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  • 2021/05/29 13:34
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
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  • 米国株式市場=ダウ・S&P3週ぶり値上がり、ハイテク底堅く

    [ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国株式市場は小幅高で取引を終えた。インフレ指標が予想以上に上昇したものの、相場は底堅く推移し、ダウ工業株30種、S&P総合500種指数が週間で3週ぶりの値上がりとなった。

    31日はメモリアルデーのため休場となる。

    4月の米個人所得・消費統計は、連邦準備理事会(FRB)が物価の目安として注目する食品・エネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)価格指数が前年同月比3.1%上昇し、1992年7月以来の大幅な伸びを記録した。市場予想は2.9%上昇だった。

    グローバルトのシニアポートフォリオマネジャー、キース・ブキャナン氏は「コアPCE指数が高かったものの、実際にはコンセンサスをそれほど上回っていなかった。ベース効果が間違いなく働いており、統計をゆがめている」と指摘した。

    週間では、ダウ平均が0.94%高、ナスダック総合指数が2.06%高、S&P500が1.17%高。月間では、ダウ平均が1.94%高、ナスダックが1.53%安、S&P500が0.55%高。

    国債利回りの低下に伴い情報技術などグロース株が値上がりした。顧客管理ソフト大手のセールスフォース・ドットコムは5.43%高。第1・四半期決算は、利益が市場予想を上回った。新型コロナ禍を受けた在宅勤務の広がりでクラウドベースのソフトウエア需要が増加。同社は通年の収益見通しを引き上げた。

    米取引所の合算出来高は103億2000万株。直近20営業日の平均は105億2000万株。

    ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.63対1の比率で上回った。ナスダックでは1.12対1で値上がり銘柄数が多かった。

    終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

    ダウ工業株30種 34529.45 +64.81 +0.19 34558.5 34631.1 34520.0

    0 1 9

    前営業日終値 34464.64

    ナスダック総合 13748.74 +12.46 +0.09 13792.0 13820.8 13747.6

    5 7 1

    前営業日終値 13736.28

    S&P総合500種 4204.11 +3.23 +0.08 4210.77 4218.36 4203.57

    前営業日終値 4200.88

    ダウ輸送株20種 15750.31 +40.68 +0.26

    ダウ公共株15種 897.35 +4.43 +0.50

    フィラデルフィア半導体 3186.56 +27.29 +0.86

    VIX指数 16.76 +0.02 +0.12

    S&P一般消費財 1380.08 -3.14 -0.23

    S&P素材 547.32 -0.83 -0.15

    S&P工業 886.44 -0.86 -0.10

    S&P主要消費財 725.46 +0.02 0.00

    S&P金融 630.13 +0.21 +0.03

    S&P不動産 269.98 +1.73 +0.65

    S&Pエネルギー 389.82 +0.28 +0.07

    S&Pヘルスケア 1437.44 +4.28 +0.30

    S&P通信サービス 257.37 -0.81 -0.31

    S&P情報技術 2426.93 +7.36 +0.30

    S&P公益事業 329.58 +1.51 +0.46

    NYSE出来高 10.57億株

    シカゴ日経先物6月限 ドル建て 29020 - 100 大阪比

    シカゴ日経先物6月限 円建て 29020 - 100 大阪比

  • >>51

    S&P業種別・騰落率ランキング

    指数名 
    1 金融 +1.85%
    2 素材 +1.68%
    3 情報技術(IT) +1.44%
    4 コミュニケーション +1.11%
    5 資本財・サービス +1.07%
    6 一般消費財 +1.03%
    7 エネルギー +0.93%
    8 ヘルスケア +0.64%
    9 不動産 +0.58%
    10 生活必需品 -0.16%
    11 公益事業 -0.17%


    NY主要株価  

    <情報技術セクター>
    インテル
    59.24 -3.33 (-5.32%)
    エヌビディア
    610.61 +16.6 (+2.79%)
    アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
    82.76 +3.7 (+4.68%)
    マイクロソフト
    261.15 +3.98 (+1.55%)
    ビザ
    230 +2.43 (+1.07%)
    IBM
    142.43 +1.15 (+0.81%)
    アップル
    134.32 +2.38 (+1.8%)
    シスコ・システムズ
    51.91 +0.41 (+0.8%)
    オラクル
    74.97 +0.1 (+0.13%)
    アドビ
    515.84 +8.55 (+1.69%)
    セールスフォース・ドットコム
    233.51 +2.16 (+0.93%)

    <金融セクター>
    JPモルガン・チェース
    150.19 +2.82 (+1.91%)
    バンク・オブ・アメリカ(BofA)
    39.18 +0.82 (+2.14%)
    シティグループ
    71.38 +1.57 (+2.25%)
    ゴールドマン・サックス
    339.35 +8.5 (+2.57%)
    アメリカン・エキスプレス
    144.33 -2.83 (-1.92%)
    トラベラーズ
    157.84 +1.97 (+1.26%)

    <ヘルスケアセクター>
    アムジェン
    257.03 +1.98 (+0.78%)
    メルク
    77.88 -0.08 (-0.1%)
    ファイザー
    38.66 +0.02 (+0.05%)
    ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
    165.52 +0.34 (+0.21%)
    ユナイテッドヘルス
    400.31 +3.77 (+0.95%)
    メドトロニック
    131.2 +1.35 (+1.04%)
    ギリアド・サイエンシズ
    65.48 -0.16 (-0.24%)

    <一般消費財セクター>
    GM
    57.53 +0.87 (+1.54%)
    フォード・モーター
    12.22 +0.28 (+2.35%)
    テスラ
    729.4 +9.71 (+1.35%)
    アマゾン・ドット・コム
    3340.88 +31.84 (+0.96%)
    ホーム・デポ
    323.89 +2.43 (+0.76%)
    メーシーズ
    16.92 +0.02 (+0.12%)
    ナイキ
    130.19 +1.01 (+0.78%)
    マクドナルド
    234.58 +1.62 (+0.7%)
    アリババ
    232.08 +2.73 (+1.19%)

    <コミュニケーション・サービス・セクター>
    アルファベット(クラスA)
    2299.93 +47.41 (+2.10%)
    フェイスブック
    301.13 +4.61 (+1.55%)
    ウォルト・ディズニー
    183.02 +0.26 (+0.14%)
    ネットフリックス
    505.55 -3.23 (-0.63%)
    ツイッター
    67.02 +2.71 (+4.21%)
    バイアコムCBS
    41.71 +0.98 (+2.41%)
    AT&T
    31.4 +0.04 (+0.13%)
    ベライゾン・コミュニケーションズ
    57.3 +0.02 (+0.03%)

