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ネット小説大賞 ヤフー株板編
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ネット小説大賞 ヤフー株板編の掲示板

 高校教師
 三  
 それから二〜三日は学校へ行っても誰かに見られていなかったか?誰か自分のウワサをしていないか? と、気になって仕方がなかった。だがどうやらそんな様子は無かったようなので安心して、また『ユキ』へ出掛けた。あの時は何事も起きなかったが、その気になれば雪乃を抱くことも出来た筈だ。だが、そんな素振りを見せる事は出来ず、今まで通り謹厳実直な教育者のふりをしていなければならない。
 「息子さんは何年生だったかしら?」
 「それが・・・今は三年生で、今度大学受験なんだよ。地元の大学へ行ってくれれば安上がりなのだがどうやら東京へ行きたいらしい。勉強というより、東京には遊びに行くところが沢山あるから、とにかく東京の学校ばかり、ここを受けようかあそこにしようか、などとほざいているから困ったもんだ」
 「まあまあ、先生の息子さんだから勉強は出来るんでしょう?しばらくはお金が掛かるかも知れないけど将来が楽しみね」
 「どうかな、いい学校へ行ったからと言って、お金をしっかり稼げるようになるとは限らないし、まあ、人に迷惑をかけず、みんなから頼りにされるような人になってくれればいいと思っているんだがね・・・・そんな事より、私は君のことが心配だよ。まだ若いのにいつまでも一人でいる訳には行かないだろう。私がもし家族のいない一人ものだったら、喜んであの大きな家に押しかけて行くんだがなあ」
 「有難うございます。実家からも話が無いわけでは無いんですが、みんな子供が一人か二人いる人ばかりで、今更そんな古い家の後妻に入るのはどうも気が進まないんです」
 「そうだろうな、いや、よく分かる。そういう家の子が君に懐いてくれるとも限らないし・・・・どうかな、この店を畳んで会社勤めをすれば、いい人と巡り会えるかも知れないと思うんだがね」
 「そうかしら、店を畳むのはちっとも構わないけど、こんなおばさん雇ってくれるところって、ありますかしら」
 「それはまあ、給料は欲張っては駄目だけど、人の出入りの多い堅い会社なら、いい出逢いの機会もあると思うのだが・・・・」
 「そうね、どこかいいところがあったら紹介してくださいね」
 「分かった。教え子がやっている会社がいくつかあるから聞いてみるよ。だけどそうすると、私の飲みに行くところが無くなるのは困ったなぁ」

  つづく