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「米国が中国との技術競争に勝ち抜くにはAI、半導体、エネルギー、量子コンピューター、合成生物学といった『戦略的』と呼ぶ領域で米国が主導権を保ち続ける必要があり、日本の技術者や大学、政府とより緊密な協力関係を築く必要がある」—。
米人工知能国家安全保障委員会(NSCAI)エリック・シュミット委員長が日本経済新聞(7月10日付朝刊)インタビュー(オンライン形式)でこう訴えた。

米NSCAIは、トランプ前政権下の2018年にジェームズ・マティス国防長官(当時)が人工知能(AI)に関し政策提言すべく新設し、トップに米グーグル元CEO(アルファベット元会長)シュミット博士に直々就任を要請して発足した組織である。

そして、発足2年半後の今春3月に700ページ超の最終報告書が完成、バイデン大統領と米議会に提出された同報告書は、「莫大な力と影響力を持つAI技術は、民主主義に基づいて開発・使用されなければならない」と断じ、中国がAIを「抑圧と監視の道具にしている」と強く批判すると共に、10年後、中国にAIの主導権を握られる等「第2次世界大戦後、初めて米国の技術優位が脅かさている」と衝撃的な警告を発し、物議を醸した。

取りも直さず、日経インタビューで筆者が関心を引いたシュミット発言には、以下のようなものがある。
1)「一部のAI技術や量子コンピューターで中国の技術力が報告書に盛り込んだ想定よりも『早く米国に追いついてきている。これは重大事だ』」−。

2)「米国が中国との技術競争に勝ち抜くにはAI、半導体、エネルギー、量子コンピューター、合成生物学といった『戦略的』と呼ぶ領域で米国が主導権を保ち続ける必要がある」−。

3)「そのためには日本の技術者や大学、政府とより緊密な協力関係を築く必要がある」−。

4)「米政府内に調整機関を設置し、日本政府との対話を密にする必要があり、日本側もこうした組織を立ち上げ大学や企業間での情報共有を進めるべき」−。

5)「高度なサイバー攻撃が国家インフラを脅かし、SNS(交流サイト)偽情報が民主主義を揺るがす等テクノロジー武装した中国が米国の最大の脅威になった」−。

そして、何よりシュミット氏が次の10年で世界に最も大きなインパクトを与えるテクノロジーと断じるのが、米中対立の一丁目一番地に掲げるAIであり、人類の利器にも凶器にもなり得るこの技術の主導権を中国に握らせてはいけないと強調している。

その点を含め筆者が取り分け関心を引いたシュミット発言に、「AIや量子などの先端技術の研究開発に巨費を投じる『米国イノベーション・競争法案』が米上院で可決されたことについて『我々が大きく携わった法案で、成立に向けてさらに働きかける』と語った」ことがある。

「米国イノベーション・競争法案」とは、米議会上院で6月8日に賛成68、反対32で可決されたシューマー民主党上院院内総務が提出したパッケージ法案『米国インベーション・競争法案2021(The United States Innovation:and Competition Act of 2021)』である。

同法案は、1)米国立科学財団、米航空宇宙局などへ1200億ドルの提供、2)米国務省にインド太平洋地域における活動予算を増額、3)競争力維持のためのバイ・アメリカン強化、4)外国政府によるサイバー攻撃や米国の知的財産窃取の阻止・影響緩和のための重大事態対応用ファンド創設やドローン調達規制の規定、5)中国に対する既存の金融制裁強化・新規制裁の措置、輸出管理強化の規定、6)重要物資のサプライチェーン強靱性の確保や不公正貿易慣行に対処すべく貿易措置の規定—等から構成されている。

難解な専門用語が並ぶが、結局は、英文タイトル「Meeting the China Challenge Act of 2021」が示す対中戦略に他ならない。