    <資本財・サービスセクター>
    ボーイング
    238.38 +4.05 (+1.73%)
    キャタピラー
    230.11 +2.25 (+0.99%)
    ゼネラル・エレクトリック(GE)
    13.55 +0.14 (+1.04%)
    レイセオン・テクノロジーズ
    80.54 +1.8 (+2.29%)
    3M
    202.2 +1.3 (+0.65%)
    ハネウェル・インターナショナル
    224.5 -4.76 (-2.08%)

    <生活必需品セクター>
    ウォルマート
    139.9 +0.23 (+0.16%)
    コストコ・ホールセール
    373.28 +2.02 (+0.54%)
    コカ・コーラ
    54.47 +0.03 (+0.06%)
    P&G
    133.94 -0.69 (-0.51%)
    ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス
    53.02 +0.44 (+0.84%)

    <エネルギー・セクター>
    エクソン・モービル
    55.57 +0.3 (+0.54%)
    シェブロン
    101.55 +0.6 (+0.59%)
    シュルンベルジェ
    25.71 +0.46 (+1.82%)

    <公益事業セクター>
    ネクステラ・エナジー
    78.24 -0.08 (-0.1%)
    デューク・エナジー
    99.85 -0.23 (-0.23%)
    ドミニオン・エナジー
    79.38 -0.04 (-0.05%)

    <不動産セクター>
    アメリカン・タワー
    254.04 +2.5 (+0.99%)
    サイモン・プロパティー
    116.92 +1.27 (+1.1%)
    クラウン・キャッスル
    187.18 +2.97 (+1.61%)
    プロロジス
    114.87 +0.19 (+0.17%)
    デジタル・リアルティー・トラスト
    149.04 -0.01 (-0.01%)

    <マテリアルセクター>
    ダウ・インク
    62.11 +1.18 (+1.94%)
    US スチール
    23.71 +1.44 (+6.47%)
    ニューモント
    65.72 +0.02 (+0.03%)
    フリーポート・マクモラン
    36.54 +1.8 (+5.18%)
    アルコア
    34.71 +1.5 (+4.52%)

  • NY市場概況-S&P500が1.1%高と反発 週間では5週ぶりの小幅反落

     23日のNY株式相場は反発。前日はバイデン米大統領が富裕層に対するキャピタルゲイン課税を強化する方針との報道を受けて主要3指数がそろって0.9%程度下落したが、共和党の反対などで大幅増税の実現性が低いとの見方などから買い戻しが優勢となった。前日に321ドル下落したダウ平均は227.59ドル高(+0.67%)と反発。インテルが5%超下落したものの、ゴールドマン・サックスが2.6%上昇し、ダウ・インク、JPモルガン・チェース、アップル、ボーイングも1.7%超上昇した。S&P500も1.09%高と反発。一時、1.43%高の4194.17ポイントまで上昇し、1週間ぶりに史上最高値を更新した。ハイテク株主体のナスダック総合も1.44%高と反発し、前日の下げ幅を取り戻した。S&P500の11セクターは公益、生活必需品のディフェンシブ・セクターが0.2%未満の下落となったが、金融、素材、IT、コミュニケーション、資本財、一般消費財が1%超上昇した。

     週間では、ダウ平均が0.46%安、S&P500が0.13%安とともに5週ぶりに反落。ナスダック総合も0.25%安と4週ぶりに反落した。

     決算発表銘柄はSVBフィナンシャルが8.7%高、シーゲート・テクノロジーが6.0%高、ビープルズ・ユナイテッド・ファイナンシャルが3.2%高となった一方、キンバリークラークが5.9%安、インテルが5.3%安。インテルは1-3月期の売上高と利益が市場予想を上回ったが、弱い4-6月期見通しが嫌気された。経済指標では3月新築住宅販売件数が102.1万件と市場予想の88.6万件を大きく上回り、2006年11月以来の高水準となった。


    指標 寄値 高値 安値 終値 前日比 騰落率
    NYダウ 33804.52 34157.57 33713.29 34043.49 +227.59 +0.67
    S&P500 4138.78 4194.17 4138.78 4180.17 +45.19 +1.09
    ナスダック総合 13861.37 14062.74 13856.83 14016.81 +198.40 +1.44
    CME225先物 28880 29310 28760 29215 +245.00 +0.85
    FT100(英) 6938.56 6938.56 6938.56 6938.56 +0.32 +0.00
    DAX(独) 15267.76 15309.09 15149.35 15279.62 -40.90 -0.26
    ドル/円 107.95 108.13 107.47 107.89 -0.06 -0.05
    NY原油先物 61.65 62.43 61.25 62.14 +0.71 +1.16
    NY金先物 1784 1796.3 1769.5 1777.8 -4.20 -0.24

    ※CME225先物(円建て)の前日比は前日の大証日中終値比を記載。

  • どうみてもおかしなコスト計算
     人件費のコスト削減は悪くはなかった。スタンフォード大の新卒者を年収4万5000ドルで使っているのだから、まずまずだ。だが、設備や材料のコストは悪夢としか言いようがなかった。材料の記録は自社製のソフトで処理していたが、使いにくいせいか、利用している社員とそうでない社員がいた。ソフトを使った社員は、たびたび大きなミスをしていた。

     まず使い方がまずかった。試作車の部品にかかったコストをもとに、その部品を大口購入した場合に何割くらいディスカウントがきくかを予想してコスト計算を行っていたのだ。実際に調達先が承諾する価格かどうかを商談もせずにである。

     ともかく、このソフトがはじきだしたロードスターのコストは1台あたり6万8000ドルで、それでもテスラに3万ドルの利益が入ってくると計算されていたという。どうみてもおかしいのだが、これが取締役会に報告されていた数字だったのだ。

     2007年半ば、ワトキンスは調査結果の報告にマスクのもとを訪れた。マスクは悪い数字が出てくることを覚悟していたようだ。「実は、申し上げにくいのですが……」ワトキンスが切り出す。その表情から、「実は20万ドルもかかっていました」と言われたらどうしようかと、マスクは固唾を飲んだ。だが、出て来た数字は6万8000ドル。

     いや、これ自体、ひどい数字に違いないのだが、マスクはむしろ拍子抜けしたのだろう。生産工程を簡素化し、売り上げが伸びていけば、クルマの価格は大きく下がるはずと自信をのぞかせた。何しろ、テスラとしては、「8万5000ドルくらいで売りたい」としか計画していなかったのだ。

     「完全な量産に入っても、17万ドルなんて言われたら、さすがに異常ですけど。だって全体の3分の1は完成してもいないんだから、そこで騒いでも仕方ないですよ」それが当時のマスクの心境だったという。

     この混乱状況を脱しようと、CEOエバーハードも心機一転を誓う。そのころ、環境保護技術の分野で有名なベンチャーキャピタリスト、ジョン・ドーアの講演を聴く機会に恵まれた。ドーアは「自らの財産と人生を投じて地球を温暖化から救いたい、それが子供たちの世代のためにできることだから」と訴えた。

