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財政リスクの「警鐘」ならず 無風CDS「日本化」映す 2/2
日経 編集委員 高井宏章 グローバルマーケット2021年9月5日 12:00 [有料会員限定]

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストはCDSの現状について「財政の持続可能性の捉え方の変化を映しているとも解釈できる。低金利と低インフレが常態化すれば、利払い負担で政府債務が発散するリスクは小さくなるためだ」と話す。デフレ・ディスインフレ体質で金利が上がらず、政府債務の膨張と国債市場の安定が共存する――。「失われた20年」で日本がたどった軌跡だ。先進国経済の「日本化」が財政悪化とデフォルトリスクの連動性を下げる構図が浮かぶ。

河野氏は「欧米では金融政策の効果が薄れるなかで財政政策の役割が再評価されている。経済の長期低迷観測がMMT的な政策と共鳴している」とみる。MMTは現代貨幣理論の略称で、政府はインフレが加速しない範囲で財政支出を拡大すべきだなどと主張する。経済学の主流派には懐疑論が根強いが、コロナ禍への各国の対応はMMTの様相を呈しつつある。「通貨発行権を持つ国は原理的にデフォルトしない」というMMTの柱のひとつは、CDSの保証料率の低下と符合する。

もっとも、今の安定が盤石とは言いがたい。

みずほ証券の大橋氏は「主要国はともかく、新興国がMMT的な政策をどこまで維持できるかは不透明感が強い。『コロナ後』のさらに先にやってくる景気後退局面では、インフレ進行や格下げ圧力で従来型の債務危機が起きかねない」と警戒する。BNPパリバの河野氏も「MMT的な政策は先進国で資産バブルの膨張と崩壊という副作用を招く可能性が高い。新興国には通貨の減価とインフレのスパイラルに陥るリスクが今後もくすぶる」とみる。

パンデミックを機に進む構造変化はゲームのルールを根底から変えるのか。それとも「財政リスクの消失」はカネ余りが生んだあだ花なのか。クレジット市場は過去、いち早く危機に警鐘をならしてきた。世界の政府債務は空前の規模に膨らんでいる。再び「炭鉱のカナリア」が脚光を浴びるような場面があれば、経済やマーケットの振幅もそれに見合ったものになりうると考えておいた方がよいだろう。(編集委員 高井宏章)