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投稿コメント一覧 (411コメント)

  • 1年前に米国が、インドへの一般特恵関税制度(GSP)の適用を停止したことが、貿易戦争の始まりだった。米国はその際、インドが米国企業を差別していると主張した。これに対しインド側は、米国が導入した鉄鋼輸入関税への対抗措置として、以前に警告していた関税措置を実施に移すことで報復した。

     ドナルド・トランプ米大統領は、来週のインド訪問の際に同国のナレンドラ・モディ首相と会談し、何らかの和解策で合意するかもしれない。しかし、背景には中国との貿易戦争と似通った要素があるため、底流にある対立は続きそうだ。

     モディ首相は本質的に、中国を世界第2位の経済大国に押し上げたのと同じ手法を採用しようとしている。その手法とは、外国からの投資を歓迎する一方で、インド企業のために国内市場の保護を強めるというものだ。インドは、中国のような経済的・地政学的脅威をもたらしてはいない。しかしトランプ大統領は、米国を利用していると判断したすべての国に罰を与えると決意しているため、インドは現在トランプ氏との衝突に向かっている。

     インドの保護主義的傾向は、ずっと以前から続いている。インドの初代首相でインド国民会議派のリーダーだったジャワハルラール・ネルー氏は、社会主義と輸入代替工業化政策がインドの発展と自立のカギになると考えていた。1990年代初頭の外貨準備枯渇の危機を受けて、ヒンズー至上主義のインド人民党(BJP)を中心とした連合組織とインド議会の下で自由化が一気に進められ、これが2000年代の急成長の引き金になった。しかし、広範な規制、許認可制度、銀行など主要産業の国家統制と、気まぐれな政策立案が起業家精神と投資の障害になり続けた。

     モディ氏は「最低限のガバメント(政府)、最高度のガバナンス(統治)」という主張を掲げ、2014年にBJPを政権の座に復帰させることに成功した際、こうした慣行を変えると約束した。モディ氏は、2018年にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会でも同様の発言を行い、「保護主義勢力」からグローバリズムを守る考えを表明した。

     国内では、破産に関する法規の効率化や、売上税の簡素化(物品・サービス税の導入)といった重要な改革に着手した。

     しかし、国外対応でモディ氏率いるインドは、再度保護主義を受け入れた。モディ政権は2018年度と19年度に、多数の物品に対する関税を引き上げた。2018年にインドの「最恵国」に適用された平均関税率は17%に上昇し、世界貿易機関(WTO)で最も高い部類に入った。

     米通商代表部(USTR)は、昨年の外国貿易障壁報告書で、モディ氏の「メーク・イン・インディア」プログラムや外国貿易政策のほか、既存の国家製造業政策が、国防、電子機器、医療、情報通信、およびクリーンエネルギー製品の分野でローカル・コンテント要求(国内産品の購入や使用を要求する措置)と技術移転に関する要求を課していることに不満を表明した。

     新しく提案されている規則は、インドの顧客個人情報と、クラウド・コンピューティング・サービス提供者や特定の通信ゲートウェイがインドで創出したデータを、物理的にインド国内にとどめることを義務付けている。スイスに本拠を置く貿易監視団体「グローバル・トレード・アラート」の推測によると、インドの輸入品の半数以上は、2008年以降に導入された少なくとも3つの有害な措置の影響を受けている。

     モディ政権はまた、多国間貿易協定への参加に後ろ向きだ。2016年には、関税障壁の緩和のためのWTO合意に関する交渉から離脱した。昨秋には、中国から大量の輸入品が流れ込むことを危惧し、アジアの自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」交渉から撤退した。それを補うため、同国はさらなる2国間貿易協定の締結を目指している。

     モディ氏は、決して欧米スタイルの自由化推進主義者とみなされるべきではなかった。インドの経済ジャーナリスト、スワミナタン・アイヤール氏は2018年に米シンクタンク「ケイトー研究所」の論説で、国政与党BJPについて、産業界およびグローバリゼーションを本質的に支持している他の右派政党と違うと指摘。そのうえで、中小企業や貿易業者などの中核の支持者を大企業との開かれた競争から保護したがっているとして次のように話す。「BJPは官民両方のセクターの企業に海外のライバルと戦うための政府支援を提供することで、国を代表する大企業を創設したいと考えている 保護貿易主義を容認する現在のインドの姿勢は、自給自足体制の確立を目標にしていたかつての同国の政策とは異なっている。前出のアイヤール氏は、国際的なサプライチェーン(供給網)においてインド製造業の居場所を確保することをモディ氏が目指していると指摘する。

     モディ氏は、中国が行ったように、国内製造業の生産能力向上に貢献することを期待し、外国からの投資に門戸を開いた。モディ政権の元経済顧問で現在はハーバード大学で講師を務めるアルビンド・スブラマニアン氏は、「中国モデルはインド国内で極めて強力な共感を得ている」と語った。その考え方は、「彼らは中国トップの主要企業を作り上げた。われわれに同じことができないはずはない」というものだ。

     しかし、モディ氏は中国が経験しなかった障害に直面している。具体的にはまず、雇用、解雇、土地の取得などに関するインドの各種規定は、小規模企業より大規模企業にとってより大きな負担となっていることが挙げられる。「巨大になり、規模を確保することは極めて困難だ。もしそれができなければ、製造業や輸出分野で強力な存在になることは決してない」とスブラマニアン氏は指摘する。同氏は共著による最近の論文で、インドの製造業は、国内総生産(GDP)に占める比率が中国の場合に比べ、かなり低い段階でピークに達したことを示した。これは「早期産業空洞化」と呼ばれる状態だ。

     第2に、中国による台頭は、自由貿易に反し、中国方式を模倣しようとするすべての国の動きを阻止する世界的な反発を引き起こしたことだ。米国の政策立案者たちは、インドを中国ほど戦略上の脅威とはみなしていない。しかし、モディ氏によるより厳格なヒンズー至上主義は、インド国内の少数派であるイスラム教徒の抗議を招いており、インドに対する米国の友好姿勢を一部弱めるものとなっている。

