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私と経済の掲示板

量子計算機、12社共同利用 トヨタ・三菱ケミが素材開発

トヨタ自動車など大手企業12社が次世代の高速計算機、量子コンピューターの実機の共同利用に乗り出す。米IBMが近く日本で初めて稼働させる「商用機」を用い、産業用途での実用化へ協力して知見を蓄積する。トヨタや三菱ケミカルは新素材の開発などでの活用を想定する。超高性能の次世代計算機の活用でリードできるかどうかは将来の産業競争力や国の安全保障戦略を左右する。

IBMが川崎市の産業育成拠点「かわさき新産業創造センター」に持ち込む最新鋭機を利用する。汎用性が高く、主流になると目される「量子ゲート方式」の装置だ。7月中にも稼働する。米国外への設置はドイツに次ぐ2例目となる見通し。

東京大学が占有権を持ち、同大が中心となってトヨタなどと2020年に設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」が利用主体となる。一般的に量子コンピューターの導入は数十億円規模がかかるとみられるが、協議会の参加企業が費用を払って使う。

量子コンピューターの機能を検証すると同時に、既存のコンピューターとは異なる専門知識や使いこなし方のノウハウを蓄積する。協議会には日立製作所、東芝、ソニーグループなども名を連ね、慶応義塾大学も参画する。

IBMは量子コンピューターの利用を早期に広げるため、日本企業とも協力・連携しながら活用策の発掘などに取り組む狙いがある。

  • >>22043

    産業応用の有力分野の一つは化学だ。シミュレーションを通じ、画期的な素材の創出が期待される。三菱ケミカルは発光ダイオード(LED)や太陽電池を候補に想定。スマートフォンや電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池の数倍の電気を蓄えられるとされる、リチウム空気電池の研究にも取り組む。

    量子コンピューターは膨大な組み合わせの中から最適解を見つけるのも得意だ。トヨタは自動運転時代を見据え、車の走行記録のビッグデータを解析して渋滞を回避する走行ルートを導くといった用途も見込む。

    米国では金融業界が利用に積極的だ。ゴールドマン・サックスは4月、金融商品のリスク評価や価格予測を高速化する計算手法を、最短5年後に導入できる見通しだと明らかにした。

    現在の高速コンピューターの主役はスーパーコンピューターだ。量子コンピューターはまだ開発途上で、実用領域でスパコンを上回る成果を出し始めるには早くて3~5年、完成の域に達するには10~20年かかるとの見方もある。

    将来はスパコンでも数億年かかるような計算を瞬時にこなすようになると期待されている。いち早く性能を引き出せれば研究開発(R&D)競争で優位に立ち、産業競争力の底上げにつながる。高度に進化すると現在のインターネット通信を支える暗号を解読する能力を獲得できるため、国家の安全保障にも影響を及ぼす。