ここから本文です
投稿一覧に戻る

私と経済の掲示板

シンガポールと香港、10年ぶり低成長 貿易摩擦響く

アジアを代表する貿易国・地域であるシンガポールと香港が10年ぶりの低成長に苦しんでいる。米中の貿易摩擦の影響で輸出入が低迷しているためで、中国からの生産移管の恩恵を受けるベトナムなどとの明暗が分かれている。

「4~6月期に入って、会員企業が採用を凍結し始めた。半導体の需要が季節的に高まるこの時期は例年、雇用が増えるはずなのに……」。シンガポール半導体産業協会のアン・ウィーセン氏は業界の異変に懸念を示す。米中の貿易摩擦によって世界経済の先行きが不透明な中で、受注先の企業が在庫を抱えたがらず、注文数を絞っているのが生産停滞の理由だという。

12日発表のシンガポールの4~6月期の実質経済成長率は前年同期比で0.1%と、1~3月期の1.1%から伸び率が落ち込んだ。リーマン危機直後の2008年後半から09年前半にかけてのマイナス成長が再来する懸念が高まっており、大手銀のユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は「不況入りの懸念が高まった」と指摘する。

低成長の主因は半導体関連をはじめとする製造業の輸出の不振だ。中国をはじめとするアジアのサプライチェーン(供給網)の主要な一角を占めているが、受注の手控えが打撃になっている。5月の輸出は中国向けが23%減、台湾向けが35%減、日本向けが31%減、香港向けが25%減と総崩れの状態だ。

貿易の停滞が成長率を下げる構図は、国内総生産(GDP)比の貿易額が300%を超える香港も同様だ。モノの輸出が4.1%、輸入が4.7%減った影響で、1~3月期のGDPは0.6%増にとどまった。香港大学は19年の実質経済成長率が1.8%と、18年の3%から大幅に鈍化すると見込む。1月時点では2.8%成長と予想していたが、米中の貿易摩擦の長期化を踏まえ、7月に下方修正した。

香港では貿易摩擦に加え、「逃亡犯条例」改正案をめぐる混乱が景気の足を引っ張るリスクも高まっている。野村国際の野木森稔エコノミストは「香港の小売りは中国人観光客に左右されやすく、デモが長引けば観光関連の需要が落ち込む懸念がある」と説明する。

私と経済 シンガポールと香港、10年ぶり低成長 貿易摩擦響く  アジアを代表する貿易国・地域であるシンガポールと香港が10年ぶりの低成長に苦しんでいる。米中の貿易摩擦の影響で輸出入が低迷しているためで、中国からの生産移管の恩恵を受けるベトナムなどとの明暗が分かれている。  「4~6月期に入って、会員企業が採用を凍結し始めた。半導体の需要が季節的に高まるこの時期は例年、雇用が増えるはずなのに……」。シンガポール半導体産業協会のアン・ウィーセン氏は業界の異変に懸念を示す。米中の貿易摩擦によって世界経済の先行きが不透明な中で、受注先の企業が在庫を抱えたがらず、注文数を絞っているのが生産停滞の理由だという。  12日発表のシンガポールの4~6月期の実質経済成長率は前年同期比で0.1%と、1~3月期の1.1%から伸び率が落ち込んだ。リーマン危機直後の2008年後半から09年前半にかけてのマイナス成長が再来する懸念が高まっており、大手銀のユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は「不況入りの懸念が高まった」と指摘する。  低成長の主因は半導体関連をはじめとする製造業の輸出の不振だ。中国をはじめとするアジアのサプライチェーン(供給網)の主要な一角を占めているが、受注の手控えが打撃になっている。5月の輸出は中国向けが23%減、台湾向けが35%減、日本向けが31%減、香港向けが25%減と総崩れの状態だ。  貿易の停滞が成長率を下げる構図は、国内総生産(GDP)比の貿易額が300%を超える香港も同様だ。モノの輸出が4.1%、輸入が4.7%減った影響で、1~3月期のGDPは0.6%増にとどまった。香港大学は19年の実質経済成長率が1.8%と、18年の3%から大幅に鈍化すると見込む。1月時点では2.8%成長と予想していたが、米中の貿易摩擦の長期化を踏まえ、7月に下方修正した。  香港では貿易摩擦に加え、「逃亡犯条例」改正案をめぐる混乱が景気の足を引っ張るリスクも高まっている。野村国際の野木森稔エコノミストは「香港の小売りは中国人観光客に左右されやすく、デモが長引けば観光関連の需要が落ち込む懸念がある」と説明する。

  • >>12161

    東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3マクロ経済調査事務局(AMRO)の試算では、米中がお互いの国からの全ての輸入製品に25%の関税をかける悪化シナリオの場合、香港のGDPは0.86%、シンガポールは0.65%下押しされる。貿易への依存度が高いため、中国(0.6%減)や米国(0.3%減)よりも悪影響が大きくなる。

    一方、中国の代替拠点として生産移管の効果が見込めるベトナムなどは、貿易摩擦によるプラスの影響の方が上回ると見込まれている。ベトナムの4~6月期の成長率は前年同期比で6.71%と、エコノミストの平均予想を上回る水準だった。