     トランプ氏はモディ氏を個人的に好きな人物だと表明しているが、それがインドにとって米国との貿易戦争を回避させるものにはならないだろう。トランプ氏が中国の習近平国家主席に好意を示しているからといって、貿易戦争の回避につながるわけではないのと同じだ。

  • 【ソルトレークシティー(米ユタ州)】末日聖徒イエス・キリスト教会(通称・モルモン教会)は半世紀以上かけ、ひそかに世界有数の投資ファンドを築き上げた。教会関係者以外でそれを知る者はほぼいなかった。

     昨年末、ミステリーの一端が明るみに出た。「エンサイン・ピーク・アドバイザーズ」と名づけられたこのファンドが1000億ドル(約11兆円)もの資金を集めていることを、元従業員の一人が内国歳入庁(IRS)に提出した告発状で明らかにした。この告発者は、エンサイン・ピークの資金の一部を教会が不正流用した疑いがあることも指摘した。モルモン教会側はこの主張を否定している。

     教会側は投資ファンドの運用資産額についてのコメントを避けた。「われわれは匿名性をいくらか保つよう努めてきた」。エンサイン・ピークを率いるロジャー・クラーク氏は、米ユタ州ソルトレークシティーのビルの4階にあるオフィスでこう語った。フードコートを見下ろすこのビルの入居者表示にエンサイン・ピークの名は載っていない。

     十数人の元従業員やビジネスパートナーとのインタビューを通じ、1990年代の細々とした業務からウォール街の大手機関投資家に肩を並べるほどの巨大ファンドに急成長した組織の内情が見えてきた。

     運用資産総額は昨年時点でおよそ800億~1000億ドルだと元従業員の一部は語る。これはハーバード大学の寄付基金の少なくとも2倍、 ソフトバンク の世界最大のIT(情報技術)投資ファンド「ビジョン・ファンド」と同等の規模だ。エンサイン・ピークの現・元従業員の一部によると、その資産には米国株400億ドルのほか、フロリダ州の森林地、ブリッジウオーター・アソシエイツのような著名ヘッジファンドへの投資などを含む。

     教会側はファンドの総額について厳格に秘密が守られていることを認めた。それはエンサイン・ピークが世界全体で1600万人の会員からの献金(いわゆる十分の一税)に頼っているからだとしている。教会には財務状況を公表する法的義務はない。

     だが告発者の報告を受け――提出したのはエンサイン・ピークの元ポートフォリオ・マネジャー、デービッド・ニールセン氏――、財務の透明性を求める圧力が増している。それはまさに教会が何十年も避けてきたことだ。

     同社はビジネスパートナーにも運用資産の額を知らせていない。これはウォール街では異例のやり方だ。エンサイン・ピークの従業員は生涯続く機密保持契約書にサインさせられる。一部の元従業員によると、現従業員はもはや運用資産総額を知らない者が大半だという。また資金の使途を理解している従業員はほとんどいない。

    末日聖徒イエス・キリスト教会は世界に1600万人の会員がいる
     
    クラーク氏や業務を監督する教会関係者は、このファンドは困難な経済状況に陥った場合に備える口座だと説明した。彼らがエンサイン・ピークの業務に関するインタビューに応じるのは初めてだ。教会がアフリカなど世界の貧困地域に活動を広げると、会員の献金可能な額が少ないため、エンサイン・ピークの保有資産が基本業務を支えるのに必要になるという。

     「2008年が次にいつ発生するかわからない」。エンサイン・ピークの聖職者部門の一人、クリストファー・ウォッデル氏はこう述べた。同氏は12年前の金融危機に言及した上で、こう続けた。「そうした事態が再び起きても、布教活動を中止する必要がなくなる」

     直近の金融危機のさなか、彼らはエンサイン・ピークの備蓄資金に手を付けなかったという。教会は予算を削減してしのいだ。

     元従業員の一人と、告発者は(提出した報告の中で)、クラーク氏がイエス・キリストの再臨をエンサイン・ピークの存在理由に挙げるのを聞いたと述べている。モルモン教会ではキリスト再臨の前に、戦争や苦難に見舞われる時期があると信じられている。 

     クラーク氏は従業員が言葉の意図を誤解したに違いないと語った。「われわれは救い主がある時点で戻ってこられると信じている。それがいつかは誰にもわからない」

     だがそれが実現した時、「金融資産が何らかの価値を持つかどうか全く想像できない」と同氏は続けた。「問題はそれより前に何が起きるかで、キリストの再臨ではない」

     大学の寄付基金では一般に、投資収益によって運営コストを補うが、エンサイン・ピークはその逆だ。会員の年間献金額が、教会の予算をカバーする以上に集まるからだ。その余剰金はエンサイン・ピークに組み入れられる。モルモン教会の会員は年収の1割を献金することになっている。

     エンサイン・ピークの聖職者部門に属するディーン・デービーズ氏は、教会が資産公開を行わない理由は「その資金が神聖なため」だとし、「それを誇示して世間のチェックや批判にさらすことはしない」と述べた。

     クラーク氏は、ファンドの富について世間が知れば、献金する意欲がそがれかねないと、教会の指導部が懸念しているとの見方を示した。

     「献金の支払いは使命感よりも、教会がその金を必要としている面が大きい」とクラーク氏は言う。「だから寄付の必要はないと人々が感じることを彼らは望まなかった」

     教会員の一部はいま、ファンドの詳細がなぜこれほど長期間ひた隠しにされたのか、何を目的とする資金なのか、教会への多額の献金をまだ標準的な慣行にすべきなのかといった点に疑問を抱いている。

     バージニア州在住の教会員、キャロライン・ホーマーさんは、エンサイン・ピークの運用資産の話を知った後、教会への献金を減らし、他の慈善団体への寄付を増やすことにした。モルモン教の聖典の一つ「モルモン書」では、神が貧困者の施しよりも自分の富を気にかける教会を非難していると彼女は話す。「教会のメンバーが『どれほど富があろうと、あなたには関係ない』と話すのを聞くと、われわれのあがめる聖典の言葉を、悪い意味でなぞっているのだと思える」

     教会関係者もクラーク氏も、教会の年間予算の規模を公表するのを控え、エンサイン・ピークに流入する資金額を答えなかった。ただ、主要分野の歳出額は合計50億ドル前後という推定額を示した。