     感動したエバーハードは、すぐにテスラの本社に取って返し、社員の前で同じ思いを伝えた。100人ほどの社員を前に、エバーハードは自分の娘の写真をプロジェクターで大きく映し出すと、「私が何を言おうとしているかわかりますか」と社員に問う。ある社員が「この子にロードスターを運転してもらいたいか」と答えた。「いや、そうじゃない」とエバーハード。

     「この子がクルマを乗り回す年齢になるころには、クルマは、現在の我々の常識とはまったく違うものになっているはずです。電話もそうでした。もはやコードがついて壁にかけてある機器ではありません。そういう未来を作ることができるのは、あなたたちしかいない。だから我々はこのクルマを作っているのです」そして特に重要なエンジニアらに感謝の念を表し、全員の前で労をねぎらった。

    マスクとの長年の確執

     だが、この程度のことで自らのイメージをがらりと変えることはできない。多くのエンジニアの間には、CEOとしてのエバーハードの能力はもはや限界という思いが依然として残っていた。

     一方、古参の社員はエバーハードの技術的なセンスを常に評価していた。実際、テスラをゼロから類い稀な技術者集団に育て上げたのは彼の手腕によるところが大きい。だが、残念ながら、技術以外の面に配慮が行き届かなかったのも事実だ。研究開発段階から量産段階へ会社を導く能力に疑問符が付いていた。

     法外な製造コスト、欠陥トランスミッション、非効率な下請け業者などの問題が重なり、テスラの雲行きが怪しくなっていた。熱狂的な客はすでに多額の前金を払って納車待ちだった。だが、納車予定日がずるずると延期になるばかりで、一度は胸をときめかせたファンが、テスラ、そして経営者のエバーハードに背を向け始めた。ライアンズが言う。

     「不吉な予感はしていましたよ。会社を起こした人間が必ずしも長期的に組織のリーダーにふさわしいとは限りません。それはみなわかっています。ただ、まさにそういう状況が目の前で起こると、本当に厄介なんですよ」

     エバーハードとマスクは、クルマの設計面を巡って長年衝突があったが、たいていはうまく乗り越えてきた。バッテリーの技術やそれが世界に与えるインパクトについても、基本的にビジョンを共有していた。だが、どちらも相手の愚かな言動を見て見ぬふりができないタチだ。

     ワトキンスがあぶり出したロードスターのコスト問題をめぐって悪化した2人の関係は修復のしようがなかった。マスクには、エバーハードの経営がでたらめだったために、部品コストの増加を見逃したように見えた。取締役会を欺き、事態の深刻さを覆い隠したエバーハードの行動は背信行為だというのが、マスクの見立てだった。
    ある日、街を歩いていたエバーハードの携帯電話が鳴る。電話の相手はマスク。わずか一言、二言の会話で終わった。CEO解任の通告だった。(翻訳 斎藤栄一郎)

  • 快適性にこだわるマスク、悪夢のようなコスト。衝突は起きるべくして起きた

    ----------
    気候変動への認識の変化が自動車産業界を大きく変え、電気自動車の開発にトップ企業がしのぎを削るようになった。火付け役にして先頭ランナーはもちろん、イーロン・マスクが率いるテスラモーターズだ。2人の起業家が「テスラモーターズ」を立ち上げ、イーロン・マスクが出資したのが2003年。株式時価総額が世界7位になった今からは信じられないことだが、創業当初、テスラの事業計画は周囲から一笑に付されていた。しかし創業者には気候変動を何とか止めたいという強い信念があった。どんな思いと先見性が世界市場を開拓したのだろうか。創業前から最初の試作車「ロードスター」完成までの「100%の電気自動車」誕生史を、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2016年グランプリを受賞した『イーロン・マスク 未来を創る男』第7章「100%の電気自動車」から4回にわたってご紹介しよう。
    ----------

    シリコンバレー流のクルマ作り

     一連のお祭り騒ぎに時間を割いた後、テスラは再び研究開発に力を注ぐ。幸いテスラにとっては追い風がある。コンピュータ技術の進歩である。小規模の自動車メーカーでも、大手並みの力を発揮できるようになった。

     昔はクルマを何台も使って衝突試験を実施しなければならなかったが、テスラにそんなことはできないし、その必要性もなかった。ロードスターの第3の試作車も大手メーカーと同じように衝突試験施設で試験を受けたが、最高水準のカメラなど画像処理技術が利用できる。コンピュータシミュレーションを駆使した試験を大量に実施するため、壊れたクルマの山を作らずに済むのだ。

     長い歴史の中でさまざまな慣行ができあがっていた自動車業界で、テスラのエンジニアはシリコンバレー流を持ち込むことがたびたびあった。

     たとえば、ブレーキテスト用のトラックはスウェーデン北部の北極圏に近いところにある。広大な氷原で自動車の調整をするのだが、通常は3日間ほど走行させ続けてデータを収集し、何週間もかかってチューニングを重ねていくのが一般的だ。だからこのチューニングだけで一冬かかる。ところがテスラは、ロードスターと一緒にエンジニアを送り込み、現地でデータ分析をしてしまう。調整の必要があれば、その場でエンジニアがプログラムをいじって、すぐに氷原で再試験するといった具合だ。

     「BMWなら関係会社が3社か4社集まって会議をして、責任のなすりつけあいが始まりますよ。うちは全部自分たちで直すので」とターペニングは胸を張る。

     テスラでは、創業当初からエンジニアの間でエバーハードの即決即断力が高く評価されていた。実際、状況分析に時間を取られすぎるようなことはなかった。ある攻略方法でチャレンジして失敗しても、まだ時間があるなら新しいやり方で再挑戦すればいいからだ。

     ロードスターの開発遅れが発生したのは、マスクがあれこれ変更を命じたためだ。マスクはとにかく快適性にこだわり、シートやドアにいたるまで変更に次ぐ変更を要求した。ボティーのカーボンファイバー化を優先し、ドアの電子センサーを採用したのもマスクの求めに応じたものだ。こうすれば指で触れるだけでドアを開錠できる。

    初期テスラ最大の失敗

     ただ、こうした機能のおかげでプロジェクト全体の進行が遅れたとエバーハードは愚痴をこぼす。多くのエンジニアも同じ思いだ。その点についてはバーディチェフスキーの説明が参考になるだろう。

     「当時、イーロンの命令は絶対で、どんなに理不尽でも応じるしかなかったですね。だから会社全体がマーティンに同情的でした。いつも現場にいたのは彼ですから。現場はとにかく一刻も早く出荷したかったんです」

     2007年半ばごろにはテスラの社員数は260人に増え、もはやテスラの前に不可能はないかに見えた。すでに世界最速にして最高に華麗な電気自動車をゼロから生み出した実績がある。次は量産だ。だが、そこに待ち構えていたのは、倒産を覚悟させるほどの過酷な状況だった。

