ここから本文です
Yahoo!ファイナンス
投稿一覧に戻る

松竹(株)【9601】の掲示板 2015/04/16〜2018/10/26

「ぼくらの家路」は、愛情不足の若い母親と、二人の子供の心の葛藤と放浪を描いたドイツ映画。今の日本でも、ありそうな話だった。双眼鏡を万引きする場面などは、よくできていた。

ただ、ベルリン国際映画祭で絶賛とか、受賞とかいうと違和感を覚える。かつてベルリン国際映画祭で、スターリングラードの悲劇を描いた「最後の戦線」が、銀賞を受賞したこととの間にあまりに隔たりがある。

とはいえ、イタリア映画のような、お涙頂戴にもならず、米映画のような、心温まるハッピーエンドでもなく、邦画のような、ヘンな心の価値をありがとうでもない、観点は確保されていた。まだ男と遊びたい年頃の母親と、かまってほしい年頃の子供の、どうしようもないすれ違いは、再び家を出て行く子供たちをカメラが追わずに、ぽっかりと暗くなるラストに集約されていた。

以前、ドレスデンに宿泊して、近郊の陶器の町、マイセンを訪れたとき、帰りの電車の中で、東洋人が珍しいのか男の子に話しかけられて、しばらく話していたことがあったが、その子の言葉がひどくわかりつらかった。子供用語のためだと思っていたのだが、本作の男の子の話は非常にわかりやすかった。語彙が平易だから当然のことだ。振り返って、あの時の男の子の話が、聞き取りにくかったのは、子供のためではなく、旧東独の、平たく言うと、田舎言葉だったためだと、理解できた。