     クラーク氏によると、エンサイン・ピークが保有する資金の大部分は既存投資の運用益であり、会員の献金ではないという。同ファンドはここ数年、年間約7%の収益を上げていると同氏は言う。

     複数の元従業員の話からもエンサイン・ピークの業務の詳細がうかがえる。彼らの一部によると、強気相場が続いた過去10年間に、同ファンドは2012年の約400億ドルから2014年は約600億ドル、2019年には約1000億ドルへと成長した。元従業員の一人によると、資金の約70%は流動資産だという。資産額が膨れ上がるにつれ、エンサイン・ピークは秘密主義の姿勢を強めたと、元従業員の一部は言う。

     同社は借り入れを行わない。モルモン教徒は借金をしないようにと教会は警告している。また、モルモン教で好ましくないとされるアルコールやカフェイン入り飲料、たばこ、ギャンブルなどの業界は、投資対象から外れている。

  • 米経済、緩やかに拡大」FOMC声明要旨 2020/1/30 4:34
    前回12月のFOMC会合後に得た情報によると、労働市場は強さを保っており、経済活動は緩やかに拡大した。雇用増はこの数カ月を平均すると堅調で、失業率も低水準を保った。家計支出は緩やかに増加したが、企業の設備投資および輸出は弱いままだ。

    全般的な物価上昇率と、食品・エネルギーを除く物価上昇率は2%を下回っている。市場で予測したインフレ値は依然低く、アンケート調査による測定では長期のインフレ予想はあまり変わっていない。

    法律で定められた使命を達成するため、FOMCは、雇用の最大化と物価安定の実現に努める。FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.50~1.75%に据え置くことを決定した。持続的な経済成長、力強い労働市場の情勢、物価上昇率の目標の2%前後への回帰を支えるために、現在の金融政策スタンスが適切だと考える。

    FOMCは、FF金利の目標レンジの適切な道筋を見極めるため、海外の動向や抑制されたインフレ圧力など、景気見通しに関する情報が意味するものを注視していく。

    FF金利の誘導目標を調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化と2%前後の物価上昇率という目標との比較で経済情勢の実績と見通しを評価していく。労働市場の状況に関する指標や、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

    決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員の賛成による。

  • 中国のIT企業・アリババは2017年10月、事業立ち上げ資金として3年間で1000億元(1兆5500億円相当、1元=15.50円で計算)を投じるとして、シンクタンクであるDAMO・アカデミーを設立した。

     北京、杭州といった中国国内のほか、シンガポール、イスラエル、アメリカ、ロシアなどグローバルでラボを設立、独自に多様な研究を行うほか、世界各国の大学など、研究機関と緊密な関係を結び、共同研究を行っている。この中には、中国科学院と共同で行う量子コンピューターの研究なども含まれる。

     各先端分野の一流研究者たちが参加、協力しているDAMO・アカデミーでは、毎年年初のタイミングで、彼らの知識を一つにまとめ、最先端技術のトレンドを発表している。

     2020年1月2日に発表された2020年の10大トレンドは以下の通り。

    【1】AIはセンサーから認知へと発展のステージが変わる
    【2】計算・メモリ保存の一体化はAIの計算力のボトルネックを突破する
    【3】工業インターネットの超融合が起こる
    【4】機器間における大規模な協力が可能となる
    【5】モジュール化がチップ設計の参入障壁を低くする
    【6】規模化された生産レベルでのブロックチェーン応用が大衆化される
    【7】量子計算が開発競争時代に突入する
    【8】新材料が半導体機器の革新を推し進める
    【9】データの秘匿保護のためのAI技術が加速する
    【10】クラウドがIT技術のイノベーションセンターとなる

     これらの中でいくつか注目したい点がある。半導体開発は現在、大きな壁に突き当たろうとしている。

     5G(第5世代移動通信システム)サービスの普及は、IoT(モノのインターネット)、クラウド、エッジコンピューティングの急速な拡大を促し、それは半導体チップの需要増に繋がる。伝統的なチップ設計モデルでは効率よく世代交代、カスタマイズなどに対応することができない。

     ただ、この点については、どのような用途にも自由に対応できるオープン標準の命令セット・アーキテクチャであるRISC-Vなど、様々な機能をモジュール化することで、チップ設計については迅速化が可能である。

     しかし、半導体の線幅は既に素材の限界まで細密化が進んでいる。シリコン主体の典型的なトランジスタ構造では半導体産業の持続的な発展を維持するのは難しくなっており、電子、スピンを損耗せずに移動させることを可能にする新材料の開発が不可欠となっている。

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     現在、トポロジカル絶縁体、二次元超電導材料などの開発が進んでいるが、それに成功すれば、その研究者もしくは組織は、莫大な利益を得ることができるだろう。

     また、現在のコンピューターの基本構造であるジョン・フォン・ノイマン型では、急速に進化するAIへの対応が困難になりつつある。なぜなら、ジョン・フォン・ノイマン型はメモリ保存領域と計算領域が分離されており、データの“読み込み・書き込み”を多用するAIのニーズと合致しなくなっており、処理速度の高速化に関してボトルネックとなっているからだ。

     この問題を解消するためには、脳神経のようにデータ保存と計算が融合し一体化したような構造を見つけ出し、データのやり取りを減らす必要があるが、ここも開発のテーマとしては宝の山である。

     5Gは通信速度の点で革命的な変化をもたらすが、それによってあらゆるものをインターネットに接続させて情報を融合させるということが実用段階に入るだろう。ただ、その際に問題となるのは情報の秘匿である。それぞれの間において、簡単にアクセスできない部分を確保する必要があるが、そのためにはブロックチェーンのさらなる進化が必要となるだろう。

     量子計算、量子通信といった量子理論を使った新しい技術分野を含め、これからの数年間、様々な局面で技術開発競争が激化するだろう。

     日本のマスコミでは、中国が国家による補助金によって科学技術の発展を支えていると批判的に伝えることもあるが、中国経済の強さは、アリババ、テンセント、華為技術(ファーウェイ)などに代表される民営企業による強さである。彼らには、飽くなきイノベーションへの追求があり、アメリカに勝るとも劣らないベンチャー精神がある。

