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日経平均株価【998407】の掲示板 2020/04/13


 同じく加藤ひとみ氏も「内部通報制度」の専門家であり、上場企業など約1200社の法務実務担当者のサロン「経営法友会」で、「内部通報制度ガイドライン」を作成した経験を持っている。加藤氏は株主提案における取締役会議長候補でもある。

 こうした候補者の人選から見えてくるのは、会長や社長を筆頭とした社内役員、経営者の監視体制の強化である。二度と地面師事件のような不祥事を起こさないように、経営者トップに眼を光らせようというわけだ。

 社外候補の中でもとりわけ異色なのはアメリカ人のクリストファー・ダグラス・ブレイディ氏だろう。父親にジョージ・H・W・ブッシュ(パパ・ブッシュ)大統領時の財務長官ニコラス・ブレイディ氏を持つ彼は、安全保障関連の投資の専門家だ。

 いまやアメリカでは安全保障の一部になったテロ資金への移転、いわゆるマネーロンダリングに重大な関心を寄せるブレイディ氏は、積水ハウスの地面師事件の資金が、三菱UFJ銀行を介して闇に消えたことに強い懸念を示しているという。

 さらに和田氏の株主提案は、マネーロンダリングの防止やコーポレート・ガバナンス改革を提唱する弁護士らからのアドバイスを受けているほか、日本のコーポレート・ガバナンス研究の第一人者である若杉敬明東大名誉教授が指南役を務めており、3月には和田氏や取締役候補者、マスコミ関係者を集めて「ガバナンス勉強会」まで開いていた。

地面師事件と「不正取引」
 和田氏らの「株主提案」側は「SAVE SEKISUI HOUSE」(「セーブ積水」でのグーグル検索)というキャンペーンサイトで積極的に情報発信をし、マスコミの取材に精力的に応じている一方で、会社側はマスコミを遠ざけている。特に地面師事件について数々の疑惑を報じられている会長の阿部氏や副会長の稲垣氏は沈黙を続けている。

 筆者は18年1月に和田氏が阿部氏によるクーデターで失脚したときから、地面師事件と積水ハウスのコーポレート・ガバナンスの問題について取材をしている。その間、積水ハウスの阿部氏や稲垣氏に対して、再三再四インタビューを申し込んできたが、応じてもらったことは一度もない。

 よって筆者は積水ハウスの経営陣がいったい何を考えているのかは正確にはつかめていないため、会社側の主張を和田氏らの株主提案側の意見と併記するのは本稿では差し控えたい。会社側の主張は「招集通知書」にたっぷりと記載があるので、それをご覧いただくほかないだろう。

 この招集通知書には和田氏らの株主提案についての会社側の反対意見が掲載されているが、両者には不祥事対応についての著しい見解の相違が伺え、その溝はかなり深い。

 たとえば和田氏ら株主側は、株主側の主張は、昨今の世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)やSDG’s(持続可能な開発目標)の機運を背景に、不祥事対応においても社会的責任を重視し、あの地面師事件についても「不正取引」と断じている。

 地面師事件は17年の6月に発覚したが、その前年に示された「犯罪収益移転防止法」の宅地建物取引業者に対して示されたガイドラインが公表された直後に発生。上場企業であり不動産取引の知見が極めて高いはずの積水ハウスが詐欺に騙されるという信じがたい取引によって約55億円が闇と消えたことを鑑みても、その「責任は重い」というわけだ。ちなみにこの取引の決済権者は、現会長の阿部氏だった。

 株主提案側がこの地面師事件を「取引実態に即して社会性を逸脱している」(和田氏)と、社会的責任に言及して、会社側を批判しているのに対して、それに応じる会社側は「(警察の捜査などで)不正取引が検出されていない」と、その違法性の有る、無しにこだわっている。

 会長の阿部氏も副会長の稲垣氏も79歳の和田氏より10歳ちかく若い。さらに社長の仲井嘉浩氏に至っては52歳で京大卒の秀才だ。ところが“老害批判”を受けているはずの和田氏の方が最先端のガバナンス改革を提唱している。議決権を保有する株主は、この構図をどう捉え、どのような判断を下すのだろうか。

 注目の株主総会は4月23日、午前10時から大阪で行われる。