     テスラ経営陣が初期にしでかした最大の失敗は、トランスミッションシステムの想定ミスだった。ロードスターのスピードこそが世間の注目を浴び、運転の楽しさにつながるとの期待から、常に「時速0─60マイル加速」の性能にこだわり続けた。テスラのエンジニアは、モーターから車輪への力の伝達機構であるトランスミッションを2速式でいこうと決めていた。1段目のギヤは時速0─60マイル加速で4秒未満を達成、2段目のギヤで時速130マイル(時速約209キロ)にまで加速する。このトランスミッションの設計・製造を英国の専門業者に委託した。

     「あのロバート・フルトンが蒸気機関を作ったころからトランスミッションはあったわけですから、単に業者にオーダーすればいいと思うじゃないですか。ところが最初に納品されたトランスミッションはわずか40秒しかもちませんでした」とエンジニアのビル・カリーは苦笑する。社員番号86、シリコンバレー出身の技術者だ。

     1段目のギヤから2段目に切り替わるところでスピードを処理しきれずに壊れてしまうのだ。モーターとうまく連係できなければ、やがてはクルマに致命的なダメージが生じる。即座にライアンズらが問題の解決に当たった。他の業者を探しまわったのだが、ここで困ったことに気づく。どうやら業者側は、こちらがシリコンバレーの弱小ベンチャーと知ったとたんにナメてかかり、腕利きの「一軍」チームに任せていないようなのだ。専門家に壊れたトランスミッションの原因分析をしてもらったところ、14もの問題点が見つかった。

     テスラとしては2007年11月にロードスターをデビューさせたい。だが、トランスミッションの問題が解決できていない。2008年1月1日までに量産を開始できなければ、トランスミッションを一から考え直さなければならない。

    エバーハードの経営手腕に疑問符
     テスラは海外でも問題を抱えていた。最も若手の元気なエンジニアチームをタイに派遣し、バッテリー工場の設立を任せていた。

     現地の提携先企業は熱心ではあったが、必ずしも生産能力が高いわけではなかった。テスラのエンジニアチームは、現地に飛んだら最先端のバッテリー工場の建設を管理するよう指示されていた。だが、現地で見たものは工場どころか、コンクリートの基礎の上に柱が何本か立ててあって屋根があるだけの掘っ立て小屋だった。バンコクからクルマで3時間。灼熱の気候とあって、たしかに他所の工場も多くは外から丸見えの似たような建屋だった。結局、提携先企業が資金を出して、温度管理の可能な施設に作り替えることになった。

     まだまだ試練は続く。現地労働者に電子機器の扱い方を教え込まなければならない。そのトレーニングに気が遠くなるほど膨大な時間がかかった。最初は目にも止まらぬ速さで開発が進んだバッテリーだったが、ここに来てガクンとスピードが落ちてしまった。

     クルマを作る全工程から見れば、バッテリー工場はサプライチェーン全体のごく一部にすぎない。ボディーパネルはフランス、モーターは台湾で生産する予定だった。バッテリーの最小構成単位となるセルは中国から買い付け、タイに輸送してバッテリーパックに仕上げる計画だった。

     バッテリーパックは劣化を防ぐために良好な条件下で保管する必要がある。しかもできれば最短期間に抑えるほうがいい。このため、バッテリーパックに仕上がったところで、なるべく早く港に運び、英国に輸送して税関を通過しなければならない。その後、ロータスでボディーを作り、バッテリーパックを取り付け、南米最南端のホーン岬まわりでロサンゼルスに到着する手はずだった。この流れだと、テスラは、輸送されてきた積荷全体に対して一括して料金を支払うため、6~9ヵ月が経過しないとパーツ単位での売り上げがつかめない。

     生産上の問題を聞きつけたマスクは、エバーハードの経営手腕に疑問を持つようになり、ある人物に対応を相談する。テスラに投資しているベイラー・エクイティは、生産業務の改善を得意とする投資会社だった。投資の決め手は、テスラのバッテリー技術やパワートレーン技術にあった。たとえ販売不振で行き詰まったとしても、最終的には大手自動車メーカーがテスラの知財獲得に動き出すに違いないと計算したのである。

     ともかく投資先の経営状態を調査して指導するため、ベイラーはティム・ワトキンスをテスラに送り込んだ。そのワトキンスがほどなくしてゾッとするような結果を持ってくる。ワトキンスは大学で産業ロボット工学や電気工学を専攻した経歴の持ち主だ。問題解決の天才として名を馳せている。そのワトキンスが数週間かけてテスラの社員らに聞き取り調査し、サプライチェーンを流れるパーツ1つひとつまで分析したところ、ロードスターの生産コストが見えてきた。

  • イーロン・マスクを脅かすテスラ出身起業家5人が目指すEV革命

    ペイパル(PayPal)は、電子決済のパイオニアとしてだけでなく、「ペイパルマフィア」と呼ばれる起業家たちを送り出したことでも有名だ。彼らが設立したり初期投資を行ったスタートアップには、Yelpやリンクトイン、パランティア(Palantir)やアファーム(Affirm)などが挙げられる。

    そして今、ペイパルマフィアの中で最も成功した起業家の一人であるイーロン・マスクは、「テスラ・マフィア」とも呼ぶべき、新たな起業家の群れ生み出している。テスラの元社員たちは、カリフォルニア州を中心にEV(電気自動車)やバッテリーの会社を設立しており、バスメーカーのプロテラ(Proterra)やトラックメーカーのリヴィアン(Rivian)のようなEVメーカーに勤務中のメンバーも多い。

    これらの元テスラ社員たちは、今後の数十年で世界の自動車産業に多大な影響を与えることになるだろう。

    「テスラ単独ではそれを成し遂げられない」と語るのは、かつてテスラのモデルSのチーフエンジニアを務め、現在はEVメーカー、ルーシッド・モーターズのCEOを務めるピーター・ローリンソンだ。「マスクには競争相手が必要だ」と彼は話す。

    2016年にテスラを退社し、自動運転システムのスタートアップ「オーロラ」を共同創業者したスターリング・アンダーソンも「自分の周囲には良いコミュニティが形成されている」と話す。「テスラ時代の同僚たちが、さまざまなスペースで成功し、影響力を発揮しているのを目の当たりにして、本当に嬉しく思っている」

    ローリンソンやアンダーソン、そして他の3人の元テスラの優秀な人材が、自動車産業の未来に向けて力を蓄えつつある。彼らの会社の企業価値は合計で300億ドル(約3.2兆円)以上に達している。これはテスラの時価総額の約7800億ドルと比べればごくわずかな金額だが、彼らの挑戦はまだ始まったばかりだ。ここでは5人のテスラ・マフィアたちの健闘ぶりを紹介したい。

    スターリング・アンダーソン(オーロラ・イノベーション共同創業者)