     もし、アメリカが中国の技術革新の力を弱めたいなら、華為技術に対するようにアリババに対しても圧力を加える必要があるだろう。しかし、それにはどんな理由を付ければよいのだろうか。アメリカを以てしても、中国のイノベーションを止めるのは難しい。

  • 【似鳥】私は景気の先行指標として「新設住宅着工戸数」を重視しています。建築が増えると住関連商品や家電などの消費も増えるため、関連する企業の景気に大きく影響するのです。08年のリーマンンショックのときも先行して動いていました。例えば、04年は約119万戸、05年は約124万戸、06年は約129万戸と推移していましたが、07年に約106万戸と大きく減少していたのです。新設住宅着工戸数は、人口の1%に当たる120万戸以上が景気の良い状態とされます。リーマンショック以降は、100万戸が一つの目安ですね。19年の予測は86~91万戸と下降気味で、20年は80万戸台、24年以降は70万戸台になると予測されています。

    前の東京五輪は不況の始まりだった
    ──東京五輪後は不況がやってくると言われています。会長は「過去にあったことは必ず起きる」という考えを持っているようですが、未来を考えるに当たって、歴史を参考にすることは多い?

    【似鳥】景気循環においては、過去と同じ現象が繰り返されます。1964年の東京五輪後も、不況の始まりでした。その意味で言えば、東京五輪以降、土地や建物、鉄をはじめとした原材料価格も下がっていくでしょうし、人材も買い手市場になっていくはずです。これは過去50年以上、ビジネスの経験で得た私の知見です。

    ──「20~30年後を予測して、そこで成果が出る投資を行うべきだ」とも提言されていますね。30年後を予測する目を養うにはどうすればいいでしょうか。

    【似鳥】わが社は1店舗30坪100万円からビジネスを始め、今では年間6000億円の売上高を超える企業となりました。成功の秘訣は逆張りです。不況のときこそ投資して、好況のときはあまり投資しない。投資が大きいと不況になったときに大きな負担になります。経営者は常に未来を見ることが必要です。

    そのためには常に景気動向に着目し、その原因と結果を分析する習慣を身に付けないといけません。短期で目標を立てるのではなく、少なくとも10年先の計画を立て、そこから逆算して現時点でどんな手を打つべきなのか。どんな投資が必要なのか。それを常に意識することが重要なのです。

  • 米国人の運転好きは変わりつつあり、それに伴って都市の在り方も変化している。過去3年、1人当たりの平均運転距離は年9800マイル(約1万5800キロ)とピークを付けた2004年から約2%減っている。カリフォルニアやニューヨークなどの大都市のある州のほか、ワイオミングやバーモントなどの地方の一部の州でも運転量は減少している。

     急成長する広大な砂漠の大都市で車社会のここフェニックスでさえも状況は同じだ。アリゾナ州交通当局のデータによると、フェニックスのあるマリコパ郡の1人当たりの運転距離は06年から約7%減っている。州全体では11%の減少だ。

     全米で運転量が減少している要因には、人口密度の高い都市部への人口移動、職場に近い場所に住むことや別の輸送手段を好む若者の増加、テレワークやネット通販・ストリーミングの台頭、通勤が不要な年金生活者の増加などが挙げられる。

    米国の運転傾向は何十年も経済と同調してきた。好景気のときには運転が増え、リセッション(景気後退)で失職者が増えると運転は減った。

     しかし今は10年以上も景気拡大が続いているにもかかわらず、国民は以前よりも運転しなくなっている。

    「 根本的な変化」

     カリフォルニア大学ロサンゼルス校で都市計画について教えるブライアン・テーラー教授は「かなりの景気回復が続いていた09~17年の間も個人の移動量は減少している。これは米国で根本的な変化が起こっていることを示すものだ」と述べた。

    1人当たりの運転距離の伸びは、経済が力強く成長していた90年代半ばから既に失速し始めていた。景気拡大まっただ中の00年代半ば、恐らく当時のガソリン価格の上昇が原因で運転距離が減少した。景気後退後の14~16年にやや持ち直したものの、その後は04年の水準を毎年下回っている。

     自動車が依然、米国の圧倒的な交通手段であることに変わりはない。4分の3強の米国人が通勤に車を使用している。国全体では人口増加に伴って総運転距離は増加し続けている。ウーバーやリフトなどの配車サービスは爆発的に普及した。自動車の年間販売台数も近年、過去最高を記録している。
    それでも多くのデータからは、米国人の移動手段が変化しつつあることが見て取れる。

     若者は運転免許を取る年齢が以前よりも高くなり、車の利用も減っている。運輸省の調査によると、16~19歳の若者の運転距離が2017年は2001年と比較して24%減少している。20~34歳では22%の減少だ。

     また国民はあまり自宅から出なくなっている。運輸省の調査によると、17年の1世帯当たりの平均通勤回数は90年以降で最低となった。買い物や社交、娯楽活動のための移動回数も減少している。

     国勢調査によると、在宅勤務を毎日する労働者の割合は10年の4.3%から18年には5.3%に上昇している。労働省によると、終日の在宅勤務を時々する人の割合も約15%と以前から増えている。

    テレワークやネット通販の台頭

     大手医療サービス会社バナーヘルス(本社・フェニックス)の幹部アン・フォルジャーさんは、在宅勤務のおかげで毎日約3時間かけて通勤する必要がなくなり、運転量が大幅に減ったと話す。買い物もネットでしているため、車で過ごす時間は一段と減っているという。

     「仕事をしていないときは、運動をしたり、家族の行事をしたり、友人を訪ねたりしている」とフォルジャーさんは話す。「ライフスタイルがはるかに豊かになった。雑貨屋で1つの商品を探すために出掛けなくて済むのは便利だ」
    バナーヘルスの従業員5万1000人のうち約2200人が毎日テレワークをしており、その他の人も不定期に在宅で働いている。アリゾナ州最大の民間雇用主である同社は、本社も公共交通機関に近い町の中心部に移転し、従業員が通勤しやすくした。人事責任者のナオミ・クレイマー氏によると、移転は人材の確保に役立っているという。

