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ちょっとハリハリ。の掲示板

2021年の半導体市場は2年連続の2桁成長で過去最高を更新へ

■ 2020年の世界半導体市場は後半の急回復で2桁成長に届く

 2020年(昨年)の世界半導体市場が確定した。市場調査会社3社が2021年3月~5月にそれぞれ発表した確定値は、成長率が10.4%~10.8%、市場規模(販売額)が4,640億ドル~4,733億ドルである。12%前後のマイナス成長だった2019年から、かなりの回復を達成できた。

 2020年の半導体市場は環境の変化が激しかった。2019年12月~2020年1月の時点では、2020年の成長率は7%前後と予測されており、緩やかな回復が見込まれていた。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行により、2020年4月にはゼロ成長あるいはマイナス成長へと市場予測は大きく下方修正された。

 ところが実際にはテレワークとオンライン授業の普及によるPCとネットワーク機器の出荷増、在宅娯楽需要の高まりと新型ビデオゲーム機器の登場、5Gスマートフォンの本格出荷などによって半導体需要は冷え込むどころか、逆に熱くなってしまった。

 半導体需要は2020年の後半に入るとさらに増加し、急激な回復を市場にもたらした。2020年の秋以降は、さまざまな電子機器の生産ラインで半導体が不足し、生産計画に影響を与えるほどの供給不足となっている。この結果、2020年8月以降の市場予測は上方修正を繰り返した。

■ 2020年の半導体市場規模は過去2番目の大きさを記録

 市場調査会社のGartnerが発表してきた2002年以降の世界半導体市場データによると、成長率が2桁となるのは2018年以来である。2018年の成長率は12.5%だった。2020年の販売金額は4,662億ドルで、過去最高だった2018年の4,746億ドルは超えられなかったものの、過去2番目の高さとなった。

 なお2018年~2020年の販売金額は4,500億ドル前後で推移しており、この水準は2010年~2012年の1.5倍、2002年の3倍弱に達している。

■ 2021年の世界市場は12%~17%成長とかなり高い伸びを予測

 2021年(今年)の半導体市場も2020年に続いて堅調な伸びが予測されており、しかも、すでに上方修正が生じた。昨年12月に業界団体のWSTS(世界半導体市場統計)が公表した2021年の成長率は8.4%である。また今年1月に市場調査会社のIC Insightsが公表した集積回路(IC)市場の成長率は12%だった。

 それが今年3月には、IC市場の成長率を19%に上方修正した。昨年の後半から顕著になった半導体需要の伸びが今年も長く続きそうだとの見通しによる。

 さらにGartnerは今年3月に、世界の半導体市場は2021年に16.9%成長するとの予測を発表した。昨年12月にWSTSが公表した成長率からみると、2倍強に上昇している。また市場調査会社のIDCが今年5月に発表した半導体市場の成長率予測は12.5%とこれもかなり高い。金額ベースでは、いずれも過去最大の市場規模となる。

 IDCの発表によると、用途別では携帯電話端末向け半導体の伸びが前年比23.3%増と最も高い。次いで自動車向け半導体が前年比13.6%増と大きく伸びる。また半導体の供給不足は、2021年中には解消しないと予測する。

■ 半導体ランキングはIntelの2年連続首位が確定

 2020年の半導体市場規模の確定値を発表した市場調査会社の中で、OmdiaとGartnerは半導体ベンダーの売上高ランキング上位10社も同時に発表した。両社が発表したランキングは、1位から7位までまったく変わらない。すなわちトップがIntel、2位がSamsung Electronics、3位がSK hynix、4位がMicron Technology、5位がQualcomm、6位がBroadcomm、7位がTexas Instrumentsである。8位~10位は、Omdiaの発表がNVIDIA、Infineon Technologies、MediaTekの順、Gartnerの発表がMediaTek、NVIDIA、キオクシアの順となっている。

 この結果、2年連続でIntelの首位が確定した。また同じく2年連続でSamsung Electronics(以降はSamsungと表記)が2位となった

 2019年から2020年への順位の変動で目立つのは、5Gスマートフォン向け半導体市場の急激な成長によってQualcommとMediaTekが順位を上げたことだろう。特にMediaTekの躍進が著しい。深層学習向け半導体市場の大幅な成長によってNVIDIAも順位を上げている。

■ 2021年の半導体ランキングはSamsungが首位を奪取へ

 2021年の半導体ベンダー売上高ランキングは、SamsungがIntelから首位を奪い返すとの予測が出ている。市場調査会社のIC Insightsは2021年5月4日に、2019年第1四半期を底にSamsungの四半期売上高がほぼ増加し続けており、2021年第2四半期(同年4月~6月期)にはIntelを抜いて四半期ベースでトップに立つとの推定を発表した。

 4年前の2017年に、空前のメモリ好況によってSamsungが年間ランキングで初めて首位に立った。それまではIntelが25年連続でトップを維持していた。しかし2018年後半のメモリ不況によってSamsungの売り上げは急落した。2019年には再びIntelが年間ランキングのトップを奪取していた。そして前述のように、2020年もIntelがトップを維持した。

 IC Insightsは2021年1月26日に、2021年のDRAM市場とNANDフラッシュメモリ市場がそれぞれ18%成長、17%成長するとの予測を発表している。また同年5月4日の発表リリースでは、Intelの年間売上高は2021年に1%しか伸びないとみる。このため、2021年には再びSamsungが半導体売上高ランキングのトップになるとIC Insightsは予測する。この予測が現実になるのかどうか。しばらくは注目していきたい。

PC Watch,福田 昭