    アンダーソンは2013年にテスラに着任し、モデルXのクロスオーバーに携わり、自動運転支援機能「オートパイロット」の開発を主導した。「私はテスラ時代の仕事を、戦いの最前線で仲間たちと過ごした日々のように思っている。彼らとは本当の絆を築くことができた」と彼は話す。

    MIT出身の科学者であるアンダーソンは、2016年に自動運転システムのスタートアップ「オーロラ・イノベーション」を共同創業するためにテスラを離れた。 彼と共に同社を立ち上げたのは、グーグルの自動運転部門の元主任のクリス・アームソンとカーネギーメロン大学のAI研究者ドリュー・バグネルらだ。

    これまで累計10億ドル以上を調達したオーロラは、2020年12月にウーバーの自動運転部門を買収し、企業価値は推定100億ドルに跳ね上がった。同社はウーバーやトラックメーカーのPaccar、トヨタと技術提携を結び、この分野の主要プレーヤーになろうとしている。

    会社に残るか、自分の会社を設立するか
    ジーン・ベルディチェフスキー(シラ・ナノテクノロジーズ共同創業者兼CEO)

    ベルディチェフスキーは2004年にテスラの7人目の社員として採用され、同社が初めて一般市場向けに投入したEVのロードスターの主任バッテリーエンジニアを務めていた。

    しかし、ロードスターが発売される頃までに、彼の関心はリチウムイオン電池をより安く、より効率的にするための技術に移っていた。「ロードスターの発売後、会社に残るか、自分の会社を設立するかの決断を迫られた」と語る彼は2008年に退職し、2011年にシラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)を設立した。

    シラ・ナノ社は、高価なグラファイトに代わるシリコンベースの負極を開発した。同社によると、この素材を使用することで、テスラや他のEVメーカーが使用するバッテリーの効率を少なくとも20%向上させることができ、最終的には50%の向上を目指しているという。

    同社は今年1月に5.9億ドルを調達しており、累計の調達額は9.3億ドルで、評価額は推定33億ドルとされている。シラ・ナノ社は最初の大規模な工場を2024年にオープンする計画だ。

    ヘンリック・フィスカー(フィスカー・インク共同創業者兼CEO)

    かつてジェームズ・ボンドのためにBMWのロードスターをスタイリングし、アストンマーティンのデザインスタジオを率いた著名デザイナーのヘンリック・フィスカーは、テスラのモデルSのデザインコンサルタントを務めていた。

    しかし、マスクは彼のデザインが気に入らず、2008年に彼がテスラにスパイ行為を行ったとして訴訟を起こし、結果的に敗訴していた(フィスカーは、マスクの主張が事実と異なると述べていた)。

    フィスカーは2007年にFisker Automotiveを設立し、テスラの競合モデルのプラグインハイブリッドの高級車「Karma」を開発していたが、バッテリーの火災や組み立て工程における欠陥、2012年のハリケーンで輸送中の車両300台を失ったことなどで、2014年に事業を閉鎖していた。

    そのフィスカーは現在、新会社のフィスカー・インクを設立し、電動SUV「オーシャン(Ocean)」の発売に向けて準備を進めている。この車両の価格は3万7500ドルからで、自動車エンジニアリング大手のマグナと共同で製造を行い、テスラのモデルYを競合に見据えている。

    2020年にSPAC(特別買収目的会社)との合併で株式を公開したフィスカー・インクの時価総額は40億ドルで、製品開発のための約10億ドルの現金を用意している。同社は1年以内にオーシャンを発売する計画だ。

    「自動車分野は、シリコンバレーが投資を考えるような産業ではなかった」と、フィスカーは、かつて資金調達に苦戦したFisker Automotive時代を思い出しながら語る。

    「けれども、テスラは資金難からすぐに脱出できた。マスクはペイパル時代に莫大な富を築いており、その資金も役に立った。そして2010年という非常に早い段階でテスラは上場を果たしていた。我々はそうではなかった」とフィスカーは話した。

    共同創業者のその後
    ピーター・ローリンソン(ルーシッド・モーターズ共同創業者兼CEO)

    英国の名門インペリアル・カレッジ・ロンドンで学んだローリンソンは、ロータスやジャガーに勤務した自動車業界のベテランで、2009年にテスラに入社した。マスクと意気投合した彼は、テスラが2012年に発売した「モデルS」のチーフエンジニアを務めていた。

    その後、モデルXの開発プログラムを巡ってマスクと対立したローリンソンは2012年に同社を離れ、現在はカリフォルニア州ニューアークに本拠を置く新興EVメーカー「ルーシッド・モーターズ」のCEOを務めている。

    ルーシッド・モーターズは、サウジアラビアの政府系ファンドから13億ドルの資金を調達し、16万9000ドルの高級EVとして話題の「ルーシッド・エア(Lucid Air)」を今春発売予定だ。

    ルーシッド・エアの1充電あたりの航続距離は、テスラのモデルSの402マイルを上回る、517マイル(約832キロ)で、停止状態から時速60マイル(約97キロ)までわずか2秒強で加速する性能を持っている。「私はテスラの競合製品を送り出そうとしているのではない。私のライバルはメルセデス・ベンツだ」とローリンソンは話している。

    JB・ストラウベル(レッドウッド・マテリアルズ創業者兼CEO)

    2003年にイーロン・マスクと共にテスラを共同創業したJB・ストラウベルは、創業当初から同社のCTOを務め2019年までテスラに勤務していた。彼の昔からの夢は、電気自動車で炭素汚染を削減することだった。

    ストラウベルが創業したバッテリーリサイクル企業「レッドウッド・マテリアルズ」は、EVメーカーが排出する使用済みバッテリーに含まれる、リチウムやコバルト、ニッケルなどの物質が埋め立て地に流れ込むことを防ぎ、環境に与えるダメージを低減しようとしている。

    ネバダ州カーソンシティ本拠の同社は、2020年9月に4000万ドルの資金調達の実施を発表し、パナソニックやアマゾンとリサイクルプロジェクトを始動するとアナウンスした。

    ストラウベルは、VWやビル・ゲイツの財団らが出資する全固体電池メーカーのクァンタムスケープ(QuantumScape)の取締役も務めている。クアンタムスケープは昨年、SPACとの合併で上場を果たした。

    フォーブスは、クアンタム社とテスラの株式を保有するストラウベルの保有資産を10億ドルと推定している。

  • 14歳の息子に株式投資を勧められる時代
    ―いったんタガが外れると、麻薬ではありませんが、止まらなくなる。中央銀行マンのプライドや矜持はどこかに行ってしまったといった嘆きの声さえ聞こえてきます。

    相場氏:1997年に日銀法が改正されて、独立性が担保されたのですが、それが逆に悪く働いている面もあるのかもしれません。それ以前は、日銀は大蔵省の外局のような位置づけでした。ゆえにタガが外れることはなかったように思います。独立性が高まったことで、逆にバランスを崩してしまったという面もあるのではないでしょうか。

    ―今、これまで投資に触れたことのなかったような初心者、素人の投資家が参入している状況も見受けられます。『金融バブル崩壊』に詳しく書かれていましたが、米国では手軽に株式投資ができる「ロビンフッド」のようなスマホアプリが大人気です。コロナ禍で得た失業給付金などで以前より多くの人が株式投資をするので株価が上がりやすくなっている。分かりやすい銘柄に飛びつく米国の個人投資家が、新型ゲーム機を発売したソニーや、任天堂の株高を支えているという指摘もあります。これもバブルのような過熱につながる現象なのでしょうか?