     「当社では週休3日なども検討している」と同氏は話す。「かなり多くの人が手を挙げている」
    エネルギー省の予測はこうした傾向が続く可能性を示唆している。全米の運転距離の伸び率は年0.6%と控え目なペースになる見通しで、これは09年の1.5%という伸び率予測から低下している。

    移動パターンの変化を受け、都市プランナーは数年前には考えられなかった措置を取っている。都市の道路の車線を減らし、交通を意図的に減速させ、自転車や歩行者、公共交通機関のための空間を作っている。新たに建設される建物に駐車場の設置を義務づけることもやめ、自転車や電動キックボードのシェアサービスの普及を促している。

     フェニックスの都市プランナーは運転しない人たちのために労力をそそぐようになった。同市のマリオ・パニアグア副市政管理官は、代替交通手段を提供すれば渋滞で都市機能がまひすることがなくなり、市を継続的に成長させられると話す。

    同市では住民が1日約100人のペースで増えているにもかかわらず、一部の幹線道路で車線を減らし、自転車専用道路を設けている。また、総延長32キロに及ぶ地域ライトレールシステムが08年に開通。以来、その距離は13キロ延長され、50年までにさらに68キロ追加される予定だ。バスシステムの拡大も計画されている。

     夏はかなり暑くなるにもかかわらず、市内での自転車の利用は増えている。市の自転車シェアリング制度の利用者は2年で倍増した。

     「フェニックスは車向けにつくられた町だ。それを変えるのには時間がかかるだろう」。自転車の利用を提唱する地元住民のアニー・エルドンさんはこう話す。

     エルドンさんはこの町に引っ越してきてから数年間、車の購入を延期した。今でも車はあまり使わず、自転車を好んでいる。「何日も自家用車を使わずに過ごしている。それが一般的になりつつある」

    幹線道路沿いの店には打撃

     変化の一部は、あまり好意的に受け止められていない。タイヤショップやディスカウント店が立ち並ぶサウスセントラル通りでは、ライトレールの延長で車線が4本から2本に削減されることに店の経営者らが警戒感を抱いている。

     車の窓にサンシェードを貼るサービスを手掛けるセリア・コントレラスさんは、車線が減れば交通量も減少し、通りを通過する車に商売を依存している店には打撃だと話す。

     コントレラスさんは、既存のライトレールの路線沿いに、小売店が1階に入った複数の新しい住居ビルが立つのを目にし、自分の近所でも同じことが起こることを懸念している。こうした1階にある店はドライバーではなく歩行者向けのものであり、「うちのような商売は求められていない」と話す。

     ライトレール延長に反対する活動家は今年8月、将来の建設計画を全て中止し、その資金を道路・バス関連のプロジェクトに回すかどうかを住民投票にかけることに成功した。

     投票は、自動車は今後もフェニックスで議論の余地のない影響力を持ち続けるのかという根本的な疑問に答えを出すものでもあった。

     投票の結果、投票者の約3分の2がライトレールの延長を支持した。

  • 2019 年 12 月 24 日 08:29 JST

     【北京】中国が目指す「脱石炭」の取り組みがここにきて失速している。世界最大の二酸化炭素排出国である同国が、気候変動対策で世界をリードするとの野望より経済成長とエネルギー安全保障を優先しているためだ。

     中国は最大の汚染エネルギー源である石炭の使用を大幅に削減すると表明しているが、石炭消費は過去3年に増加に転じ、再びピーク水準に迫っている。中国が建設を進める石炭火力発電所の能力は、同国を除く世界全体を合わせたものより大きい。

     米国との貿易戦争の打撃を和らげるために進めているインフラ投資が石炭消費を押し上げている。一方、最大の石油輸入先であるサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた9月以降、中国は石炭利用に対する姿勢を緩めており、外国産石油への依存度の高さが浮き彫りとなった。

     中国が再び石炭重視の姿勢に転じていることを受け、炭素排出量削減の本気度に懐疑的な見方が強まっている。また、ドナルド・トランプ米大統領が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を通告したことで、協定の維持に向けて中国に頼る欧州連合(EU)からは不満の声が漏れる。中国は2020~30年までの目標を達成する見込みだが、石炭に対するその曖昧な姿勢は、グリーンエネルギー目標の達成や、EUと足並みをそろえ一段と野心的な排出目標を掲げることについて、意欲が後退していることをうかがわせる。

     「中国はこんなに素晴らしいことをやっていると主張して、とりわけ途上国や新興国からリーダーだとみなされてきた」。シンガポール国立大学エネルギー研究所のシニアプリンシパルフェロー、フィリップ・アンドリューズスピード氏はこう指摘する。だが、中国は化石燃料の段階的廃止を目指しながらも新たな石炭火力発電所の開設を進めており、「これには深い矛盾がある」。

     中国の李克強首相は10月、エネルギー安全保障を確実にするよう、石炭業界の発展を訴えた。この発言は従来方針からの転換であり、政府が「反石炭」のメッセージを撤回しようとしている兆候だと広く受け止められた。

     トランプ氏のパリ協定脱退表明を受けて、中国は当初、気候変動対策を主導する新たなリーダーになる構えを見せていた。だが米国からの圧力がなくなったため、その決意は経済・政治面の困難に直面する中で薄れていったとアナリストは指摘する。

     また米中貿易戦争による影響で中国がエネルギー自給を重視する姿勢を強めたことが、石炭への支援を強める要因になった可能性が高い。コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターの上級研究員、エリカ・ダウンズ氏はこう指摘する。「エネルギー貿易や輸入依存に関してより広範な懸念があっても、石炭には安心感がある」

     石油大手BPの2019年版「スタティスティカル・レビュー」によると、中国の石油の輸入依存度は昨年72%に上昇し、過去50年で最高となった。また11月は石油輸入量が過去最高に達し、増加の大半はサウジからの輸入分が占めた(調査会社ケプラー調べ)。

     中国の石炭利用は近年、増加傾向にあるものの、昨年のエネルギー源全体に占める割合は過去最低の58%と、10年前の72%から大きく低下した(BPのスタティスティカル・レビュー調べ)。背景には、中国がパリ協定の目標達成に向けて再生可能エネルギーへの投資を拡大したことがある。再生エネが全体に占める割合は10%に満たないが、利用は昨年29%伸びており、世界全体の増加分の半分近くを占めた。

