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世界史の掲示板

第9章 アメリカ合衆国の情勢

プエブロ号事件(1月22日),テト攻勢(1月30日)に始まるヴィエトナム戦争の激化など国際情勢の新たな緊張のうちに明けた1968年は,同時に米国大統領選挙の年であり,インフレ,人種問題等国内に難問を抱える米国にとり大きな政治的試練の年となった。

ヴィエトナム戦争については,知識層の間で米国のヴィエトナム介入の意義について懐疑的な見方が強まり,反戦運動も尖鋭化した。経済面についても同様に,ヴィエトナム戦費の急増が財政赤字の累積,インフレの進行となって国民生活を圧迫し,対外的には国際収支(特に貿易収支)の悪化,ひいてはドル危機の深刻化をまねいているとの議論が行なわれた。また戦費の急増のため社会的諸施策への支出が圧迫され,これが犯罪の激増,人種問題による社会不安をまねいているという説も行なわれた。かくして大統領選挙の激しい論戦のなかでヴィェトナム戦争と人種問題についての国内各層の意見の対立が顕著となった。

3月31日,ジョンソン大統領は北爆の部分停止とともに大統領選挙への不出馬を発表して情勢を一変せしめたが,さらにこれに追打ちをかけるがごとく,黒人問題の指導者キング牧師の暗殺事件(4月4日),これに続く大規模な黒人暴動事件,ロバート・ケネディ上院議員暗殺事件(6月5日)など全米をす大事件が連続的に発生し,米国の政治,社会情勢に暗い影を投げかけた。