    草刈氏:先日、14歳の息子に株を勧められた、これは危険な兆候だ。という英フィナンシャルタイムズのコラムニストの記事を読みましたが、まさしくその通りだと思います。

    澤上氏:やはり、当然あるべき「労働の対価」といった基本が忘れられていると思います。

    ―「自分が理解できないものに投資するな」とは、投資家のジム・ロジャーズ氏が書籍『危機の時代』で語った言葉です。何が起きているのかよく分からないが、とにかく上がっているので株を買おうといった危なっかしい投資家も生まれてきている状況のようですね。

  • テスラのビットコイン爆買いは“金融バブル”の象徴

    コロナ禍が長引く中、日経平均株価が3万円台に乗せ、バブル崩壊後の高値を更新し続けている。しかし、空前の低金利や日銀の株式ETF(上場投資信託)買いに支えられた高値相場が崩壊するリスクも高まっている。株式市場では何が起きているのか、金融バブルがはじけたら何が起きるのか、どう行動すべきなのか。異常な金融政策が生んだ金融業界の危うさに迫る小説『Exit イグジット』の著者である相場英雄氏、『金融バブル崩壊』の著者であるさわかみ投信の澤上篤人会長と草刈貴弘最高投資責任者の3人が語り合った。鼎談の第1回では、バブル期以来の株高と金融政策、経済の現状をどう見るかについて、3人が議論する。

    ―コロナ禍が長引く中、日経平均株価が3万円台に乗せ、バブル崩壊後の高値を更新し続けています。本日は、金融業界をテーマにした最新刊を執筆された3人にお集まりいただき、語り合っていただきます。まず、世界中で株価が高騰するなど過熱感も指摘される市場環境をどうご覧になっているか、率直な意見をお聞きしたいと思います。

    草刈貴弘氏(以下、草刈氏):2月8日に米EV(電気自動車)メーカーのテスラが15億ドル(約1600億円)のビットコインを購入していたと報道されましたが、これは金融バブルを象徴するようなニュースだったと感じています。創業者のイーロン・マスク氏は、これまでイノベーションを推進するために資金を調達することはあっても、資産を運用して儲けるようなことは一切してこなかったと思います。

    澤上篤人氏(以下、澤上氏):確かに、今回のニュースは、利益の最大化を目的にした行動のようにも思えますね。マスク氏本人の意志ではなく、社内の誰かがやっていることなのだろうとも思いますが、書籍『金融バブル崩壊』でも書いたように、やはり、バブルが進行している端的な証拠なのだろうと思います。

    ―私自身もマスク氏を何度か個別取材して、世界を変えるようなイノベーションに強い情熱を持って取り組んでいるという印象を持っていました。それまでは調達した資金を次の技術革新のために投資してきただけに意外です。米ツイッターもビットコインの保有を検討しているというニュースが出て、株価が急騰しました。お金が余っているので、企業が本業と関係ない“財テク”に走り、投資家がそれを材料視して株価が上がるなら、日本のバブル期のような現象が起きている可能性もあります。金融業界を舞台とした作品を手掛けてこられ、当時の事情にも詳しい相場さんは現状をどうご覧になっていますか?

    相場英雄氏(以下相場氏):私は、金融記者として、1990年代から2006年まで兜記者クラブ(東京証券取引所)などにいて、市況や国内や外資系の金融機関を取材していました。マーケット全般を見ていましたから、情報源として少し怪しげな人たちも取材していました。

     実は新作の『Exit イグジット』にも登場する金融コンサルタントでフィクサーの古賀遼という人物を主人公にした『不発弾』という小説を2017年に出しています。「飛ばし」「損失隠し」という問題を取り上げたのですが、この小説は、兜記者クラブで得た知識や経験を元にして書き上げました。証券会社に勤め、高リスクの商品を扱っていた古賀は架空の人物です。当時取材をしていた、怪しげなセールスマンなど複数の人物をモデルにしました。不発弾で取り上げた飛ばしや損失隠しのような取材は、大っぴらに聞ける話ではありませんので、六本木のカラオケボックスに別々に入って、個室で解説をしてもらうなどして、聞いた情報をベースにしています。

     なぜ、このお話をするのかというと、どの業界でも、あるいは会社でも、絶対に侵してはいけないことがあります。「タブー」と言い換えてもいいのかもしれませんが、翻って、今の金融業界、あるいは、金融政策のあり方をみていると、国というレベルで「この一線を越えてしまっている」ところがあるように思うからです。それが今回『Exit イグジット』で描いた点です。

    基本に戻れば、明らかにおかしい現状
    ―タブーなき世界に入っているということですね。元金融記者の目から見て、最近の状況は明らかにおかしいのでしょうか?

    相場氏:そう思います。『Exit イグジット』にも書きましたが、昔は、金利が存在し、日本銀行が決める「公定歩合(中央銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利)」がどう動くかを記者たちは追いかけていたものです。しかし今では公定歩合という言葉さえ耳にしなくなりました。異次元の金融緩和が常態化し、「ゼロ金利」がすっかり当たり前の世界になってしまったからです。

     私のように兜記者クラブに詰めていた証券担当の記者は、大蔵省(現・財務省)や日銀の担当に比べると地味な存在でした。地道に市況を追っかけて報道するのですが、「すっぱ抜き」「スクープ」というような派手なネタはほとんどないからです。

     それでも先輩記者たちは誇り高く、若手記者は厳しく教育されました。経済の原理原則に基づき、一見難しいロジックで変動する相場を、中学生にも理解できるように解説する、というスキルをたたき込まれました。考えてみれば、これがたいへん勉強になりました。本質を分かっていないと、読者に分かりやすく説明する記事など書けないからです。しかし当時学んだような金融や経済の原則が、通用しないおかしな世界になっている。

    澤上氏:なるほど。作品を読んで、こんなに金融業界に精通した作家がいるんだ、と驚いたんです。失礼な話ですが…(笑)。金融の知識はもちろん、市場や、市場関係者の機微などまで、深く理解されている。

