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Achilles Last Standの掲示板

>>53

「スラムダンク」「美少女戦士セーラームーン」といった日本アニメを見て育った中国の子どもは00年代に大学生になった。インターネット上に動画サイトが立ち上がり、エヴァンゲリオンや鋼の錬金術師に夢中になる若者が増えた。その一部は日本の動画制作の下請けなどで腕を磨く。

中国オタク文化に詳しいMYCJapan(東京・千代田)の峰岸宏行氏は「10年代以降はクリエーターらの独立起業が相次いでいる」と指摘する。miHoYoも上海交通大学でアニメやゲームの趣味を謳歌した3人が12年に設立した。「崩壊学園」シリーズをヒットさせ、原神は開発や広告宣伝に1億ドル(約110億円)の巨費を投じたとされる。一気に世界市場の開拓に打って出たのだ。

中国ゲームの海外売上高は154億ドル(約1兆7000億円)に達する。世界のスマホゲーム勢力図もこの5年で塗り替えられ、トップ10は原神など中国勢が4本を占める。16年はミクシィの「モンスターストライク」が世界一、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」が7位だったが、日本市場だけで大ヒットしてもランキング上位は狙えなくなってきた。

世界最大のゲーム市場を抱える中国勢がグローバル志向を強める一方、日本のスマホゲーム会社は内弁慶のビジネスモデルを変えられなかった。「パズドラ」は欧米やアジアに展開したが、日本のようにキャラクターを手に入れる電子くじ「ガチャ」の高額課金を受け入れるヘビーユーザーは限られる。賭博性のあるガチャは各国の法規制にも阻まれた。

パズドラは17年に中国での配信を終了した。ガンホーの森下一喜社長は「世界で勝負するなら、はじめから世界水準で作らないと受け入れてもらえない」と振りかえる。それでも固定ファンのいる日本国内ではパズドラもモンストもそれぞれ不動の稼ぎ頭であることは変わらない。

「巨費を投じて新作を出してもヒットするか分からない」「ヒットしても旧作と自社競合しかねない」――。日本のスマホゲーム草創期の成功体験はいつしか内向き思考に変質し、お家芸だったはずのオタク系ゲームも中国から逆上陸されてしまった。

ソフトパワーはネットを介して軽々と国境を行き来する。日本市場に最適化されたビジネスモデルに閉じこもっていては、足をすくわれかねない。

  • >>54

    世界のゲーム市場ではスマホなどモバイルの伸びが著しく、15年についに家庭用ゲーム機を抜いた。miHoYoは30日開幕の東京ゲームショウにも出展する。原神はすでに日本市場の収益ランキングでも上位に浮上している。ここで巻き返せなければ日本のコンテンツ立国は遠のく。

    中国のゲーム業界は同国政府による規制強化に直面している。「ゲームは精神のアヘン」。8月、国営新華社系の経済紙がゲーム業界を厳しい論調で批判した。若者のオンラインゲーム依存を防ぐため政府は同月末、未成年のプレーを週末や祝日の午後8~9時に限定する措置を発表した。

    立命館大学の中村彰憲教授は「政府はゲームで子どもが勉強しなくなることを問題視している」と指摘する。未成年のオンラインゲームは19年からプレー時間が平日1時間半、休日3時間などに制限されてきた。それでもテンセントの「王者栄耀」などの人気が高まるにつれ、ゲーム依存は大きな社会問題になっていた。

    中国のゲーム会社が世界展開を強く志向するのは、自国市場の政治的リスクの裏返しでもある。9月、香港紙は「中国政府がオンラインゲームの新作発売の審査を一時凍結する」と報じた。作品表現や未成年のプレー時間にとどまらず、ゲーム事業そのものの是非が問われかねない空気が漂う。

    上に政策あれば、下に対策あり――。中国のゲーム会社にとってグローバルに通用するゲームを開発して米国や日本の大市場を開拓することは、企業としての生き残り戦略といえる。国家間の対立が先鋭化している米国に比べると、日本はとりわけ有望な市場に映っているはずだ。中国のデジタル世代がゲーム業界の主役になる日は近いかもしれない。