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☆せんちめんたる・じゃーにー☆の掲示板

「水上勉(みずかみ・つとむ)生誕100年」

 京都新聞凡語(ぼんご)の「戦後間もない北海道で起きた、放火殺人事件で刑事に追われる男。時を経て地域の名士となるが、再び殺人を犯してしまう」と読んだところで、これって水上勉の「飢餓海峡」やないの?と思ったら、やっぱり。「ヒャ~水上勉やん!凡語で取り上げてくれてありがとう!と嬉しくなった。生誕100年とは気がつかなかったが。

 「飢餓海峡」に出て来る地域の名士とは、三国連太郎さん演じる樽見京一郎(実は殺人犯の犬飼多吉)、京都府舞鶴市(まいづるし)で成功。三国さんの京都弁が余りにも変で未だに印象にある(笑)水上さんの作品には弱い立場の可哀そうな人物が多く胸を打つ。「湖の琴(うみのこと)」「越後つついし親不知(おやしらず)」など。

 「金閣炎上」の林養賢(はやし ようけん)「五番町夕霧楼」の遊女、夕子など特に悲しくなる。水上さんの福井にある「若州一滴文庫(じゃくしゅういってきぶんこ)」に行った。林のお墓にも行った。「雁の寺」の瑞春院(ずいしゅんいん)は一度だけ行った事があるが、その後非公開となって非常に残念。是非公開してほしい。

●水上勉生誕100年

 戦後間もない北海道で起きた放火殺人事件で刑事に追われる男。時を経て地域の名士となるが、再び殺人を犯してしまう。映画にもなった故水上勉さんの社会派推理小説「飢餓海峡」。舞鶴市が舞台になった。水上さんは舞鶴のお隣、福井・若狭の出身。「雁の寺」「金閣炎上」など幅広いジャンル、多作で知られ、来月で生誕100年になる。

 少年時代の禅寺修行などで水上文学は京都と深いつながりがある。丹後地域もよく登場、中学生の時に丹後半島を舟で回ったことが「五番町夕霧楼」の主人公の設定にも影響。水上さんに関する福井県立若狭図書学習センター司書の渡辺力さん(52)。

 日本海側の丹後や若狭は古来、京の都を人や物で支えてきた。水上文学のキーワードの一つは「弱者」。貧困の中で育った生い立ちもあり、社会的に弱い立場の人や土地に温かいまなざしを向けた。社会の格差拡大や東京一極集中が進む現在、その視点は貴重に思える。

 丹後は水上さんが故郷に開設した「若州一滴文庫」に近い。生誕100年を機に丹後や若狭に残るゆかりの場所をたどり、作品の世界を味わいたい。
[京都新聞 2019年02月17日]