    ―本質を理解した上で分かりやすく伝える。人に何かを伝え、心を動かすためには必要ですよね。それは例え話の上手さに表れます。イエス・キリストも、ブッダも、例え話が上手だったと言います(笑)。

    相場氏:例え話でいうと、澤上さんが今回の本でも書かれている「金利は経済の体温だ」という話は、すごく刺さりました。

    澤上氏:本質といえば格好がいいですが、至極、当たり前のことを当たり前と捉えられるかどうか、が大切なのだと思います。金利は、経済のインセンティブで、それが原動力ともなりますから、金利がないというのは、「体温がない」、いわば経済が死んでいる状態とも言えるわけです。

    相場氏:今日のテーマにも関わりますが、「日銀の株式ETF(上場投資信託)買いにプロの目を入れるべきだ」というご意見には、膝を打ちました。

    澤上氏:日銀によるETF購入は、今回の金融バブルを下支えするような“力技”の1つだと思いますが、日銀がETFに直接投資する形では、競争原理が働かない。しかし、さまざまな運用会社を競わせる形にして投資するようになれば、話は違うと思います。日銀の株式購入にも市場の競争原理が働くようになるし、今よりは健全な状態になるように思います。

    中央銀行のあり方が変わってきている
    ―中央銀行のあり方が変わってきています。ETF買いによる市場介入の長期化などは典型例ですが、例えば、スイスの中央銀行は個別株投資にも熱心で、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のようなITの大型株を大量に購入しています。もはや経済の原理原則はどこかに行ってしまい、中央銀行は教科書で学んだような独立性を果たしているとは思えません。

    相場氏:昔、若い市況担当記者の作る記事を読んで、本質を端的にまとめるリード文をつくっていましたが、その時の感覚で、現在の株価高騰に関するニュース解説を見ると、疑問符が並ぶことが多いです。「いやそうじゃないだろ、カネが余っているからだろ」と。そうでないと説明がつかないことが多すぎます。

    草刈氏:おっしゃる通りです。金融緩和が続いてきた中で、さらにコロナ禍がやってきて、各国政府や中央銀行がさらに金融緩和を進めています。とにかく大盤振る舞いで、これ以上やることがない、というような状況になっています。なのに、2018年、19年に比べて、取り立てて経済がよくなっているわけではない。

    相場氏:最近、思い出すのは、バブルの絶頂ともいえる1989年の大納会の時の先輩記者たちの雰囲気です。日経平均は3万9000円の史上最高値で、世の中は浮かれていた状態でしたが、大蔵省や日銀担当の先輩記者たちの表情が妙に暗かったんです。後から思えば、年明けから引き締めが始まることを察知していたのだろうと思います。

    澤上氏:今は、ひょっとしたら同じようなタイミングなのかもしれません。それでも、世界的なカネ余りや各国の中央銀行がETFなどで相場を支えているような状態は、今までにはなかったことです。

    相場氏:元日銀総裁の白川方明さんは、当時「ETF買いは臨時の措置」とコメントしていたそうです。それが常識的な判断だと思います。ところが、それが今や日銀のETFの購入規模は10倍くらいになっています。

    草刈氏:今では、中央銀行が市場の催促に応えて、買いに入っているような状態になっています。政策当局も慎重な姿勢はあったと思います。ただ、コロナ禍が一種の免罪符として作用してしまった面があります。結果的に、誰も責任を取れなくなる危険性があります。

  • 日本人は知らない…日本人がどんどん「貧しく」なっている「本当の理由」

    コロナが世界を蹂躙して経済が停滞しオリンピックどころではなくなっているが、コロナ前から先進国で最も凋落が著しかったのがホスト国である我らが日本で、コロナ禍も加わって“斜陽”が止まらなくなっている。

     家計調査を見ても、財務省の平均給与と国民負担率を見ても落ちるところまで落ちた感があるが、インバウンドも期待できないのに無理してオリンピックを開催したら一段と貧しくなってしまうのではないか。いったい誰が日本をここまで貧しくしてしまったのだろうか。流通ストラテジストで『アパレルの終焉と再生』の著者、小島健輔氏が「本当の理由」を解説する――。

     総務省家計調査(二人以上世帯)の20年平均消費支出が前年から5.3%も減少し、「被覆及び履物」支出は18.9%、「教養娯楽」支出は同18.6%も減少したが、コロナ禍ばかりが要因ではなく、その前から日本は貧しくなっていた。

     2000年と比べれば家計消費の平均消費支出は87.6%に減少し、「被覆及び履物」支出は54.5%に、うち「アパレル」(洋服・シャツ・セーター)支出は54.3%に激減したのだから、アパレル業界が破綻の瀬戸際に追い詰められたのも致し方あるまい。

     家計消費支出に占める「アパレル」の比率は3.00%から1.86%まで低下し、この間に2.14%から2.69%に伸びた「ビューティ」(理美容用品・サービス)支出に追い抜かれている。2020年も「ビューティ」支出は4.2%しか落ちておらず比率は僅かに上昇したが、これは家計調査が日本国民を対象としたもので外国人世帯も来日観光客も含まれていないからだ。

     他に増えたのは「保険医療」支出(実額は25.2%増、シェアは3.58%から5.11%へ)、「通信」支出(実額は41.6%増、シェアは3.00%から4.85%へ)で、エンゲル係数(「食料」支出)が23.3%からコロナ前の19年で25.7%、20年は巣籠もり消費で27.5%に跳ね上がったのは生計の窮乏を実感させる。

     「教育」が実額で26.1%減少し、シェアも4.39%から3.70%に落ちたことも貧困化を象徴しているのではないか。

    国民負担率と実質消費支出力の推移
     これだけ消費が萎縮していったのだから勤労者の所得も同程度、落ち込んだと思われるかもしれないが、国税庁の発表する平均給与の推移を見ると、リーマンショックの2009年こそ2000年(461.0万円)比で88%の405.9万円まで落ちたものの、2018年には95.6%の440.7万円まで戻している。その後は2019年が436.4万円、2020年が431.2万円と再び93.5%までずり落ちているが、家計消費支出の87.6%とは乖離がある。

     国税庁は租税(消費課税も含む)と社会保障の負担率(合わせて「国民負担率」)も開示しているが、2000年は租税が22.9%、社会保障が13.1%、合計36.0%だったのが、少子高齢化で年々負担率が上がり、2020年は租税が26.5%、社会保障が18.1%、合計44.6%と8.6ポイントも負担率が上昇している。その分、手取り(消費支出力)が減少するわけで、給与水準の落ち込みと家計消費支出の落ち込みの乖離8.0ポイントとほぼ一致する。

     毎年の平均給与から「国民負担率」分を差し引いた「実質消費支出力」を計算すると、2000年の295.0万円がリーマンショックの2009年には254.9万円に落ち込み、8%に増税した2014年には240.3万円とさらに落ち込み、10%に増税後の2020年では238.9万円と00年の81%まで落ち込んだ。