     クリーンエネルギー推進派は、中国の石炭政策と気候変動への取り組みを見極めるにあたり、2020年に政府が公表する次の5カ年計画に注目している。

  • NECが2050年に見据える、「意志共鳴型社会」という“人が豊かに生きる” 未来

    NECが2017年に立ち上げた「NEC未来創造会議」。技術革新が進んだ先にある2050年を見据えて、NECは国内外の有識者とともに「実現すべき未来像」と「解決すべき課題」、「その解決方法」を構想するための議論を続けている。始動から2年、実現すべき未来像として提示したコンセプト「意志共鳴型社会」はついに実装フェイズに突入した。NECが描くこのコンセプトとはいかなるものだろうか。人の意識を変える技術を生み出し続けてきたNECが「未来」を請け負う本義をひもといていく。
    技術のNECが「人」を問い続ける責任

    創業から120年を迎えた日本屈指の「技術屋」として知られるNECが、C&C宣言として「コンピューター技術とコミュニケーション(通信)技術の融合」、つまり時間と場所に制約されず顔を見てつながり合える未来の実現という構想を発表したのは1977年のことだった。

    インターネットによる検索エンジンの誕生よりもはるか昔。2019年のいまは当たり前になっている、地球上のどこにいてもつながり合える未来を見通していたのだ。しかし、より正確に言うならば、NECが予見していたのはコミュニケーション技術とコンピューティング技術両輪の技術開発によって「情報伝達能力の制約を無くし、人の可能性を拡げる」未来だった。

    人の可能性を拡げるためのテクノロジーを提供し続けてきたNECが、いま新たなる「未来図」を描き、その実装に向けて歩みを進めている。その未来図のための羅針盤としての活動が、「NEC未来創造会議」だ。

    本活動が見据えるのは、2045年に迎えるとされているシンギュラリティ(技術的特異点)の“その先”。国内外の有識者を招いて、今後の技術発展を踏まえながら「実現すべき未来像」と「解決すべき課題」、そして「その解決方法」を構想し続けてきた。

    活動初年度の2017年には、「2050年に人が豊かに生きる」ために必要な人と技術の価値を定義付け、それを阻む課題についても議論を重ねてきた。続く2018年には、課題の本質をあらゆるレイヤーで生まれている「分断」であると定め、これを乗り越えるために実現すべき未来像として「意志共鳴型社会」というコンセプトを提示した。

    そして3年目となる今年は、この「意志共鳴型社会」を社会実装するべく、全4回にわたって有識者とより深く、多角的な議論を展開しながら、共創活動もスタートさせた。

    本活動を牽引してきたのは、NECフェローの江村克己だ。江村は、研究者として、そしてNECのCTOとして、「強い技術」が世の中を変えていくさまを最前線で見続けてきた。「強い技術」とは、「ナンバーワン」と「オンリーワン」にこだわり続けた技術だと江村は言う。「数字で測れる性能だけでなく、社会課題を解けることに技術の強さが宿るいま、難しいことですが」と前置きをしながら、こう続けた。

    「難しくてもナンバーワン・オンリーワンにこだわり続けることは、とても大切です。いちばんであることで周りに人が集まり、強さはさらに増す。そのこだわりがあるからこそ、多くの人に信頼される企業であり続けられるのだと思います」

    ナンバーワン・オンリーワンの技術で世界を牽引してきたNECだからこそ、テクノロジーと人の意識の両面から、実現したい未来を構想していく責任がある。なぜなら、分断を生むのは、テクノロジーではなく、それを使う人の意識であり、技術一辺倒では分断を拡げ、また新たな分断を生んでしまうからだ。

    さらに江村は「技術の進化により先を見通すことが困難ないまこそ、多様な意見を織り込んだ『実現すべき未来像』からバックキャストして、技術開発に落とし込むことが重要」だと語る。だからこそ、理論物理学者やアーティスト、僧侶や将棋棋士、文化人類学者、建築家などさまざまな有識者との議論を重ねてきた。

    2050年には場所・空間・時間を超えた“共体験”が実現するだろうと、江村は語る。まさに今年議論されたのは、情報社会の先にある体験社会に進化したときに現れる「体験のネットワーク」が、人・コミュニティ・社会の分断をつなぎ直し、人間の意志共鳴を促すことができるのかということ、そして、そのためにあるべきテクノロジーやルールづくりの方法、人々の価値観や信頼の在り方だった。

    NECの目指す「人が生きる、豊かに生きる」は2050年にいかに実現されうるのか。人の能力を最大限に引き出すための技術を探求するNECの旅は、NEC未来創造会議という「羅針盤」を掲げながら続いていくのだ。

    NEC未来創造会議 https://future.nec/

  • 6848 東亜ディーケーケー
    環境測定器
    中国だけでなくインドでも大気汚染で

  • >>No. 120

    名糖産業(チョコをくれる)
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    銘柄
    PCA(ソフト屋さん)
    シャノン(システム系、業務内容に注目集まったあと期待はがれ業績は良い、ファイナンスもしている注意)
    アズム(駐車場リース)

    優待王子イムラトシヤさん

  • カブりつきマーケット 優待紹介
    帝国繊維(クオカード、リネンをくれる)
    片倉工業(選べる下着)
    ペッパー(桐谷さん買った/ただし桐谷さんは財務はあまり見ないで買う)

    オデキと飲食店は大きくなると潰れる

  • 第一段階の合意に署名がなされ、イギリスはジョンソン氏の保守党が勝利
    ポンド円は143円台から147円まで↑
    ドル円は昨夜108円半ば付近から109.50
    好業績で売り長銘柄の買い戻しが始まるかも

  • 国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が12月10日、半導体装置の市場予測を発表した。マクロ経済の減速やメモリー半導体の在庫調整などの影響で、2019年は前年比10.5%減の576億4000万ドル(約6兆2200億円)にとどまる見通しだが、20年に608億2000万ドル、21年には667億9000万ドルまで拡大すると見込む。21年はこれまでの過去最高額だった18年(644億2000万ドル)を上回ることになる。

