品の価格を高く。
円安は物価高を加速させる作用。

値上せずに物価高に対応、企業は輸入コストの増加分をコスト削減で補おうとするため、賃金に対して下落圧力。

価格に転嫁できなければ、企業の利益が減少し、最終的には賃金も上がらず、国内の消費が冷え込む。今の日本経済はインフレに円安が加わり、しかも低賃金という状況ですから、スタグフレーションに陥りやすい環境。

日本の経常収支。国の最終的なお金の出入りを示す指標

経常収支は 主に貿易収支(輸出額から輸入額を差し引)
と投資収益(所得収支)の2種類


2005年には、所得収支の黒字が貿易黒字を上回り、日本は名実ともに輸出ではなく投資で稼ぐ国に変貌しました。

ところが近年、急激に進んだ全世界的な物価上昇の影響で輸入金額が増大し、所得収支の黒字では貿易赤字をカバーできないケースが出てきたのです。

2022年1月の経常収支はさらに悪化し、1兆1887億円の赤字となっています。もし通年で赤字となった場合、第2次オイルショックの影響を受けた1980年以来の出来事となります。
経常収支が赤字の国は、基本的に通貨が売られやすくなりますから、当然、一連の変化は円安要因です。

輸出が弱くなったのは、日本企業の競争力低下に原因があり、すぐに改善することは不可能です。また、原油や食料の価格が上がっているのは世界経済の動きによるものですから、日本側の努力で何とかなるものではありません。そうなると、日本の経常収支を短期的に改善するには、円安がさらに進み、輸出の増加を期待することがもっとも近道となります。

日本メーカーは、円が大幅に安くなれば、国内の人件費も相対的に安くなりますから、中国など海外で生産していた製品を国内生産に戻すという選択肢が出

仮に1ドル=150円程度まで円安が進むと、中国のULCは日本の1.2倍、過去の経験則から、ULCの差が1.2倍以上に拡大すると、企業は生産拠点の変更を決断しやす
企業の生産が国内に戻れば、輸出が増加し、実需での円買いも復活するので、円安が止まる可能性。

時間はかかるものの、企業もインフレに適応し、やがて賃金も上がっていくことが予想されます。