     これではコロナが無くても消費が冷え込むのは必定で、コロナが輪をかけたということだ。

    消費税が日本を貧しくした

     家計消費の支出は消費税負担も含んでいるから、消費税が5%だった2013年までに比べると8%に上がった2014年以降は3%分、消費支出が削がれた。

     2019年10月にはさらに2%上がって10%になったから、2020年は2000年に比べると5%分、消費支出が削がれた。消費税は「国民負担率」の「租税」に含まれているとは言え、所得だけでなく貯蓄からの支出にも課税されるから負担感が大きく、貯金を取り崩して生活する年金暮らしの老人世帯などストレートなダメージを受ける。

     財政赤字まで加えた「国民負担率」(将来の負担率に直結する! )は2020年には49.9%まで上昇しており、コロナ禍を引きずりオリンピックの清算も強いられる2021年はさらなる上昇が不可避だから、国民としては消費を抑えて貯蓄し将来の目減りに備えざるを得ない。

     財政赤字の肥大を見れば将来は15%、20%への増税も避けられないという不安は否めず、消費税が増税される度に消費性向が落ちる(貯蓄率が上がる)という傾向が顕著だ。2014年に75.3%だった消費性向(家計調査の二人以上勤労者世帯)が2014年4月の8%への増税で2015年は73.8%、2016年は72.2%に落ち、10月に10%に増税された2019年は67.9%まで落ち、2020年はコロナ禍も加わって61.3%という記録的低水準まで急落している。

     『誰が日本を貧しくしたか』、それは消費税、とりわけ2014年と2019年の増税だったことは明らかだ。

     GoTo何とかとか休業補償とか無闇にばら撒くより、消費税を5%に戻すか全廃すればコロナの収束とともに消費は急回復し、経済は放っておいても回り出す。自民党政権は経済優先というイメージが強いが、辻褄が全く合っていない。政策を抜本転換させるか政権交代させないと、このままでは日本は貧困の海に沈没してしまう。

    経済優先政権下で「先進国の落ちこぼれ」に…

     経済優先の自民党政権が長く続く間も日本経済は停滞し続け、今や『先進国の落ちこぼれ』と言われるほど凋落してしまった。GDPは2000年までは米国に次ぐ世界第2位だったのに中国に抜かれて3位に落ち、今や(2019年)米国の4分の一にも届かず、中国の3分の一ほどでしかない。

     日本生産性本部によると、2019年の日本の時間あたり労働生産性は47.9ドルで米国(77.0ドル)の62.2%でしかなく、OECD加盟37ヶ国中、1980年には19位、1990年には20位だったのが2019年には21位まで落ちた。一人当たり生産性も81,183ドルと米国(136,051ドル)の59.7%でしかなく、1990年には15位だったのが2000年には21位、2019年には26位まで落ちた。

     一人当たりGDPも日本は43,279ドルと米国(65,143ドル)の66.4%でしかなく、1996年には6位、先進7ヶ国で米国に次ぐ2位まで昇ったのに2019年は21位まで落ち、OECD加盟国平均(46,691ドル)の92.7%に甘んじている。

     全労連によれば、1997年を基準とした賃金指数も16年段階でスウェーデンは138.4、オーストラリアは131.8、フランスは126.4、イギリスは125.3、ドイツは116.3、米国も115.3に伸びたのに日本だけ89.7と賃下げで、97年にはOECD加盟国中11位だったのが15年には17位、OECD平均水準の86.7%まで落ちている。

    いまやり直すべき時ではないか
     今年1月27日には経団連の中西宏明会長が連合の神津里季生会長とのオンライン会談で『日本の賃金水準はOECD加盟国中、相当下位になった』と発言するなど、労働側のみならず経営側も日本の賃金水準への危機感を露わにしており、もはや日本の貧困は国家的緊急課題となった感がある。

     安倍政権下では消費増税は言わずもがな、オリンピックにせよIR誘致にせよレジ袋廃止にせよ、国民の利益になるのかどうか疑わしいことがいつの間にか次々と決まっていった感があるが、やはり良い結果はもたらさなかった。

     国民の利益でなく誰かの利権になる事ばかりが決められていった2013年から今日までは忌まわしい絵空事だったのだから、オリンピック期待が泡と消えたのを契機に全てをやり直すべきだろう。

  • ドルインデックスは下落しての推移。ユーロなどへの買いが意識され、ドルの上値は依然として重い。

    現状の水準は以下の通り。

    ドルインデックス:90.614(-0.1)

  • 米国債利回りは低下しての推移。米株は堅調だが、ここまでの上昇に対する調整の動きが意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    米2年債利回り:0.1525(-0.0059)
    米10年債利回り:0.9162(-0.0198)
    米30年債利回り:1.6649(-0.0207)

  • 米国債利回りは下落しての推移。ここまでの上昇に対する調整の動きが意識され、債券に対する買い戻しが意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    米2年債利回り:0.1506(-0.0078)
    米10年債利回り:0.9145(-0.0215)
    米30年債利回り:1.6642(-0.0214)

  • ドルインデックスは下落しての推移。ドルに対する売りの流れが継続しており、下値を拡大している。

    現状の水準は以下の通り。

    ドルインデックス:90.998(-0.12)

  •  2日の米国債券相場で長期ゾーンは続落。表面利率0.875%の10年物国債利回りは前営業日比0.01%高い(価格は安い)0.93%で終えた。新型コロナワクチンの普及や米経済対策協議の進展期待を背景に、相対的に安全資産とされる米国債に売りが出た。

  • 米国債利回りはまちまちでの動きが継続している。ただ、米株の持ち直し基調を眺めて全体的に債券に対する売りが意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    米2年債利回り:0.1623(-0.0039)
    米10年債利回り:0.9442(0.0182)
    米30年債利回り:1.6984(0.0302)

  • ドルインデックスは下落しての推移。ドルの先安観が根強く、売り圧力が強まっている。

    現状の水準は以下の通り。

    ドルインデックス:91.247(-0.622)

  • 米国債利回りは上昇しての推移。米株の上昇を背景に、債券に対する売り圧力が意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    米2年債利回り:0.1682(0.0197)
    米10年債利回り:0.9194(0.0805)
    米30年債利回り:1.6609(0.0936)

  • 米国債利回りは大きく上昇しての推移。株価の上昇を背景に債券売り圧力が意識されている。

    現状の水準は以下の通り。

    米2年債利回り:0.1643(0.0158)
    米10年債利回り:0.9128(0.0739)
    米30年債利回り:1.6502(0.0829)

  • ドルインデックスは大きく下落しての推移。株高を受けて安全資産としてのドルに対する売りが強まる状況となっている。

    現状の水準は以下の通り。

    ドルインデックス:91.362(-0.507)

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