     中でも需要が旺盛なのが中国だ。21年には164億4000万ドルとなり、韓国や台湾を抜いて世界最大市場に躍り出る見通しだ。世界市場のざっと4分の1が中国向けとなる計算だ。

    中国は現在は輸入に頼る半導体の自給率を25年に70%まで高める目標を掲げる。習近平指導部が15年にハイテク産業育成策「中国製造2025」を発表したことで、半導体の国産化に向けた取り組みに拍車がかかった。「2000億元(約3兆円)に及ぶ第2期の国家半導体ファンドを新設した中国は、設計から製造、組み立て、検査までを一貫して中国の国内で実行することを目指している」とSEMIのクラーク・ツェン市場調査統計部門ディレクターは指摘する。

     中国製のメモリー半導体の生産動向について、ツェン氏は「当初は消費者向け製品に使う低容量や中容量の品種が中心になる」と予測した。特許権の問題もあって「輸出に回せるほどの製品が出てくるとは考えにくい」(ツェン氏)。まずは国内需要を賄いながら、設計や製造の技術レベルを引き上げていくとみられる。

     それでも資金力を武器に世界から最先端の装置を大量調達していけば、中国はいずれ韓国や台湾を脅かす半導体大国になるかもしれない。「紅い半導体」を作り出す装置の市場で世界最大になる21年は、そんな勢力図変化の起点に位置付けられるようになるだろうか。

  • [ワシントン 5日 ロイター] - 世界銀行は、2025年6月までの期間について、中国に年間10億─15億ドルの低利融資を実施する新たな計画が5日の理事会で承認されたと発表した。米国のムニューシン財務長官や複数の議員は反対。
     
     ムニューシン氏は公聴会で、世銀理事会で米財務省を代表するメンバーが、4日に対中融資計画に反対を表明したと説明。
     世銀には低・中所得国対象の融資プログラムから中国を「卒業」させるよう求めると述べた。

     世銀は5年間の融資戦略計画で、中国の構造・環境改革への世銀の関与に理事会が「幅広い支持を表明した」と説明している。
     2019年度(6月30日終了)の対中融資実績は13億ドルと、17年度の約24億ドルから減少。新たな計画では、融資は過去5年の平均である18億ドルから「段階的に減少」する見通し。
     ただ、減少ペースはムニューシン長官が要求しているほど速くはない。同氏は中国は広域経済圏構想「一帯一路」の下で貧しい国々に独自の融資を行っており、国際機関の支援を受けるには余りにも資金力があると指摘してきた。

     米議会でも、世銀を通じて中国に貸し出された米国民の税金が人権侵害や米国との不公正な競争を可能にするとの懸念の声が強まっている。

     5日の上院本会議では、共和党のグラスリー財政委員長が中国新疆ウイグル自治区でのイスラム教少数民族ウイグル族の収容施設に絡む人権侵害疑惑を引き合いに出し、世銀の融資計画を批判した。
     「世銀は、市民の人権を侵害し、自国より弱い国を軍事的あるいは経済的に支配しようとする富裕国に米国民の税金を使って融資すべきではない」と訴えた。
     米国は増資や幹部の人選などの主要な世銀理事会の決定について事実上の拒否権を持つが、今回の対中融資計画は正式な採決を必要としなかった。

  • 最も市場をかき回したのは、引き続き米中貿易交渉に関しての部分合意を巡る思惑だった。まず株安材料となったのは、2日(月)にウィルバー・ロス商務長官が、FOXテレビとのインタビューで「(米中間の交渉が15日(日)までに合意できなければ)ドナルド・トランプ大統領は関税を引き上げると明確にしている」と述べたことだった。
     さらにそのトランプ大統領が訪問先のロンドンで、3日(火)に「中国との合意を大統領選挙後(2020年11月)まで待つのは良い考えだと思う」と述べたと報じられたため、「今月中の関税引き上げの可能性が高まった」と、市場に動揺が生じた。

     というのも、今月15日に予定されているのは「約1600億ドル分の対中輸入について」と金額が大きい。その中身もスマートフォン、ノートパソコン、玩具など、消費財が多く、関税引き上げによる価格上昇が個人消費の打撃になると懸念されるためだ(なお、こうした関税引き上げの可能性はすでに想定されているため、輸入業者は駆け込みでアメリカに輸入し通関している。そのため、そうした価格上昇の影響が出るとしても、先のことになる)。
     しかし4日(水)付のブルームバーグ通信は、匿名の事情に詳しい関係者の発言として、「15日に対中追加関税を発動する前に第1段階の合意を完了できる」との見解を紹介したため、一気に市場に安堵感が広がった。

     またアメリカの経済指標の内容も、同国の株価を押し下げた後、押し上げる方向に働いた。特に2日(月)発表の11月のISM製造業指数が、10月の48.3から48.1に低下したことが、驚きを持って迎えられたようだ。
     前月比でわずか0.2ポイント幅しか低下しなかったのに、株価の悪材料となったことは不思議に感じられるかもしれない。しかし最近のアメリカ(に限らないが)の株式市場では、「株価が堅調なのは、すでに発表された足元の経済統計や企業業績は確かに悪いが、最悪期は過ぎつつあり、これから改善するに決まっているからだ」と、今後の景気指標は良くなるはずとの決めつけが市場で横行していた。

     そうした空気のなか、ISM製造業指数も11月は49.2に上昇するとのエコノミスト予想の平均値だった。そうした勝手な期待が勝手に裏切られたため、同指数を受けて株価が反落したと考えられる。
     逆に週末金曜日の6日に発表された11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比で26.6万人もの増加をみせ、その日のアメリカの株価を大いに押し上げた。この増加の背景には、GMでストライキを行なっていた労働者が、職場に復帰したとの一時的要因はあるが、その影響は4万人強だと推察されており、それを除いても22万人を超える前月比での雇用増だ。素直に足元の雇用情勢はまだ強い、と解釈すべきなのだろう。

     このように、先週はドタバタとした市場展開となったが、結局週を通じてみれば、高値圏ながら日米等の株価は横ばい圏内だったと言える。また外貨相場は、むしろ外貨安・円高気味の推移で、前述の雇用統計を受けた米ドルの上昇も一時的に終わった。
    ■気がかりな日本国内の消費動向

