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円マイナス金利の裏に海外勢 中曽副総裁が分析
編集委員 清水功哉
2014/11/25 17:55
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 「外国の投資家も、円の金利をマイナスに押し下げるうえで重要な役割を果たしている」――。日本の短期国債でみられるようになったマイナス利回りに関連し、日銀の中曽宏副総裁が25日の講演でそんな分析を示した。現在、為替スワップと呼ばれる取引を通じて、海外の投資家はマイナス金利で円を借りられるようになっている。海外勢が日本の短期国債を買う際の元手はそうした「格安コストの円」なので、短期国債の利回りがゼロ未満でも利ざやを得られる。結果的に外国人投資家の短期国債投資は衰えず、利回りのマイナス化に拍車をかける構図だという。


為替スワップで円金利がマイナスになっている背景は、海外投資家の動きだけなのか=AP
 中曽氏がいう通り、短期国債の流通利回りは9月にゼロ未満に低下。その後もおおむねマイナス状態が続いてきた。これまでその原因といわれてきたのは、主に日銀の量的・質的緩和(通称、異次元緩和)のもとでの活発な短期国債買い入れだった。中曽氏もその点は認めており、講演で「(異次元緩和のもとで)短期流動資産の金利は全般的にゼロ近傍まで低下している」と指摘。それでも投資家は様々な担保として使うために一定量の短期国債を購入せざるをえないため、「そのレートは容易にマイナスになってしまう」と語った。

■国際的にドルの需給が逼迫

 ただ、円金利のマイナス化の背景には外国人投資家の動きもあり、そこに国際的なドル需給の逼迫が関係していると中曽氏は分析する。

 ここで重要なのは、上述の為替スワップ取引だ。海外勢のドルと日本の投資家の円を、それぞれの金利を払いながら一定期間交換する取引で、海外投資家はドルを事実上の担保に円を借り、日本の投資家は円を事実上の担保にドルを借りるイメージになる。現在、この取引で海外投資家は有利な条件(マイナスの円金利)を享受し、日本の投資家は従来より不利な条件(高めのドル金利)をのむことを余儀なくされている。そのようにして海外勢が手に入れたマイナス金利の円が、短期国債利回りのマイナス化に拍車をかけている図式なのである。

 こうした状況になっている背景として、中曽氏は「ドル調達需要の高まりと、ドル供給姿勢の消極化の双方の要因」を挙げた。結果的にドルの需給は逼迫。日本勢はドルを手に入れにくくなり、以前より不利な条件でのドル調達を余儀なくされているわけだ。その半面、海外勢は円を手に入れる際の条件が有利になっている。

 ドル調達需要が増している理由としては「我が国の投資家が異次元緩和を受けて、ポートフォリオの一部を外貨建て資産にシフトさせていることがある」(中曽氏)という。一方、ドル供給が減っている要因に関連して、中曽氏は「米連邦準備理事会(FRB)の利上げ開始観測のもとで、ドルの出し手の貸出態度がタイト化している」との市場関係者の指摘を紹介した(一般に金利の先高観が広がると、金利が上がってから貸した方が得になるという思惑から、貸出態度が厳しくなる)。

 興味深い分析で、いずれもその通りだろう。ただ、筆者が気になったのは、為替スワップでの円金利マイナス化の裏側にもうひとつ別の要因があるとの声もマーケットで聞かれる点だ。消費再増税延期などによる財政悪化見通しを背景とした日本の信用力低下である。

■日本の信用力低下もマイナス金利の背景?

 例えば、「日本の信用リスク拡大は、海外投資家がドルを担保に円を調達する際に要求するプレミアムの上昇につながる」(アール・ビー・エス証券の丹治倫敦・チーフ債券ストラテジスト)という指摘がある。海外投資家が円を調達すると、それを日本の国債で運用することが多い。ところが日本国債の信用力が低下しているなら、海外勢は、そのぶん円調達コストを下げるように求める。そんなふうに単純化した図式で考えれば、理解しやすいかもしれない。

 円金利のマイナス化に日本の信用力低下が本当に関係しているのか。市場でも見方は分かれるようだが、この点について中曽氏の見解はどうなのかを聞きたかった気がする。