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米企業への半導体供給が危機的状況、米商務省調査
1/27(木) 16:01配信
JBpress

 米商務省は1月25日、米国の製造業などの半導体の需要家が持つ重要半導体の在庫が5日分を切る水準にまで落ち込んでいるとする報告書を公表した。

■ 在庫日数、わずか5日未満

 ジーナ・レモンド商務長官は声明で「米国のサプライチェーンは依然として脆弱だ」と述べ、「できるだけ早く半導体産業に補助金を投じるための法を成立させることが重要だ」と訴えた。

 調査結果によると、製造業など半導体の需要家の在庫日数(中央値)は2019年時点で40日だった。これが21年9月には5日未満分に減った。海外の半導体工場が2~3週間閉鎖された場合、米国製造施設の在庫が3~5日分しか確保できていなければ、操業停止や従業員の一時帰休を余儀なくされる恐れがある、と指摘している。

 また、21年の米国内半導体需要は19年に比べて17%高まった。一方で世界の半導体工場の大半は21年に90%以上の高い稼働率で生産した。つまりこれ以上の大幅供給増は、新たな製造施設を作らない限り不可能だということが分かった。

■ 供給リードタイム、2倍に

  米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、半導体の、生産開始から納品までの供給リードタイムは通常84~182日だが、 一部の主要製品では21年後半までに103~365日と、最大2倍に延びた。

 レモンド商務長官は記者団に対し、「私たちは困難から脱する段階にも近づいておらず、生産量を増やすことができるまで、この状態が続くことになる」と述べた。

 米商務省は21年9月から、半導体の需給状況を把握するために世界の主要企業に詳細なデータを求めてきた。対象となったのは、供給側の素材、機器、半導体メーカーのほか、需要家側の自動車、工業製品、医療機器メーカーなど多岐にわたる。

■ 背景に法案審議の行き詰まり

 米議会上院は21年6月、米国の製造業と技術に約2500億ドル(約28兆5100億円)を投じて競争力強化を図る「米国イノベーション・競争法案」を可決した。バイデン米大統領はかねて、国内の半導体生産増強に520億ドル(約5兆9300億円)を投じると述べていたが、同法案はこの政策を盛り込んでいる。

 一方で下院でも同様の法案が通過した。だが、下院の法案は半導体産業への補助金を含まない。上院と下院の法案には隔たりがあるため、両院で意見調整して内容を一本化する必要が生じている。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルの別の記事によると、下院では審議が行き詰まる状態が続いている。

 民主党議員の多くが、経済格差や気候変動への対策など、より広範な社会的目標に対処する法案を望んでいる。これが、下院で審議が行き詰まっている一因だという。

 米商務省の報告書はこうしたタイミングで公表された。レモンド商務長官は、「半導体の需要が急増する中、既存の製造施設はすでに最大限に活用されている。この危機を長期的に解決する唯一の方策は、国内半導体製造体制を再構築することだ」と訴えた。

 (参考・関連記事)「テスラはいかにして世界的半導体危機を回避したのか | JDIR」

小久保 重信