     一方、目を日本の経済情勢に転じると、消費増税の影響については、楽観・悲観双方の見解があったものの、「消費増税前の駆け込みがあまり大きくなかったので、その反動も小さいものになるはずだ」、との見方が広まっていたように思う。

     だが6日(金)に公表された10月の家計調査によれば、同月の世帯の消費支出(単身者世帯を除く)は、前年比で5.1%も減少した。これは、前回5%の消費税を8%に引き上げた2014年4月(同4.6%減)よりも減少率が高いという結果となっている。
     10月の消費動向については、大型台風の影響もあったと推察され、すべてが消費増税の影響とも言い難い。しかし、このところ企業が発表している、小売りなどの11月既存店売上高の前年比をみると、たとえばファーストリテイリング(国内ユニクロ分)が5.5%減、アークランドサービス(かつや分)が3.2%減、ジーンズメイトが5.4%減、幸楽苑ホールディングスが11.8%減となっている(台風による工場操業停止などの特殊要因もある)。しかもこれら各社は、3カ月連続の前年比マイナスだ。つまり、すでに消費増税前の9月から10月、11月と不振を示している。
     もちろん、他に売り上げを伸ばしている消費関連企業も多いため、安易に結論を求めるべきではない(まだもう少し売り上げ動向などの様子を見た方がよい)のだろうが、消費増税のいかんにかかわらず「日本の消費の勢いが弱くなり続けているのではないか」、という懸念はぬぐえない。
    日本を含め、製造業の業況にはまだ逆風が吹いている。それに加えて日本国内の消費も厳しさを増すとなれば、日本の国内株価は経済・業績面からのサポートを失っていくだろう。
     さて今週は、主要国の株価にとっては、材料が多い。FOMC(米連邦公開市場委員会)やECB(欧州中央銀行)会合、アメリカの議会下院における弾劾の動き、同国の小売売上高、日本の景気ウォッチャー調査や日銀短観、イギリスの総選挙などだ。ただそれらの材料よりも、市場に波乱を引き起こしそうなのは、やはり米中部分合意に関する通商交渉だろう。

     前述のロス商務長官の発言は、たまたま、とか、思いつき、ではない。FOXテレビのインタビューに加えて、3日(火)にCNBCテレビに対しても「15日までに合意できなければ関税を引き上げる」、との同趣旨の発言を行なっている。また、ラリー・クドローNEC(国家経済会議)委員長(対中穏健派とみられている)も、6日(金)のブルームバーグテレビのインタビューで、米中間でほぼ24時間体制で詰めの協議を行なっていると述べつつも、「12月15日は非常に重要な日」「合意がまとまらない場合、現行法に基づき関税は復活する」と語っている。ここまで主要閣僚が発言しているということは、政権内で「こうした形で表立って中国に圧力をかける」という点で、合意がなされているのだろう。
    ■日本株も下振れの懸念がある

     最終的に部分合意がどういう展開をみせるか、という肝心の点だが、筆者が独自取材して得られた情報では、細部において米中間の隔たりがまだ大きいため、合意はどうやら来年になりそうだ(1月中、中国の旧正月の前)と聞いている。

     では15日に追加関税が発動されるかと言えば、それが景況感や市場に与える影響が大きいため、たとえば1カ月ほど関税発動を延期する、と米政権が表明する展開になると予想している。
     ただ、交渉事においては、交渉の過程で話が思いもかけない方向に展開し、誰も望まない結果になることはよくある。米政権内でも考え方は一枚岩ではなく、たとえば対中強硬派が「とりあえず関税を引き上げておいて、部分合意が成ったら撤回すればよい」と主張し、そちらに話が転ぶことは否定できない。あるいは、筆者の予想通り、最終的に関税引き上げが大幅に延期されるとしても、その発表が遅れれば遅れるほど、15日が迫って市場が不安にとらわれる、という展開はあるだろう。
     このため、今週の国内株価動向は、週明け月曜日の滑り出しは、先週末のアメリカの雇用統計を受けて株価が上振れして始まりそうだが、徐々に追加関税発動の有無を巡る不安心理からアメリカの株価や米ドル相場が下振れすることに巻き込まれ、日本株も下振れする恐れが強まっていくと懸念する。もちろん、そうした懸念が実現せず、筆者が考えているように、とりあえず追加関税が先送りされれば(そしてそうした先送りの決定が一日でも早くなされれば)株価下振れの恐れは小さいものとなる。
     株価が大きく下落する前に、米政権が関税先送りを公表する、というシナリオを前提に、今週の日経平均株価は、2万3000~2万3600円を予想する。不幸にして、米中部分合意の展開が悲観的な方向に向かった場合は、さらなる下値を想定すべきことになる。

  • トランプ米大統領は27日、香港での人権尊重や民主主義確立を支援する「香港人権・民主主義法」に署名し、同法が成立した。中国は「内政干渉」と反発し、報復措置をとる構えを見せる。米中対立は貿易やハイテク分野から人権問題に拡大して複雑さを増している。部分合意へ大詰めを迎えていた貿易交渉にも暗雲が垂れ込めてきた。

    米国が中国に農産物やLNGの輸入に数値目標の設定を要求しているのに対し、中国は米国が課す制裁関税の大幅撤回を求め、厳しい条件闘争が続いている。

    米政府は12月15日に、スマホなど1600億ドル(約17兆円)相当の中国製品に15%の追加関税を課す制裁関税「第4弾」を発動する予定。国内景気の減速が続く中国は貿易戦争をひとまず止めたいのが本音だが、国家主権に関わる問題での譲歩は難しい。チリで中止になったAPEC首脳会議を20年1月に米国で開催し、習近平国家主席が訪米する案も浮上しており、貿易交渉は合意と決裂を両睨みするぎりぎりの局面に差し掛かる。

    米国で「香港人権・民主主義法」が成立し、米中対立が再び激しくなりそうになってきた。米中貿易協議が最終段階に差し掛かり、好転の方向に向かっているとの雪解けムードから、一気に再び緊張感が高まる事態になりかねない。米中それぞれの対応が注目される。


    米国で香港人権法が成立し暗雲もと言いつつ第一段階の合意はあるだろうと思う。
    がうまくいかなければ、年越しまで先延ばしかな。

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